広瀬すずインタビュー「自分だったらどうしてほしいかと考えるようになりました」

特集・インタビュー
2021年05月21日

広瀬すずインタビュー

◆最期の瞬間を向かえる人々と、日々接することになるので我慢しなければいけない瞬間は多そうに思います。

在宅医療の看護師さんは、目の前で患者さんが亡くなる瞬間まで、患者さんにとっての一番は何かを考えて接して、患者さんが望んだとおりのことをしていかなければならないんです。その作業は非常につらいだろうなと思いました。積極的な治療を望まず、そのまま息を引き取ることを望んでいる患者さんなら、看護師はその瞬間を待つしかない。映画ではそんな時の看護師の耐え方を柔らかく描いているんですが、演じながら「こんな瞬間を待たなきゃいけないんだ…」と思いました。何度も何度もそんな経験をしてきたであろう麻世として考えないといけないから難しい表現だなと思いました。

◆この作品を通して、在宅医療への考え方に変化はありました?

麻世を演じるにあたり、私の周りに在宅医療を選んでいる人がいなかったので自分に置き換えて考えるしかなかったんですね。そう考えたほうが、一番うそのない、リアルな気持ちに近づけるのかなと思いました。在宅医療を選ばれている方にとっては、看護師さんも含めて家族のようになっているんですね。泉谷しげるさんが演じていらっしゃる並木徳三郎さんのお宅を「まほろば診療所」の人たちが掃除したり、障子を貼り替えたりする場面があって、そこでは「医療がしやすいように患者さんの環境を整えるのも在宅医療の医師や看護師の仕事なのか」と思いました。それを自分に置き換えると、私ならそっちのほうが安心するかもとか、自分だったらこういう時はどうしてほしいかって考えるようになりました。

◆泉谷さんが愛する妻を自分で面倒みようとして、疲弊してしまう老老介護の場面も実際にあることなんだろうなと思えました。

今の状況に合った治療をして、家族を支えるのも在宅医療に従事する方々のお仕事なんだなって思いました。医療的な治療をするだけじゃないということを知らなかったので、「想像以上で大変な役だ」と現場に入ってあらためて思い知ることがたくさんありました。

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