◆古田さんにとって、初体験となった漁師役はいかがでしたか?
古田:自動操縦とはいえ、船を操縦できたのは楽しかったです。現場に入ってからいろいろ学んだのですが、地元で指導してくれた漁師さんがおだて上手な人で。「古田さんうまいよ」と言われて上機嫌になりました(笑)。
吉田:漁師の仕事って、傍から見てると誰にもできそうな気がしますが、チェーンに巻き込まれないようにするとか、一つ一つがかなり難しくて、手際が良くないと危ないんですよね。しかも、その日に撮ろうとしたら、「今日、海に出ると密漁になります」と言われたり、いろんな規定もあったりして(笑)。ちなみに撮影中に、その指導の漁師さんにお子さんが生まれたんですが、その子にも出演してもらっています。
◆吉田監督が古田さんを演出される上で、こだわった点は?
吉田:お芝居に関しては、基本的にこちらが何も言わなくても任せられる人をキャスティングしています。今回はあまりお芝居経験のない役者がいるわけでもないので、常に一番最前のいい席でお芝居を見ている、お客さんのような気分でした。自分がイメージしていた以上のものをどんどん出してくれるし、どこか付加価値が付いていくようでもありました。何度か泣かされて、カットをかけるのも大変だったぐらい。だから、「よーい、スタート」と「OK!」しか言っていない気がします(笑)。
◆吉田組というと、常に笑いの絶えない現場として知られていますが、今回“笑いの要素を封印”した現場の雰囲気はいかがでしたか?
吉田:毎晩飲みに行っているような、いつも以上に楽しい現場でした。冒頭の交通事故のシーンも、お茶菓子とかを食べながら、穏やかな感じで撮ってましたね。
古田:娘の遺体を見て、泣き崩れた芝居をした直後に、サクッと飲みに行けちゃうような感じでしたね。正直、話が重いので、「現場も重かったらキツイなぁ」と思っていたんです。でも、とにかく明るく健やかな現場で、毎日のように松坂桃李を怒鳴りつけ、寺島しのぶと喧嘩して、ホント楽しかったです(笑)。
◆ちなみに、松坂さんとの共演はいかがでしたか?
古田:『パディントン』の吹き替えで一緒だったりと、以前から知り合いだったんです。とても真摯な芝居をする人だし、芝居に対していろいろ言ってくる面倒臭さもなく(笑)、まさにイメージ通りの人でした。引き芸も押し芸もできるし、いい距離感でとても楽しみながらやれましたね。
吉田:桃李くんは、華があるんだけど、どこか冴えない地味な芝居もうまい。それだけオールマイティーな人なんだけど、男から見てもかわいいんですよ。かわいすぎて、イジメたくなるほど(笑)。