自然豊かな愛知県豊田市と岐阜県恵那市を舞台に、自動車レース“ラリー”をとおして新しい人生を切り開こうとする若者の姿を描いた映画「僕と彼女とラリーと」が10月1日(金)に全国公開される。本作で等身大の主人公・北村大河を演じた森崎ウィンさんは、撮影を通じて何を感じ、何を表現しようとしたのかーー。自身の胸の内を本音で語ってくれました。
◆最初に台本を読んだ時、どんな印象を持ちましたか?
題名に“ラリー”という言葉が入っているので、ラリーをメインに扱った作品なのかなと思っていたら、実際はヒューマンドラマの要素が強くて、そこは少し意外でした。家族の関係性も描かれていて、台本を読みながら僕自身の家族との関係をほんのり頭の中でリンクさせる自分がいたりして、そこもちょっと面白かったです。
◆どのようにリンクさせていたんですか?
僕も自立して故郷のミャンマーにいる家族や親戚と離れ、今は簡単には会えない状況ということもあって、お互いの現状をリアルタイムでシェアできてはいませんが、昔、子供ながらに引っかかっていたことに、今になって向き合えたりして。「そういえば、あの時、ああだったよね」みたいな、本当にささいなことだったりするんですけど、それが両親の過去を知りたいと思うようになったきっかけなのかなと思いました。映画の中にも大河が父親の過去のムービーを見て、自分が見たことのない父親の一面を知るシーンがあるんです。僕の場合、親の過去を知る機会はあまりなかったんですが、“こういう作品と出会ったということは、自分の家族と向き合う時期なのかな”と思って。この映画の撮影が終わってから、親と一緒にご飯に行っていろいろな話をしました。
◆劇中に、大河が母親の昔の日記を見るシーンがありましたね。
実際にそうなったら、ちょっと怖いですよね(笑)。あのシーンは、何が書いてあるのか不安に思いながら“でも台本上、読まなきゃいけないしな…”と思って、恐る恐る手を伸ばしたのを覚えています。そういえば僕、撮影中に役とリンクするために、自分の母親に手紙を書いたんです。映画では母親との関係性はそこまで描かれていないんですが、過去の再現シーンを撮るために、自分でそのバックボーンを作らなきゃいけないなと思って。台本の後ろのほうにあるメモのページに、大河として母親への手紙を書いていたら、だんだん大河が書いてるのか、僕自身が書いてるのかが分からなくなってきて。その台本は今でも家に帰ればあるんですけど、あまり読み返したくないですね(笑)。
◆どんなことを書かれたんですか?
最初は北村大河としての過去の思い出を書いていたんです。でもリアルさを出すために、そこに自分の経験を足していったら、リアルに日本に来たばかりのころに連れていってもらった遊園地のこととかを思い出して。そういうことが頭の中にどんどん浮かんできて、本当にどこからが役でどこからが自分自身なのか分からなくなる瞬間があったんですよ。それで“うわぁ〜!”と思いながらカメラの前に立つと、大体いいシーンになるんですよね。たまに少し苦しかったりしたんですけど、面白いなと思いました。
◆撮影に入る前に、特別な役作りなどはしたんでしょうか?
ラリーというものを自分なりに勉強しました。ただ、今回は脚本も塚本(連平)監督が書かれていたので、僕に近づけて書いてくださったところも、多分あるんだろうなと思っていて。大河という役は、演じるために何かすごい役作りをしなければいけないというよりは、とにかく自分とリンクする部分を意識して演じましたね。ありがたいことに、早めに台本を頂けたので、クランクイン前に監督といろいろ話し合うこともできて。家族との関係についても、「30歳の大河が自分の父親にイライラをぶつけるって、どういう感情なんですかね?」と聞いたりもしました。ただ、だからといって撮影時に100%理解していたかというと、微妙なところで。(父親役の)西村まさ彦さんの声を聞きながら自然とそういう芝居になっていった部分もあったので、そういう意味では現場で感じながら作り上げていったところが大きかったです。豊田市の実家に帰った時の大河の故郷への感覚とかもそうですし、実際に現場に入って、カメラの前に立った時に出てくるものをそのまま表現する感覚だったかなと思います。
◆共演の深川麻衣さんの印象は?
深川さんは僕と同い年で、とりあえず「タメだね!」という話で盛り上がりました(笑)。やっぱりカップルになっていく役なので、パートナーとして信頼してもらいたいですしね。とても気さくな方でしゃべりやすかったですし、お芝居にもすごく真摯に向き合っていて。本当に素敵なシーンパートナーで、いろいろと助けてもらいました。
◆橋の上での2人のシーンは印象的でした。
あのシーンは実はほとんどアドリブで、その場で生まれるものが多かったんです。ほかのシーンもそうなんですが、監督も“2人が向き合った時に生まれるもの”をかなり重視されていて。ゴールだけ決めて「よーい、はい! 好きにやってみて!」みたいな(笑)。それで何回かやって、最終的に監督が「じゃあ、これでいきましょう」と調整してくださるんですが、エチュードをして作り上げていくような感じで楽しかったです。
◆塚本監督はどんな方でしたか?
すごく素敵な方でした。役者のことを一番に考えてくださっていて、全く怒らないんです。基本的に現場はドタバタしてますし、コロナの関係で人数も制限されているのでスタッフの方々は大変だったと思うんですけど、そんな状況でも監督だけは常に前向きで。僕らが不安になっている時も「大丈夫、いける!」という感じで、気づいたら監督がすべて導いてくださっていて。すごく包容力のある方だなと思いました。
◆細かい演出などはなく?
あまり細かい指示を頂いた記憶はないですね。深川さんとのシーンも、「台本だとこうなってるけど、前日からの流れでこうはならないよね」「2人でどんな感じになるかエチュードっぽくやってみようか」と言って、その場で脚本を少し変えたりして。そういうのがすごく楽しかったですし、監督の懐の深さを感じました。
◆役者冥利に尽きる感じですか?
と同時に、試されている部分も大きいなと感じました。だけど、僕から提案させてもらったこともチャレンジさせてくださって。実際にやってみて、「そうなるんだったら、台本のこの部分だけ取り入れてみようか」という感じで、監督が足し算や引き算をしながら現場で作ってくださったので、そこはすごく感謝しています。
◆話は変わりますが、子供のころに好きだったテレビ番組はありますか?
『ハッチポッチステーション』(笑)。日本に来たばかりのころ、いつもワクワクしながら見ていた記憶があります。『ざわざわ森のがんこちゃん』とか『忍たま乱太郎』、『おじゃる丸』など、3チャンネル(Eテレ)ばかり見ていました。
◆最近はどんな番組を見てるんですか?
最近はNHKが多いかもしれないです。特に好きな番組があるというよりは、ニュースとかドキュメンタリーとか。この間もミャンマーの特集をやっていましたし。朝起きたらまずNHKをつけて、流れているニュースを耳で聞きながら出かける準備をしていることが多いです。
◆今回の映画の中にも美しい秋の風景がたくさん出てきますが、森崎さんにとって“秋”と言えば何ですか?
秋と言えば…乾燥? 乾燥の季節の始まりが秋。喉が乾燥すると歌えなくなっちゃうんですよね。ただでさえ一日中マスクをしてるのに、寝る時もしなきゃいけなくて、僕にとってはイヤな時期ですね。良い加湿器を見つけたいなと思ってます。
◆秋の味覚と言えば?
世の中的によく言われるのはサンマだと思うんですが、個人的にはなぜかタケノコのイメージ。あまり“タケノコ食べたい!”と思ったことはないですけど(笑)。基本的に僕は旬の食べ物とかはあまり意識してなくて、秋だろうが何だろうが、焼きそばが好きです(笑)。
◆では最後に、完成作を観ての感想を教えてください。
今のご時世、自分の地元に帰るというのは特別感が強いなと思っていて。この映画を観て、純粋に僕も故郷に帰りたくなりました。映画の中で大河が故郷に戻った当初はアウェー感が強かったですけど、その感じもすごく分かるんです。僕も久しぶりにミャンマーに帰ると、地元のはずなのに1枚も2枚も壁があるような感覚があって、見えているのに何かが届かない…みたいな感じ。だけど2〜3日いると、自然とその壁が溶けて消えていくんですよね。今は、あの感覚を味わいたくても簡単に味わえないのが、僕にとっては大きくて。そんなことを考えつつ、純粋に自分の故郷を重ねながら観られたのは良かったですし、皆さんにも自分の家族と重ねながら観ていただけたらなと思っています。
PROFILE
森崎ウィン
●もりさき・うぃん…1990年8月20日生まれ。ミャンマー出身。10歳の時に来日し、2008年より芸能活動をスタート。映画、ドラマ、舞台などで活躍する傍ら、アーティストとしても活動中。2022年夏、主演ミュージカル「ピピン」が東京・大阪で上演予定。
作品情報
「僕と彼女とラリーと」
10月1日(金)全国ロードショー
(STAFF&CAST)
監督・脚本:塚本連平
出演:森崎ウィン、深川麻衣/佐藤隆太、田中俊介、小林きな子、有福正志、小林涼子、よしこ(ガンバレルーヤ)、竹内力、西村まさ彦 ほか
主題歌:「JOYRIDE」加藤ミリヤ
配給:イオンエンターテイメント / スターキャット
(STORY)
大学進学を機に上京し、役者を目指していた北村大河(森崎ウィン)はある日突然、大河の地元で暮らす幼馴染の上地美帆(深川麻衣)から、大河の父(西村まさ彦)が急死したことを知らされる。父はラリーで数々の栄誉に輝いたメカニックで、今は「北村ワークス」を営んでいた。優秀なメカニックの父なしに経営存続は難しいと考え、兄(佐藤隆太)が「北村ワークス」を畳もうとするが、遺品整理をする中で父の過去に触れ、父の残した本当の思いに気づいた大河は、自分自身と仲間たちの再起をかけてラリーにチャレンジすることを決意する。
公式サイト:https://bokukano-rally.com
公式Twitter:@bokukano_rally
©️2021『僕と彼女とラリーと』製作委員会
photo/映美 text/水上じろう hair&make/KEIKO(Sublimation) styling/森田晃嘉
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<応募締切>
2021年10月8日(金)23:59