関西を拠点に活動する“ちょうどいい”イケメン演劇集団・劇団Patchの連載「劇団PatchのLIFE GOES ON」がWebで出張連載! 誌面では語り切れなかったはみ出しトークを紹介しちゃいます!
『舞台「刀剣乱舞」无伝 夕紅の士-大坂夏の陣-』に出演中の星璃さんに、舞台の見どころや2.5次元舞台の魅力、劇団Patchでの小道具作りの裏話などについて聞きました。
◆2.5次元舞台の代表作とも言える「刀剣乱舞」ですが、最新作「无伝 夕紅の士-大坂夏の陣-」の見どころは?
IHIステージアラウンド東京という、客席が回る360度舞台で上演しているというのが今作の一番の見どころだと思います。
「刀剣乱舞」シリーズの作・演出の末満(健一)さんは、劇団Patchの旗揚げから5年間お世話になった大恩人なんです。他にも、2012年4月の劇団Patch初回オーディションでMCをやっていただいた穴山小助役の牧田哲也さん、劇団Patch第7回の舞台「幽秘伝」に出演していただいた骨喰藤四郎役の三津谷亮さん、関西小劇場界でずっとお世話になっている三好伊三入道役の竹村晋太郎さん、三好清海入道役の坂口修一さんなど今までお世話になった皆さんと、この大きな舞台でご一緒させていただけていることがとてもうれしいです。また、公演中の4月27日に劇団Patchが9周年を迎えることができ、個人的にはとても感慨深くて。もっともっと頑張ろうという思いが強くなりました。
◆星璃さんにとって、とてもメモリアルな舞台なんですね。では、星璃さん演じる根津甚八という役どころや見どころについて教えてください。
ビジュアルを見ていただいたら分かると思うんですけど、めちゃめちゃ髪の毛がツンツンです。
◆髪の毛もですが、見事な腹筋に目が行ってしまいました。
そう、腹出しなんですよね(笑)。ある日、稽古場で末満さんから「星璃、腹出してみて」って言われて。出してみたら「ああいけるな。おまえの衣装、腹出しな」って言われたんですよ(笑)。
◆もともと決まっていた衣装じゃないんですね!
そうなんですよ。僕、今まで筋トレとかしてこなかったんですけど、この公演でおなかを出すと決まってから、筋トレとストレッチが日課になりました。劇団Patchメンバーの吉本考志が筋肉バッキバキなので、いろいろ教えてもらって。たんぱく質とか栄養価の高いものを積極的に摂るようになりました。今作で一番力を入れているのは体作りかもしれないです。衣装合わせをしてからさらにパンプアップしたので、首元が苦しくなったり、逆におなかが痩せてズボンがゆるくなったり。公演が始まってからも、日に日にベルトの穴が縮まってきてます。
◆では根津甚八の見どころは腹筋ということですか?(笑)
いやいや! もちろん殺陣もありますし、キャラクターとしても魅力的です。ロックでパンクな見た目なんですけど、すごく礼儀正しいんですよ、あいつ(笑)。真田十勇士の1人なので、フィーチャーされにくい面もあるのですが、なかなかギャップがある役どころなので、そのあたりを楽しんでいただいて、ついでに腹筋も見ていただけたらいいかなと思います(笑)。
◆以前は舞台「鬼滅の刃」にもご出演されていますが、星璃さんが思う2.5次元舞台の魅力とはなんでしょうか。
2.5次元はキャラクターとしての答えが決まっているから、声、しぐさ、性格、身長、顔つき、骨格に至るまで、あらゆる要素をキャラクターに近づけないといけない。それって、めちゃくちゃ難しいんです。役者としてとても技術がいることなので、演じる側にとってもお客さんにとっても、そこが一番の魅力なんじゃないでしょうか。制限がある中でもパフォーマンス力を発揮されている方がたくさんいらっしゃるので、すごいなと思ってます。
◆衣装も豪華で動きの上でも制限がありそうですね。
そうなんですよ。今回の「刀剣乱舞」で言うと、三日月宗近や鶴丸国永はものすごく袖が長い。劇団Patchメンバーの近藤頌利演じる大千鳥十文字槍は2メートル以上の槍を振ったりします。そういう衣装だと、役者の技術がないと何も見せる事ができないんですよね。僕も「鬼滅の刃」で錆兎を演じた時は仮面を着けていたんですが、あの仮面、原作どおりの目の位置なので、正面が全く見えない状態だったんですよ。
◆前が全く見えない状態で殺陣ですか! 相当お稽古されたんですか?
そうですね。稽古場からずっと仮面を着けていて、相手の息遣いや足音、歩数を覚えたりしました。
◆リアル錆兎じゃないですか!
あはは。あとは相手を信頼して、相手がそこにいてくれると信じる。足元は見えるので、足を見てどこにいるか感覚をつかむ、みたいな感じでした。
◆すごい…。2.5次元といえば、メークも魅力の1つですが、準備時間はどれぐらいかかるんですか?
役によって変わってきますけど、特殊メークが必要な役なら、まずはメークさんのところに行って順番を待つ。その後、ウィッグを着けるんですけど、フルで1時間くらいですかね。メークからウィッグの間に待ち時間があることが多いんですけど、その間はフルメークで丸刈り…なんていうこともよくあります(笑)。あと、メークあるあるだと、アイラインの消費がめっちゃ早いです。僕は結構自分でメークすることが多いんです。錆兎の時も自分でやってましたね。傷の型紙をもらって、それを縁取って自分で色をつけてました。
◆星璃さんは器用ですもんね。そういえば、劇団Patchでは小道具も担当されていると伺いました。
ちょっと手先が器用なだけです(笑)。劇団Patchでは、武器、小道具のほかにも、殺陣振付、オープニング、エンディング演出なんかもやっています。だからスタッフクレジットにめっちゃ僕の名前が載ったりとか(笑)。末満さんもいろいろできる方なんですが、僕もゆくゆくは演出もやってみたいと思っているので、何事も勉強です。劇団Patchの舞台「SPECTER」の再演の時、もともとは末満さんが殺陣付けをやるとおっしゃってたんですけど、「おまえの殺陣見てから決めるわ」と。結果、僕がやらせてもらうことになったんです。武器小道具に関しては、他のメンバーが誰もやってくれないので(笑)。もともと美術や図工は休み時間返上で熱中しちゃうタイプだったので、全然苦じゃないです。
◆今まで作ってこられた武器小道具で、一番大変だった、もしくは一番の自信作は?
「SPECTER」再演で短剣をいろいろ作ったんですけど、末満さんに貸してくれって言われて、その短剣がシアターコクーンに出張したんです。「僕の子供たちが初めて外に!」って感じで、めちゃめちゃうれしかったですね(笑)。大変やったのは、「磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~」という舞台での小道具ですかね。「3色団子を両手に持って振りたいから、団子のサイリウムが欲しい」と末満さんに言われて(笑)。1人6個の団子を20人分。計120個の団子を、ピンク、白、緑、とひたすら塗りました。一番の自信作は、吉本考志と共作した「Patch stage vol.8 浮世戯言歌劇『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』高尾山地獄修業編」の蝉の着ぐるみかも。「なるべくお金をかけずに蝉の着ぐるみが欲しい」と言われたので、段ボールと和紙とペンキで作りました。合計1000円以下で済みました。
役者が役者に作る小道具なので、まずは壊れない、使いやすいということを念頭に置いてます。あとは望まれるビジュアルにどこまで近づけることができるか。かつ低予算で。小劇場界はどこでもそうだと思いますよ。街を歩いてても「あ、これ何かに使えそう」とか。職業病ですね。
◆星璃さんは、ご自身の見せ方が上手で、とてもフォトジェニックだとスタッフさんから伺いました。何か秘訣はあるのでしょうか。
それはうれしいですね。研究っていうほどのことではないですけど、テレビやアニメを見てても「今のポーズ、立ち方、カッコいいな」とか、テーマパークのパレードの演出や博物館なんかでも面白いものがあったら取りあえずメモします。普段の生活の中で「かわいいな」「カッコいいな」と思ったことはストックしているかもしれません。
◆それでは、今後の目標について教えてください。
最近、メンバーの三好大貴と「三ツ星」というユニットを作ったんです。こういうご時世ですが、プロの役者として、月並みな言い方ですけど夢とか希望とかをお客様に感じていただけるようなこと、そして自分たちがやりたいこと、面白いと思えることを、自分たちでプロデュースしていこうと考えています。もちろん自主公演もやりたいです。一方で、もっと舞台にも立ちたいし、映画やドラマにも出たいし、まだ自分が踏み入れたことのない場所にもっともっと踏み入れていきたいなと思っています。
◆前回、ご登場の納谷健さんからのメッセージです。
納谷「劇団Patchに入る前からの付き合いなんで、関わってる歴は一番長いですよね。大阪に住んでた時は吉本君の家で3人で暮らしてましたし。性格的に似てる部分も結構あるんで、基本的に不満もなければ大好きって部分も特にないですね(笑)。分かり合ってるから落ち着くんです。逆に星璃から見て「おまえのこういうとこ、ほんまに分からへん、マジで理解できへん」って部分あるのかな? あったら聞いてみたいです。僕から見たら、星璃って周りへの奉仕活動がすごいんですけど「そのホスピタリティというか活力、どっから湧いてくんの?」っていう謎はありますね(笑)。もちろん、いい部分だからこそ、ですよ」
健ってほんとにすごいなって思うことがたくさんあるんですけど、とにかく一度何かをやり出した時の集中力がすごいんです。朝からずっとインスタライブやったり、それこそゲームやりだしたらずっとやってるし。その集中力に火が付く瞬間って何なんやろ? とは思います。で、冷める時も急やん?(笑)それは熱しやすく冷めやすいからなのか、「ある程度学んだし」と思ってやめるのか。そのボーダーラインが謎やから知りたいです。
僕、自分の人生を振り返るといつも“No.2”やったことが多くて。サッカー部の副キャプテンとか、生徒会副会長とか。劇団Patchのオーディションでも準グランプリで。だから「一番になりたい」って思ってた時もあったけど、No.2って、上も押し上げなあかん、下の面倒も見なあかん、一番しんどい役回りやけど、それがカッコいいなと思うようになって。ま、カッコつけなんでしょうね(笑)。それにサポート役が向いてるねん。怒ったりする方がエネルギーいるし。あとは、世話焼きのオカンの血かな(笑)。
◆それでは最後に、次回登場予定の近藤頌利さんにメッセージをお願いします。
近藤は一学年下やけど、僕が3月24日生まれやから、たった2週間違いなんですよね。僕と同じ学年の竹下健人が5月23日生まれなんで、近藤の方が生まれた日は近いんですよ。なので、お互い「しょうり」って呼ぶことになったんです。
ある意味、営業妨害になるかもしれないけど(笑)、僕は頌利の真面目な部分が好き。「刀剣乱舞」が始まる時も、すぐに「槍を教えてください」ってメールしてきて。頌利のそういうところが、ほんまに好き。頌利は華があるし、ポテンシャルも感じるし、僕も感化される部分が多いので、これを機に“Wしょうり”として、2人でいろいろ活動しませんか? 2人芝居とかもやってみたいな!
PROFILE
「演劇で大阪を元気にしたい!」という大きな志の下、関西を拠点としたさまざまなエンターテインメントを発信する演劇集団。中山義紘、井上拓哉、松井勇歩、竹下健人、三好大貴、星璃、吉本考志、近藤頌利、田中亨、納谷健の10人で構成。近藤、星璃が「舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士-大坂夏の陣-」に出演中。納谷が舞台「タンブリング」(大阪公演:6/11~13 東京公演:6/17~24)に出演。近藤が舞台『はい!丸尾不動産です。~本日、家で再会します~』(大阪公演:9/4~7 姫路公演:10/3)に出演。音楽朗読劇「カンテレ×劇団Patchプロジェクト『マインド・リマインド~I am…~」のDVDがワタナベ商店(https://7net.omni7.jp/fair/patch)でオンライン販売中。
●text/青柳直子