4月15日にスタートする『桜の塔』(テレビ朝日系 (木)後9・00 ※初回10分拡大)。警察内部での熾烈な出世バトルを描くこの作品で、玉木宏さんは組織のトップ=警視総監を目指す野望に満ちた主人公のエリート警察官・上條漣を演じている。『3年A組―今から皆さんは、人質です―』などの武藤将吾さんが脚本を手掛ける類を見ない警察ドラマに、果たしてどう立ち向かっていくのか。役柄や物語の魅力についてお話を伺いました。
◆このドラマには“裏切り・罠・騙しあい”といったキャッチコピーが並び、ひと筋縄ではいかない展開を期待させられます。脚本を読んだ印象はいかがでしたか?
警視総監の座を狙うために、何としてでものし上がろうとする男たちが何人も登場するのですが、“まぁ、悪そうな人たちがたくさんいるなぁ”と(笑)。中でも、僕が演じる漣は手段を選ばない、相当ダーティーな男です。ただ、彼の根源にはある過去があり、どこまで本当に悪の心に染まっているのかが見えてこない。そうしたミステリアスな部分も含め、演じていてとても面白い主人公だなと感じています。
◆第1話の脚本を拝見したのですが、漣はいつもどこかしら仮面をかぶっていて、あまり感情を表に出さない人物なのかなと感じました。
そうですね。心の内の全てを見せているわけではないという印象があります。監督がバックショットにこだわりがあるのですが、きっとそれも漣の真意をわざと分かりにくくするためなのかなという気もして。つかみどころのない男ではありますが、警察内で評判があまり良くなかったり、椎名桔平さん演じる上司の千堂からは「Coolだね」と言われたり。そうした周囲の人たちの噂やせりふの中に、漣の人物像のヒントが隠されているようにも思います。
◆それはつまり、誰といるかで漣の印象も違っていくということでしょうか。
ええ。あまりにフラットで抑揚がない演技だけだと、つまらない人物になってしまうので、一緒にいる相手によって、多少の温度の変化を見せていこうと。例えば、広末涼子さん演じる漣の幼なじみの警察官の爽。彼女といる時の会話には、冷たさもあるものの、幼なじみということもあって、2人だけの空気感が出るようにちょっとだけ心がけています。この“ちょっとだけ”というのが意外と大事で。ほんの少し意識するだけで、漣という男の見え方も変わってくる…と信じています(笑)。
◆漣の言動で興味深かったのが、相手の言葉を自然と遮り、自分の進めたい方向へと会話やその場の空気を巧みに誘導していく姿でした。
非常に面白いです。初めて台本を読んだ時、僕は漣の放つ言葉がすごく固いなと思ったんです。それを脚本の武藤さんにお話ししたところ、「あえてなんです」とおっしゃっていて。実は全て計算された上でのことだったんです。それを聞いてからあらためて台本を読むと、漣の言葉には無駄がないことが分かって。本当に緻密で、見事な脚本だなと感じました。
◆漣はプロファイリングに長けた人物でもあります。台本を読んで「なるほど!」と思うところはありましたか?
たくさんあります。“口元を触るしぐさをするのはうそをついている時”とか、“会話をしていて、相手の話が心に入っていない時は足のつま先がそっぽを向く”とか。そうしたことが、毎話のように出てくるので、いつも“へぇ!”と感心しています(笑)。漣はいつもそうやって相手の性格や個性を見抜いていくのですが、他人の癖を読み取っている以上、漣自身に癖があってはいけないと思うんです。となると、余計な動きを省いていくことになるので、どんどん自分の演技が窮屈になってしまって。そこはちょっとやりづらいですね(苦笑)。
◆ちなみに、玉木さん自身は人を見抜く力があるほうだと思いますか?
どうでしょう…。でも、これまでだまされたことがないので、あるほうだと言えるのではないかと(笑)。ある程度は相手の目を見て話せば分かりますし、サプライズをされる時も、“いつもと様子がちょっとおかしいな”と、すぐに気づいたりするほうなので。
◆なるほど。では、漣とご自身が似ているなと感じるところは?
あまり感情が表に出ないとはよく言われますね(笑)。先ほどの話ともつながりますが、サプライズをされてもサプライズにならないというか。うまく驚けないんです。「あぁ…」っていう抑揚のないリアクションしか取れなくて(笑)。
◆心の中では喜んでいるんですよね?
もちろん。ものすごく喜んでいます。でも、「うれしいなぁ〜!」みたいにはしゃぐと恥ずかしくなってしまうし、その照れを隠そうとすると、“すごく喜んでいる芝居をしている”というふうに見られて、うそっぽくなってしまう。難しいですよね(笑)。
◆(笑)。では、最後にこの作品で楽しみにされていることを教えてください。
共演者の皆さんと一緒にお芝居をするのはすごく楽しいです。桔平さんはいつもすごく大人な立ち居振る舞いをされ、明るく楽しい方なので、よくプライベートの話もさせていただいています。広末さんとの共演はほぼ初めてです。ただ、年齢も近いですし、少年のような心を持っている方なので(笑)、いつも現場を盛り上げてくださっています。また、警視総監の座を巡って漣と対峙する警視監役に、吉田鋼太郎さんと光石研さんもいらっしゃいます。お2人とはまだ現場でお会いできていないのですが(※インタビュー時)、どちらの役も癖が強く、人間くさくて、どこか愛嬌もある。そんな人物を果たしてどう演じてこられるのか、僕もとても楽しみにしています。
PROFILE
玉木 宏
●たまき・ひろし…1980年1月14日生まれ。愛知県出身。A型。近作にドラマ『極主夫道』『竜の道 二つの顔の復讐者』など。大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合ほか)に出演。映画「HOKUSAI」が2021年5月28日(金)公開。
番組紹介
『桜の塔』
2021年4月15日スタート テレビ朝日系(木)後9・00~9・54 ※初回10分拡大
<STAFF&CAST>
脚本:武藤将吾
演出:田村直己、星野和成、片山修
出演:玉木宏、広末涼子、岡田健史、森崎ウィン、仲里依紗、橋本じゅん、高岡早紀、段田安則、光石研、吉田鋼太郎、椎名桔平ほか
<STORY>
2016年。東京都内の銀行で、一般市民を人質に取った立てこもり強盗事件が発生した! 警視庁刑事部捜査一課の主任・水樹爽(広末)は部下の富樫遊馬(岡田)らを率い、事件現場を包囲。現場からの連絡を受け、地方大学出身の「外様派」刑事部長・千堂大善(椎名)は警備部所属の特殊急襲部隊「SAT」の出動を要請する。だが、彼と共に次期警視総監の座を争う「薩摩派」警備部長・権藤秀夫(吉田)と「東大派」警務部長・吉永晴樹(光石)――警視庁のスリートップが繰り広げる“それぞれの思惑をはらんだ話し合い”は決裂…。そうこうしているうちに、覆面をかぶった犯人が人質の一人に発砲し、まんまと裏口から逃走するという大失態を招いてしまう!
上層部による話し合いの詳細については知る由もないが、明らかに“防げたはずの事件”を防げなかったことに、激しい怒りに震える爽。だが、ずば抜けたプロファイリング能力を誇る警視庁捜査共助課の理事官・上條漣(玉木)は極めて冷静だった。彼は隙のない理論でSATを出動させなかった理由を説明して見せたばかりか、現場の刑事たちが見抜けなかった“犯人特定の手がかり”をも提示したのだ! しかもその矢先、千堂が“ある事情”から自らの娘・優愛(仲)の婚約者で、捜査の陣頭指揮をとっていた捜査共助課課長・佐久間義孝(少路勇介)を外し、漣を代理として引き上げる。そんな状況を冷ややかに見守る権藤と吉永。彼らの派閥に属するキャリア組も一斉に捜査から手を引いてしまい…。
一方、漣は幼なじみでもある爽に、強盗犯は誰だと思うか尋ねる。犯人が使ったのは最新の3Dプリンターで作製した改造銃だという漣の見立てを元に絞り込んだ容疑者の中から、爽は刑事の勘で蒲生兼人(森崎)がホンボシだと推測。そんな爽に、漣は“とんでもない指示”を出し…!?
●photo/映美 text/倉田モトキ hair&make/渡部幸也(riLLa) styling/上野健太郎