◆それでお芝居を成立させられるのもすごいですね。
こちらがあぜんとする動きでも、彼女の中では理にかなっているから破綻しないんです。稽古場での、演出の河原(雅彦)さんとのやりとりも面白くて、野口さんは、全速力で道路に飛び出して血だらけになって帰ってきちゃうような勢いと危うさがある方で、河原さんは、そんな野口さんとのセッションを楽しみながらも、自在にコントロールしているような“猛犬使い”のような雰囲気でした(笑)。いやぁ、ホント野口さんには演劇界をかき乱してほしい。どれだけ観察しても底が見えない方ですし、底がないのかもしれないし(笑)。とにかくものすごいパワーをお持ちなので、また共演して強い刺激をいただきたいです。
◆また、今回の作品は2004年にKERAさんが書かれた戯曲を、新たに河原さんが演出されたものでした。お2人とはどのようなお話をされたのでしょう?
KERAさんとは昨年の新作舞台『ベイジルタウンの女神』(ケムリ研究室 no.1)で初めてご一緒しました。その時はKERAさん自身が演出も手掛けられ、個人的に大ファンだったKERA作品を演者として体感することができました。その経験が今回の舞台でもすごく役立っていましたね。本番を見に来てくださったのですが、一幕が終わった休憩中に楽屋にいらっしゃって、最初の言葉が「長いなぁ、この芝居」で(笑)。思わず、「KERAさんが書いたんですよ!」ってツッコんじゃいました(笑)。また、河原さんとは2017年の『魔都夜曲』以来でした。俳優と役と戯曲に対してすごく真摯な方で、いつも根気よく我々に付き合ってくださいます。こういうご時世ですので、稽古中は芝居のことしかお話しすることはなかったのですが、たとえ会話が少なくとも120%信頼できる演出家さんだなと、あらためて思いました。…ただ、そう思っているのは多分僕だけで、きっと河原さんは僕のことを、相変わらず手のかかる俳優だなぁと感じたでしょうけどね(笑)。