篠原ゆき子インタビュー「どれだけ救いのない人生でも美しく生きようすると姿を、力を込めて演じました」映画「女たち」

特集・インタビュー
2021年06月01日

◆2人のシーンは毎回激しかっただけに、母・美津子の最後の「ありがとう」のせりふには、ひと言では形容できない母娘の強い思いを感じました。

あのせりふは、実は高畑さんのアドリブだったんです。奇跡を見るような感覚でした。クランクアップ日の最後の最後に撮ったシーンだったのですが、私のほうが “ありがとう”という思いでした。あの瞬間は、美咲の人生、篠原ゆき子としての人生、そして私と高畑さんとの関係性に対して全てが1つにつながって、あのシーンが生まれたように感じて。一生忘れられない撮影でした。

◆また、今回の作品を拝見して感じたのは、女性が生きにくさを感じる現代社会の問題だけでなく、家族だからこそ関係性を築く難しさもあるということでした。

本当にそう思います。血がつながっているからこそ分かり合えること、許し合えることがありますが、反対に、血がつながっているからこそのこじらせもある。ですから、マリアムさんといった他者が家の中に入ってくることで、淀み切った母娘の間にちょっとだけ新しい空気が入ったりするんですよね。それに、やっぱり家族だから本当はどこかでお互い理解し合いたいという思いがあると思うんです。でも、それとは裏腹な言葉が出てしまうし、時には自分でも制御できないほどの怒りが込み上げてきたりする。誰かを殺したくなったり、死にたいと思ったり…。自分に限ってはそんな考えは浮かばないと思っていても、100%本当にないとは言い切れない。抱えている悩みの大小はありますが、誰しも美咲になりうるかもしれない。そうしたリアルさが伴った作品だなと思います。

◆ちなみに、先ほど篠原さん自身は根が明るいほうだとおっしゃっていましたが、落ち込むことってあるんでしょうか?

めちゃめちゃあります!(笑) あるんですけど、すぐ前向きに考えを変えられるんです。ありがたいことに恐らくそれほど大きな不幸のない人生を送れているからだと思います。

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