◆世の中の現状も、制作スタイルや方針に大きく影響しましたか?
はい。やはり、コロナの影響はとても大きかったですね。前作「Holy Nights」はコロナ前に作ったものですが、既に気候変動に性差別、人種差別などいろんな問題が地球上にあふれていて。僕自身、難民支援の活動をしながら、“この状況下で自分は何を歌うべきなのか”というものに重きを置いて作ったアルバムでした。さらに、そこに追い討ちをかけて新型コロナウイルスという感染症が世界中に広がってしまった。これは僕だけではなく、全てのクリエイティブに関わる人たちが、問われたと思うんですよ。“今、自分は何を表現すべきなのか”と。去年はツアーも延期になってしまったので、自宅のスタジオからのバーチャルライブ配信、チームラボや、バーチャルリアリティーにXR技術の活用など、とにかくいろんな方法を試しました。そんな中「想像力、思い描く力、創り出すバイタリティー、ゼロから一を創り出すことこそが自分たちの武器なんじゃないか」というところにたどり着いた。そこにこそ、自分たちクリエイターの存在意義があるのではないかと。僕らはイメージして、クリエイトすることで未来を指し示したり、感じることができる。今、日本には“こっちだよ!”と道筋を示してくれるリーダーがいない。長い夜も、明日が来るから越えられるのであって、“明日ね…来るとは思うけど…どうかな”みたいに言われたら、誰だって不安になりますよね(笑)。来るって言ってよ! って。そんな状況だからこそ、僕ら音楽家にできることは、未来は明るいということを信じて、それを歌にして伝えることなんじゃないかなと思ったんです。
◆新たな作品が届き、そこに触れることで感情が動き、行動を起こすパワーにもなると。
僕だって、迷いや不安はありますよ。今だって、不安を全く感じていないわけじゃない。以前のような、汗をかいてダイナミックにみんなと一緒に楽しめるライブ、あの日々は本当に帰って来るんだろうか!? って思う。10月からアメリカツアーに入る予定ですが、本当に正しい方向に進んでいるのだろうか、という迷いはゼロではないし。でも、ただ何事もやらずに屈してしまうのは嫌なんです。去年にしても、コロナのせいで何もできなかったとは絶対に言いたくなかった。失われた1年にはしたくなかった。虚しいままで年を越したくなかったから、年末の最後の最後まで走り抜けました、正直今年になって、もう少し明るい未来になるかなと思っていたけど、まだ状況は好転していない。それでも作品が出せるのは、聴いてくれる人がいるからだし、だから僕らも歌い続けていられる。商業的かどうかは別として、僕なりのメッセージを歌い続けることが、自分の存在理由であり、存在意義だと思っています。