映画「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」がついに公開! 本作は3月に放送を終えたドラマシーズン3から続くストーリーということもあり、まさにファン待望の内容となっている。そこでTV LIFE webでは公開に合わせた連続インタビューをお届け。ラストに登場していただくのはシーズン1から作品を撮り続けている松居大悟監督。映画の制作秘話や名優たちの裏の顔、そして作品に隠された秘密など、“ネタバレあり”の公開後だから話せるエピソードをたっぷりと語っていただきました。
◆今回の映画はドラマシーズン3と連動する形で展開されていますが、もともと映画ありきで作り始めていった企画だったのでしょうか?
そうです。もっと言えばシーズン2を撮っているころから、プロデューサーの浅野敦也さんや脚本家のふじきみつ彦さんが映画化に向けた話し合いをされていました。ただ、当初は全然違う設定でした。西部劇や忠臣蔵を題材にした案もあって。でもコロナ禍で密を避けるために、巨大な撮影所を舞台にした物語へと変更になりまして。二転三転しましたが、結果的にものすごく壮大な作品になったので、これはこれでよかったなと思いましたね(笑)。
◆撮影所という設定だけに大人数の役者さんが登場しますが、それとは別にこれまでのシリーズとの違いとして、今回は20代や30代の若手の皆さんがフィーチャーされていますね。
そこは“元祖バイプレイヤーズ”の皆さんの思いを反映しました。皆さんはよく、「バイプレイヤーズというのは俺たちだけのものではなく、次の世代に引き継いでいくものだから」とおっしゃっていて。それで、20代、30代、40代と、それぞれの世代にスポットが当たる展開を作っていくことにしたんです。また、たくさんの役者さんに出ていただくというのも最初からあった思いでした。『バイプレイヤーズ』はシーズンを重ねるごとに主演の人数が減っていったので、そのことにみんな寂しさを感じていたんですね。ですから最後は、主役級の役者さんもひっくるめて、みんなでワチャワチャとしたお祭り的なものを作りたいという思いがありました。
◆ドラマや映画製作の裏側を見せるという設定も面白かったです。コロナ禍においてエンターテインメントの必要性は二の次だという声を多く耳にしましたが、自粛などで疲弊した心を癒やしてくれるものの1つとしてエンタメは欠かせないものだと、あらためて感じさせられました。
そう言っていただけると本当にうれしいです。そうなんですよね、やっぱりみんなエンタメが好きだし、こんなご時世だけに、何も考えず楽しめるものを心のどこかで求めていると思うんです。正直に言うと、撮影がスタートしたのが昨年の夏で、不要不急という言葉が叫ばれている中でしたので、果たして今、映画を撮っていていいのかと思うこともありました。でも、しっかりと対策をして挑めば、これほどすごいものが作れる。そう願いながら、取り組んでいました。
◆撮影の裏話についてもお聞きしたいのですが、これだけ多くのキャストがいると、台本どおりにせりふを話す方とアドリブだらけの方などバラバラですか?
バラバラですね(笑)。特に50歳以上のバイプレイヤーズの皆さんはやりたい放題です(笑)。でも、全て好き勝手にやっているわけではなく、 “ここは台本どおりにしなくてもいいんだな”とか、“むしろ台本から逸れたほうがいいんじゃないか”といった判断が、皆さんは一瞬でできるんですね。それを現場で待っている自分もいますし(笑)。なので、自由に演技してほしい時はあえて放置し、長回しで撮ることもありました。とはいえ、いろんな角度から何度も撮影を繰り返すので、たまに映像がつながらないこともあって。映画をよく見ていただくと分かるのですが、さっきまで何も手にしていなかったのに、別カットになるといきなり武器を持っていたりします(笑)。それでもいいかなと思えるのが、この作品の面白さですね。
◆アドリブ満載の現場で松居監督が驚いた方はいらっしゃいましたか?
小沢仁志さんですね。すごかったぁ。誰よりも自由でした(笑)。普段からよく険しい顔をされているので、もしかしてこういう映画の撮り方に怒っているのかなと思っていたんです。でも、ものすごく楽しんでくださっていて(笑)。それに、いつも「俺は台本を読んでないから」って言うんですが、アドリブだらけの中で“これを言わないと、この場面が成立しない”という大事なせりふは、決まって小沢さんが言ってくれるんです。当たり前ですけど、台本読み込んでいるんですよね。
◆核となる部分はしっかり押さえていらっしゃるんですね。
本当にそうだと思います。“これ以上やってしまうと本筋からずれてしまう”というさじ加減を肌感覚で分かっていらっしゃる。そうかと思えば、映画のとあるシーンはセットがフルCGの予定だったので撮影前に「皆さんが電車の窓から見えている設定です」と説明したんですね。にも関わらず、小沢さんはすぐに窓から飛び降りようとして(笑)。本当に自由でした(笑)。
◆(笑)。そうした皆さんと次世代の若手が共演しているというのも面白い構図ですね。
若手は振り回されて、大変だったと思います。“この人たち、本当に台本覚えないなあ”って思っていたでしょうね(笑)。しかも、ただでさえ若手を困らせているのに、津田(寛治)さんは(渡辺)いっけいさんのアドリブに自分の言葉をわざとかぶせながら、「こうすればあとでカットされないんだよ」って(柄本)時生に話したりしていて。一体何を教えてるんだって思いましたけど(笑)。
◆元祖の皆さんはシーズン1のころから自然体の演技をされていましたが、カメラが回っている時とそうでない時も変わらないのでしょうか?
みんなで集まって休憩をされている時はドラマのまんまですね。素晴らしい役者さんたちですし、1人ひとりだとすごく大人なんですが、そろうと途端に少年のようになるんです。たまにずっと雑談をされていて、「なんだよ、今、カメラ回しとけよ」って言われることもありました(笑)。
◆(笑)。個性も見事にバラバラですよね。皆さんの立ち位置なども自然と出来上がっていったのでしょうか?
そうです。エンケンさん(遠藤憲一)はいつもニコニコと楽しそうに場を盛り上げてくださって、(田口)トモロヲさんは隙あらば下ネタを言いたがる(笑)。光石(研)さんは何か問題があると申し訳なさそうな顔をされて。松重(豊)さんは自分たちがどう見えているかを一番考えられている感じがしましたね。常に演出家っぽいスタンスでいてくださるといいますか。ですので、説明ぜりふやキーとなる言葉は松重さんにお願いすることが多かったです。
◆では、映画も公開したということで、最後にネタバレも含めた見どころを教えていただけますか?
そうですね…よく言われるのが、エンドクレジットを見た後に「あの方も出ていたんですね」って驚かれるんです。今回は映画とドラマを同時に撮っていましたし、物語もつながっているので、ドラマに出演していただいた方はもれなく登場していただいているのですが、中にはほんの一瞬だけの方もいて。集中していないと見逃すこともあると思いますので、「ウォーリーをさがせ!」のように楽しんでいただければと思います(笑)。それと、ジャスミンが働く「さざなみ庵」には2階があり、ドラマでは立入禁止になっていましたが、映画ではついに明かされます。ぜひ目を凝らしてご覧いただき、皆さんの中でそれぞれに思いを馳せていただければと思います。
PROFILE
松居大悟
●まつい・だいご…1985年11月2日生まれ。福岡県出身。主な監督作に映画「アフロ田中」「アズミ・ハルコは行方不明」「君が君で君だ」など。最新作「くれなずめ」が2021年4月29日(木・祝)より公開。
作品紹介
映画「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」
全国公開中
(STAFF&CAST)
監督:松居大悟
主題歌:Creepy Nuts「Who am I」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
脚本:ふじきみつ彦、宮本武史
出演:田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一、濱田岳、柄本時生、菜々緒、高杉真宙、芳根京子、有村架純、天海祐希、役所広司ほか
©2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
●photo/中村圭吾 text/倉田モトキ