◆『あの花』は、岡田さん自身が企画コンペで提案して採用された作品ですよね。どのような思いで企画されたのでしょうか?
私、学生時代はじんたん(宿海仁太)みたいに登校拒否児だったんです。5年くらいほぼ学校に行ってなくて。当時はとにかく苦しかったし、出口がないと足掻いていました。自分を取り巻く状況も、自分自身も、なかなか受け入れられない時期で。だからこそ、同じような境遇のキャラクターをカッコよく描いてみたいと思ったんです。自分自身が嫌いだったからこそ、ものすごい挑戦でした。
◆実体験がベースにあったんですね。
でも当時はオリジナルアニメ、特に思春期の群像劇を描いた作品は企画として通らない時代で。なおかつ私の原案は地味と言われていたので、フックとなる何かが必要だったんです。それで、企画を通すためにノスタルジーな要素も取り入れようと。あのころは「ちょっと昔を懐かしむ作品」が世間的に受け入れられていたので。作中に登場する「秘密基地」も、ノスタルジー要素の一つですね。
◆確かに、「秘密基地」など時代を感じるアイテムや流行語、昔を懐かしむような言葉がいくつか登場していましたね。
はい。そして、そのいくつかの過去に今の自分たちが復讐されるんです。
◆“復讐される”というのは?
例えばニックネームがそうで。子供のころにつけた愛称って、自覚なく残酷だったりしますよね。あの時の無邪気さや純粋さが、少し大人になった時に人を傷つけることがある。それを象徴する要素に、ニックネームがなればいいなと。あなる(安城鳴子)がまさにそうですね。彼女はあだ名先行で名前を決めました。
◆そうだったんですね。
あとは、めんま(本間芽衣子)の存在そのものもそう。過去に解消しないで置いてきてしまった気持ちが、結果的に彼らの思春期に暴れることとなりました。ゆきあつ(松雪集)がめんまの格好をしてみんなをだまそうとしたのも、抑えつけてきた気持ちが暴発したからです。「超平和バスターズ」っていう名前もそうです。当時の彼らはカッコいいと思って付けたんでしょうけども、実際は“平和をやっつける奴ら”ですからね。結果的に、じんたんたちはめんまを失うことで、本当に平和をやっつけてしまった。子供のころの無邪気な発想を思い返すと、胸が痛くなることがある。でもまさか、自分たちが「超平和バスターズ」と呼ばれるようになるとは思いもしませんでしたが(笑)。