黒崎レイナ「今は不安よりも楽しさでいっぱい! 早くこのすてきな舞台を皆さんにお届けしたいです」

特集・インタビュー
2021年05月29日

◆実際に稽古をしてみて、どんなところに違いを感じましたか?

稽古初日に皆さんと本読みをしたのですが、まず演出の瀬戸山(美咲)さんから「声が細い」と言われました。また、今回演じる杏奈という女の子は主人公の深馬のことが大好きなんですが、好きすぎる故に悩んでいるところもあって。そうした感情の揺れ動きが少し分かりづらいとも、最初のころはよく指摘を受けました。舞台は映像のように顔のアップなどがあるわけではなく、役者の立ち姿や声のトーンから、お客さんがそれぞれの視点で役の感情を自由に解釈していくと思うんです。特に杏奈は、恋人の深馬と一緒にいる時や、彼の友人といる時、それに別の人といる時で話し方や声色も変わっていくところがある。それもあって、せりふの言い方や声の出し方は私の中で大きな課題でした。

◆今回の「染、色」は加藤シゲアキさんの短編小説(「傘をもたない蟻たちは」内の「染色」)が原作です。小説はお読みになりましたか?

はい、稽古が始まる前に。その時に感じた杏奈像は、“少し痛々しい女性だな…”という印象でした。また、主人公にとって杏奈は“現実の恋人”で、彼が浮気をする女性は“理想の恋人”なのかなという感じもしました。それに、杏奈は彼から邪険に扱われているようにも見えて。そこがちょっとかわいそうでしたね。

◆確かに原作では杏奈と主人公の心がどこか通じ合っていない気がしました。でも小説のラストで彼は杏奈の元に戻ってきますよね。

そうなんです。ただ、あの戻り方も主人公にとって甘えられる存在が杏奈だけだったからなんじゃないかと思ってしまいます。これはもしかすると、私が杏奈に感情移入しすぎて読んじゃったからかもしれませんけど(笑)。それに杏奈は頑張って彼に寄り添おうとしているのに、彼にとっては絵描きとして悩んでいる現実を思い出させる存在なのかなとも思い、読んでいてすごく胸が苦しくなりました。とは言え、今回は加藤さんが自ら新たに脚本を書かれているんです。物語の内容も原作とは少し異なるので、果たして2人の関係がどうなっていくのか楽しみにしていてください。

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