佐藤千亜妃インタビュー「“声にならない声”のような形にしづらいものをすくい上げることができたら」

特集・インタビュー
2021年09月22日

◆だからなのか、全体の音の作りとしては、余計なものをそぎ落としたシンプルな印象を受けました。

まさにそうです。今回は生音にこだわって録音したんですけど、意味のある音しか鳴ってほしくないという思いがあって。もちろん歌にフィットした楽器の在り方、アンサンブルを練ったりもしたんですけど、例えば、ギターを1フレーズ弾いた時にそこにちゃんと感情が乗ってるかどうかを大事にしたり。でも、そこをものすごく意識していたというよりは、自然に歌に寄り添っていった結果そうなったという感じです。作り終えて自分で聴いても、意味のない音がひとつもないなというのがいい作品として結実したかなと思いますね。

◆一音一音はもちろんですが、佐藤さんが放つ歌声も一言一言が意味のある伝わり方、届けたい思い、メッセージが意味を持ってダイレクトに響いてきました。歌詞とメロディーとの兼ね合いであったり、レコーディング中に気を付けられたことはありましたか?

歌のテイクに関してはかなりこだわって、今までだったらうまく歌えた方を選んでいたのが、今回は多少下手でもそこに何か響く+αがあるものを徹底して選ぶようにしました。特に「カタワレ」という曲は、今作の中だと一番キャッチーでポップな曲だと思うんですけど、アルバムの中ではある種異質で。明るく歌い切ってしまうか、説得力を持たせるためにちょっと重い響きにするのか、ボーカリゼーションはすごく悩みましたね。でも、全体との兼ね合いもあるし、今自分のキャリアとかアーティストとしての性質、自分のパーソナルな部分を反映させた時に、ただ明るく歌うんじゃなくて、今までの人生の重みとかがちょっと染みてくるような歌い方がいいのかなと思って意識してレコーディングしましたね。

◆「カタワレ」はドラマ『レンアイ漫画家』の主題歌としても大きな反響を呼びました。

毎回すてきなタイミングで曲がかかっていたので、私も毎週放送を見ながら新しい発見がありました。あと、視聴者の方も同じような感動を共有してくれているような感じがして、感想を言うのが楽しかったです。しかも、結構歌詞を読み込んでくれている方が多くて、「あっ、ここはきっと吉岡里帆さんの気持ちを歌っているんだね」「ここは鈴木亮平さんの心境じゃない?」とか皆さん解釈が深くて。そういう曲でドラマに貢献できたのも自分の中ですごくうれしかったです。

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