◆今作は森雪之丞さんが作・作詞・楽曲プロデュースを手がけています。雪之丞さんとは2019年の『怪人と探偵』以来ですね。
こうしてまた声をかけていただけて本当にうれしいです。雪之丞さんとは偶然にも家が近くて、『怪人と探偵』がきっかけで、よく食事に連れていっていただいていました。前回ご一緒した時も感じたのですが、雪之丞さんの書く台本はせりふの言葉遊びがすごく面白いんですよね。口語じゃない詩的な言い回しなどもあって、それがとても新鮮で。また、今回のプロットを読んで感じたのは、雪之丞さんのアツいロック魂。もう、いろんなところにロック愛が散りばめられています! もともと“歩く図書館”のような、様々な知識をお持ちの方で、普段の会話もものすごく面白いのですが、そうした知識が余すことなく詰まっているなと感じましたね。
◆一方、演出の河原雅彦さんとは初めのお仕事になります。
初めての演出家さんとお仕事をさせていただくのは久々です。やっぱり最初は緊張しますね(笑)。二度ほどごあいさつをさせていただいたことがあり、もしかすると僕の舞台をご覧になったことがあるかもしれませんが、実際にご本人の目の前で芝居をするのは初めてのことなので、稽古場では頑張って僕のすべてを河原さんにプレゼンしていければと思っています。
◆初めての演出家と舞台を作る際に意識されていることはありますか?
演出家さんに限らずですが、共演者やスタッフさんを最初のお客さんだと思って芝居するようにしています。ただ、今回はその真ん中にいるのが、河原さんですからね。その思いをより強くもって稽古に臨まないと太刀打ちできない気がしています。きっと、家でめちゃめちゃコソ練すると思いますよ(笑)。“こういうふうにやったほうが面白いんじゃないか”とか、“いやいや、やっぱりこっちかな”みたいな(笑)。
◆稽古初日から全開で“自分”を出していかれるんですね。
はい。いろんな先輩から“一発目からかまさないとダメだ!”と教わりましたので(笑)。それに、稽古初日だからといって、もし“…できません”みたいな空気を出しちゃうと、稽古中ずっとそういうキャラになってしまう気がするんです。ですから、最初から“こんなことも、あんなこともできますよ!”という姿を見せるのを大事にしていて。語弊があるかもしれませんが、その意味では、稽古初日が一番気合入っているかもしれません。
◆失敗するのが怖いということはないんですか?
むしろ、失敗してもいいんです。自分の中でやりきって、演出家さんに「いや、全然違う」と言われるほうが、僕はスッキリしますね。実際、8割ぐらいは「違う」って言われます(笑)。でも、中途半端なまま演じて、“水田くんは、ちょっと何がやりたいか分からないな”と思われるより、“間違ってはいるけど、本気で来てるな”と感じてもらったほうが気持ちいいんです。そのほうが、そのあとの長い稽古でもいい関係が築ける気がしますから。