篠原ゆき子インタビュー「どれだけ救いのない人生でも美しく生きようすると姿を、力を込めて演じました」映画「女たち」

特集・インタビュー
2021年06月01日

◆美しさの象徴という意味では、美咲にとって倉科カナさん演じる親友の香織の存在も大きなものでした。

はい。コンプレックスだらけの美咲にとっては、香織は誇りのようでもあり、美しくてまぶしい存在。それでいて、心のよりどころでもあったと思います。でも香織も大きな闇を抱えていて、ある日、自分の前からいなくなってしまう。美咲にしてみれば、彼女の生活の中での唯一の明るい要素であり、今にも壊れてしまいそうな美咲の心をギリギリのところでつないでいたもので。それが突然なくなってしまったわけですから、相当な衝撃だったと思います。また、香織にもいろんな事情や思いがあったにせよ、美咲の視点で見れば、香織は残酷な人でもあるなと感じました。お互い心を開いていたと思っていたのに、そうではなかったわけですし、それに気づけなかった美咲は最後の烙印を押されたようでもあって…。

◆ただ思い返すと、所々でサインのようなものが見え隠れしていましたよね。

そうなんです。2人だけで会う予定だったところに美咲が恋人を連れてきて、香織が異様なほど動揺したり。でも美咲はそこまで彼女を苦しめているとは気づけなかった。2人は子供のころから仲良しの幼なじみでしたが、どれだけ長い時間を一緒にいて相手のことを理解していると思っていても、他人のことを100%知ることはできない。それもまた難しいなと思いましたね。

◆また、娘の美咲に介護をしてもらいながらも、容赦のない罵詈雑言を浴びせる毒母の存在も壮絶で。演じた高畑淳子さんの鬼気迫るお芝居には終始圧倒されました。

すごかったです…本当にすごかった。撮影現場では、毎回とてつもない演技を目の前で見させていただいているようでした。高畑さんは本読みの時から本番と同じエネルギーで演技をされていたので、私も“これは生半可な芝居はできないぞ”という思いを感じましたし、高畑さんとのシーンが近づくにつれて、“相手役が本当に私なんかでいいのかな?”と、緊張で怖くて仕方がなくって。でも、その重圧がまさに美咲が感じているギリギリさと言いますか、精神的な追い込まれ方ともシンクロしていたので、その意味では、演じる上ですごくヒントになりました。高畑さんがいらっしゃらなければ、私はここまで全てをさらけ出すお芝居はできなかったと思いますし、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

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