関西を拠点に活動する“ちょうどいい”イケメン演劇集団・劇団Patchの連載「劇団PatchのLIFE GOES ON」がWebで出張連載! 誌面では語り切れなかったはみ出しトークを紹介しちゃいます!
6月から男子新体操をテーマにした舞台「タンブリング」に出演する納谷健さん。年間約10本もの舞台に出演する納谷さんに、台本の覚え方や役の演じ分けなどについて聞きました。劇団員・田中亨さんとの同居生活秘話も。
◆何本かの舞台を並行してお稽古することはよくあるんですか?
今(取材は4月中旬)は、「音楽劇Zip & Candy」(緊急事態宣言を受け公演中止)と「タンブリング」の稽古を並行してやってますが、「タンブリング」は今のところ新体操の練習だけなんで、体を動かすことが逆にリフレッシュになってます。
◆いくつもの台本をどうやって覚えてらっしゃるんですか?
ギリギリまでやらないんですよ。「ここ過ぎたらヤバイな」ってところまでやらないようにしてます。というのも僕、脅迫観念がすごくて。常に「なにかやらなきゃ」っていうのがつきまとっちゃうとストレスがえげつないので、あえて台本を開かないようにしてます。細かくスケジュールを立てて覚えたほうがいいに決まってるんですけど、性格的にそれができないので、詰め込み型ですね。
◆ギリギリのラインというのは具体的にはどれくらいですか?
舞台の稽古でやるシーンが決まってる場合は、前日の夜と当日の朝を丸々費やして覚えます。さすがに台本一本となるともうちょっと前段階からやりますけど。最短だと半日くらいですね。
◆半日ですか! それはセリフだけでなく役作りもされるんですか?
舞台の場合は稽古期間が長いので、取りあえずセリフとシーンの目的と全体の流れと…という感じですかね。いざ作り込むとなると執着がすごいので(笑)。最初の段階では現場の空気とかもありますし、キャストの皆さんの出方もあるので。「自分の持ち味を出すところはココだな」という部分は何パターンか持っておきながら、臨機応変にできるようにしてます。覚える時は、ブツブツ言いながら散歩したり。そういう詰め込み方をしてます。
◆「自分が持ち味を出す何パターンか」というのは、台本を読んだ時点で想定されるんですか?
そうですね、ある程度は。例えば「音楽劇Zip & Candy」の場合は10歳くらいのお金持ちの少年の役なので、25歳の僕が演じるには無理があるんです。となると、テンションや身振り手振りはデフォルメでやって、大事なシーンはお芝居として心通わせる、というプランをベースの役作りとして持ってます。ちょっとコメディチックなシーンに関しては、相手の出方もあるので、セリフに添ったボケとか間を何パターンか、あえてボヤッとさせた状態で持っておくって感じですかね。
◆なるほど。お忙しい納谷さんですが、オフの時は何をされてるんですか?
本や漫画だったり、何かの記事を読んでたりして、分からないことや面白そうなことがあれば取りあえず調べてまくってます。最近は量子力学とか相対性理論を丸一日かけて調べたり。理系はあまり勉強してこなかったんですけど、興味はあったんですよね。まず分かりやすく解説してくれる動画を見て、ネットで資料を見て。何パターンか調べたら大まかな理屈は分かるので、それを誰かに話して頭に入れるって感じです。
◆量子力学や相対性理論ですか。それは役とは直結するものではなく、知識として調べてらっしゃるんでしょうか?
なにかしらの役に向き合っていると、入ってくる情報が役に寄ってくるんですよね。「音楽劇Zip & Candy」は土星の裏側の話なので、宇宙のこと、近未来のこと、ロボットのことが、自然と情報として入ってくるんです。お芝居って果てがないから、自分が楽しいと思えること、興味があることを深めて深めて、自分の持ち味につなげていったほうが、なんかワクワクできるかなって。
そういえば最近、役者仲間の蒼木陣君が、僕が好きなアンドリュー・ガーフィールド主演の「ハクソー・リッジ」という映画を薦めてくれたんです。第二次世界大戦時の衛生兵の話なんですけど、信心深くて、人を殺すことができない主役の彼は、常に聖書を胸に入れてるんです。最初はバカにされていた彼が、その信じる力の強さから徐々に周りの人に認められていくんですが、この映画を観て自分が信じられるものは何だろうって考えてしまって。僕は何かを信仰しているわけでもないし、親からの強い教えがあるわけでもない。でも、自分のやってきたことは信じられるなって。だから最近は、台本の読み方から何から、いろいろ手帳に書き記して、常に胸ポケットに入れるようにしてます。めっちゃ映画に影響されてますけど(笑)。
役者だったら皆さん共通することだと思うんですけど、「今回こうだったから気をつけておこう」と思っても、次回の現場でそれが引き継がれることがあんまりないんですよね。当たり前ですけど、台本も違うし演出も違うし、環境も違うし、生きる役も違う。そこを本当に意識しておかないと、毎回、本当にゼロからのスタートになってしまうという怖さがあるんです。台本を覚える手順もそうですが、そういうことを何とかアップデートしていく状況を作らなくちゃなって最近思うんです。胸ポケットの手帳はそのためですかね。
◆あらためて役者さんというお仕事は大変ですね。それでは、6月11日からの舞台「タンブリング」の見どころをお願いします。
とにかく心身ともにエネルギッシュな舞台です。主演の高野洸君、西銘駿君がすごくピュアで天然なんですよ。2人そろって天然なので(笑)、「2人を支えなきゃ」っていう周りの一体感もありつつ、その純粋さ故に、勇気づけられる部分がありますね。そういったチームワークも感じていただけると思います。
◆納谷さんの見せ場は?
おそらくリーダーポジションにはなってくると思いますが、一番は身体能力の部分ですね。初めてお見せする技もあります。できるからといってどんどんやってしまうと「タンブリング」を楽しみにしてくれているお客さんへのサプライズがなくなっちゃうので、ひた隠しにしてました(笑)。
◆劇団Patch8周年記念公演で、カンテレさんとタッグを組んだ音楽劇『マインド・リマインド ~I am…~」の受注生産DVDが、通販でも買えるようになったそうですね! 納谷さんが主役の「僕」を務められた大千穐楽公演が収録されています。
ありがとうございます。劇団Patchがここからまた新たに挑戦していくというスタートでもあり、8周年を迎えたひと区切りでもあり、というタイミングでの公演でした。その区切りを劇団員たちがどんな風に演じて残したのかを観ていただきたいです。全9組の中で収録されたのは1組だけですが、僕自身も何かを残そうと意識しました。この公演が今後の劇団Patchの布石のような位置づけになればと思います。それこそ自分が量子力学や相対性理論みたいなものに興味を持ってしまう人間なので、単純に『マインド・リマインド』みたいな作品をやりたかったというのもあったんですが、僕がワクワクして取り組んでいる姿も観ていただけたらうれしいです(笑)。
◆前回ご登場の田中亨さんが納谷さんの家に居候されていたそうですね。田中さんから「迷惑かけてなかった? 直してほしいところがあったら言ってください」というメッセージをお預かりしています。
僕が仕入れた情報や面白い話を逐一、亨に話してました。量子力学の話とかも「分かりやすい」っていってくれるんで。普段、亨といると僕が9割しゃべってる感じ。逆に「気つかうのやめて」って言っといてください。…っていうか直接言います(笑)。亨と一緒にいたら僕は楽ですよ。
◆では最後に、次回ご登場予定の星璃さんにメッセージを。
劇団Patchに入る前からの付き合いなんで、関わってる歴は一番長いですよね。大阪に住んでた時は吉本(考志)君の家で3人で暮らしてましたし。性格的に似てる部分も結構あるんで、基本的に不満もなければ大好きって部分も特にないですね(笑)。分かり合ってるから落ち着くんです。逆に星璃から見て「おまえのこういうとこ、ほんまに分からへん、マジで理解できへん」って部分あるのかな? あったら聞いてみたいです。僕から見たら、星璃って周りへの奉仕活動がすごいんですけど「そのホスピタリティというか活力、どっから湧いてくんの?」っていう謎はありますね(笑)。もちろん、いい部分だからこそ、ですよ。
PROFILE
「演劇で大阪を元気にしたい!」という大きな志の下、関西を拠点としたさまざまなエンターテインメントを発信する演劇集団。中山義紘、井上拓哉、松井勇歩、竹下健人、三好大貴、星璃、吉本考志、近藤頌利、田中亨、納谷健の10人で構成。田中が『クロシンリー彼女が教える禁断の心理術ー』(カンテレ/BSフジ)に出演。納谷が舞台「タンブリング」(大阪公演:6/11~13 東京公演:6/17~24)に出演。納谷が主人公を演じた音楽朗読劇「カンテレ×劇団Patchプロジェクト『マインド・リマインド~I am…~」のDVDがワタナベ商店(https://7net.omni7.jp/fair/patch)でオンライン販売中。
●text/青柳直子