◆純という役柄については、どう捉えていらっしゃいますか?
彼女には結婚8年目になる夫・武頼(池内博之)がいるんです。2人はとても愛し合っていて、周りからも幸せな夫婦だと思われている。でも、実は武頼とは5年間もセックスレスで。2人の間に欠けているのはそこだけ。でも、その唯一足りないもののせいで、純は夫から女性としてもう見てもらえないのでは…という悲しさを感じ始めていて。子供がいないことにも不安を抱えているのですが、それは彼女が心から子供を望んでいるからなのか、それとも世間からの見られ方を気にしているからなのか、自分自身でもどんどん分からなくなってきている。そうした感情の揺らぎや、もやもやとした思いは、多くの方に共感していただけるのではないかと思います。
◆萩原ケイクさんによる原作コミックも、「とてもリアルだ」という同年代の女性からの共感の声が多いそうで。
ドラマ内のせりふや演出も、リアリティーが追求されています。一般的にドラマのセオリーと言われるような、デフォルメが全て排除されているんです。言ってしまえば、“ドラマの武器”を全部削ぎ落としていって、本物の感情や嘘のないやりとりだけが残っている。だから、きっとこれまでに見たことのないドラマになっていると思います。
◆台本を最後まで拝読しましたが、登場人物全員がフラットに描かれているのが印象的でした。
そこも、この作品の特徴だと思います。悪人を作らないんです。純も、武頼という愛する夫がいながら、働きに出た会社で出会う年下の同僚・真山篤郎(藤原季節)君に少し気持ちを持っていかれてしまう瞬間がある。それに対して断罪も肯定もせず、“人間なんだから、ほんの一瞬ぐらいは心が動くことってあるよね”と優しく表現してくれていて。それがすごく救いにもなっているんです。一番大切なのは、人のいろんな感情に対して明確な善悪の区別を付けるのではなく、その場その場で生まれた気持ちを優しく、温かく、丁寧に見守ってあげることなんじゃないかと。だから私も、“これはいい”“これはダメと”決めつけるようなドラマにならないように意識して演じています。