行平あい佳インタビュー「人ってこうやって家族になっていくんだなと思いました」

特集・インタビュー
2021年05月15日

◆最初にどんな脚本にするか監督とお話をされたということは、当て書きということなるのでしょうか。

最初に当て書きをしてくださると言われて、とてもうれしく思いました。もしかしたら自分とシンクロ率が高い作品になるかもしれないと思って現場に入ったのですが、逆に当て書きということが手かせ足かせとなり、「私ってこんな人間じゃない」というところから役に入りました。ただ理解ができなかったわけではなく、当て書きをして、なぜ夫のことを愛して支えている妻になったのか分からない、みたいな(笑)。

◆「私はこんな人物ではない」ということは、サキと行平さんとは全く違う?

全く違うというより、これほど深い愛情を自分から人に与えたことがないので、それが大きな不安になりました。ただ考えてみるとサキとの共通点はあります。サキの夫であるスギちゃん(荻田忠利)は画家で、小石や草ばかり描いていて、サキはそれがすごくきれいに見えるって言うんです。私もモノを作ったり、絵を描いたり、映画を作っている人を心から尊敬するし、その作品があり続ける限り、私も作った人のことを好きであり続けるんだろうなと思うので、それだけで「スギちゃんを好き」というサキの気持ちが分かる気がしました。こういう瞬間にその人を好きになるよなって。

◆サキという人物には監督の「こんな妻がいたら素晴らしい」という願望が投影されているのかなと思いました。

「アララト」(アララトは現在のトルコ頭部にある火山。『旧約聖書』でノアの方舟が漂着したとされている)というタイトルで救済の物語であることが分かりましたね。自分が演じた役なのにこの言葉は適切ではないと思いますが、救いの手を差し伸べる女神的な存在に一瞬見えたらいいなとちょっと思いました。

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