◆それはつまり、誰といるかで漣の印象も違っていくということでしょうか。
ええ。あまりにフラットで抑揚がない演技だけだと、つまらない人物になってしまうので、一緒にいる相手によって、多少の温度の変化を見せていこうと。例えば、広末涼子さん演じる漣の幼なじみの警察官の爽。彼女といる時の会話には、冷たさもあるものの、幼なじみということもあって、2人だけの空気感が出るようにちょっとだけ心がけています。この“ちょっとだけ”というのが意外と大事で。ほんの少し意識するだけで、漣という男の見え方も変わってくる…と信じています(笑)。
◆漣の言動で興味深かったのが、相手の言葉を自然と遮り、自分の進めたい方向へと会話やその場の空気を巧みに誘導していく姿でした。
非常に面白いです。初めて台本を読んだ時、僕は漣の放つ言葉がすごく固いなと思ったんです。それを脚本の武藤さんにお話ししたところ、「あえてなんです」とおっしゃっていて。実は全て計算された上でのことだったんです。それを聞いてからあらためて台本を読むと、漣の言葉には無駄がないことが分かって。本当に緻密で、見事な脚本だなと感じました。
◆漣はプロファイリングに長けた人物でもあります。台本を読んで「なるほど!」と思うところはありましたか?
たくさんあります。“口元を触るしぐさをするのはうそをついている時”とか、“会話をしていて、相手の話が心に入っていない時は足のつま先がそっぽを向く”とか。そうしたことが、毎話のように出てくるので、いつも“へぇ!”と感心しています(笑)。漣はいつもそうやって相手の性格や個性を見抜いていくのですが、他人の癖を読み取っている以上、漣自身に癖があってはいけないと思うんです。となると、余計な動きを省いていくことになるので、どんどん自分の演技が窮屈になってしまって。そこはちょっとやりづらいですね(苦笑)。