『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』は、2012年より劇場上映及びテレビ放送してきた『宇宙戦艦ヤマト2199』『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』シリーズの続編で、1979年に放送されたテレビスペシャル『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』以後の物語を再構築している。多くの困難を乗り越え、厳しい選択をしつつも生き抜いてきた古代進を中心に、新クルーを加えてさらに深みのある物語を描いています。そんな本作で、古代進を演じる小野大輔さんに、10年近く演じてきた古代への思い、そして最新作への意気込みなどを聞きました。
◆『宇宙戦艦ヤマト2199』の第一章が劇場上映されたのが、2012年でした。古代を演じて10年近くになる今のお気持ちから聞かせてください。
そんなに長い時間旅をしていたとは思えないくらい、この10年はあっという間でした。古代は地球を救うという大きな命題を抱えて旅立ち、その中で大切なものや大切な愛に出会ってきた。森雪との愛ももちろんですが、異星人との交流や、戦いの中でヤマトクルーとの絆も深まりました。旅の中でいろんなものを得ているので、改めて振り返るとずっと旅してきて良かったなと思います。
◆小野さんにとって、古代進はどんな存在になっていますか?
『2199』の頃は、『宇宙戦艦ヤマト』の古代進という、一つの象徴を背負わなければいけないということで、プレッシャーを感じていましたし、自分には大きすぎる存在だと思っていました。ただ、10年近く旅を重ねていろんな人と出会い、様々な経験をしていく中で、どんどん古代と自分がリンクしていったんですね。古代はただ猪突猛進なだけじゃなく、ちゃんと後ろを向き、ちゃんとうじうじして、ちゃんと迷う。そして、その中で一つの答えを見つけて、1人じゃなくて、みんなで背負うことに気づく。それが、自分の芸歴や人生に重なるんです。だから今は「小野大輔=古代進」になっていると感じています。自分が古代みたいな人間だったんだと気づいて意外でしたが、今はそれが誇らしいです。
◆『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』では、古代がヤマトの艦長となって、新たに旅立っていきます。
毎回新シリーズが始まるたびに「なぜ旅をするのだろう」と思うのですが、本作でも同じことを考えました。彼らは旅に出ると、その都度過酷な運命に巻き込まれていくんです。でも、ヤマトにしか背負えない使命があるからこそ、プレッシャーを抱えつつも出航するんですよね。本作の物語に触れて、彼らにとって旅立つということは誇りなんだと感じました。
◆本作では、土門竜介を始めとする新クルーもヤマトに乗り込んできます。
土門を見た時は、『2199』でヤマトに乗り込んだばかりの古代を思い出しましたし、若いころの自分にも重ね合わせて、熱い思いが込み上げてきました。同じ使命を帯びて、同じ熱量を持った若い魂を感じて、とても胸が熱くなったんです。また、(土門役の畠中)祐の芝居が熱いんですよ。彼は不器用でまっすぐな男ですし、僕は彼のお芝居がすごく好きなので、彼の芝居を聞くことができて、うれしくなりました。
◆安田賢司監督とは、これまでもいろいろな作品でご一緒されていますね。
はい。安田さんも『ヤマト』のリアルタイム世代ではないそうなので、新しい時代を作っていくクルーだと感じました。それでいて、『ヤマト』が持っている熱量を、すごく見事に具現化して表現してくださっているんです。僕自身は「安田監督って、こんなに熱かったんだ!」と思いましたし、安田監督と新たに旅立てることがうれしかった。僕が古代なら、安田監督は島(大介)のような存在だなとも感じるんです。旅の道標を作ってくださっているようで、すごく頼もしかったですね。
◆作中では前作から3年経っているということで、演技ではどんなことを意識しましたか?
意外と時間は経っていないんですよね。ただ、古代を取り巻く環境はガラッと変わってしまった。『2202』で古代や雪がたどりついた答えは、地球人類が出した答えであり、正しいものだったと思っています。地球の中にはそれをよしと思っていない人ももちろんいるけれど、それを受け止めて古代も精神的にグッと大人になったと感じました。今までだったら、雪と話している時は彼女しか見ていなかったと思うけれど、周りのクルーや若手のこともちゃんと気にかけて、俯瞰で見られるようになっている。実は僕自身もそうで、古代を演じるにつれて周りが見えるようになってきたんです。だから、その経験も踏まえて、今回は古代に経験値を乗せたいなと思って演じました。
◆ヤマトの艦長になって、腹が据わった感じがありました。
『2202』から3年なので、まだ葛藤や迷い、不安はあると思います。でも、それを表に出さなくなった。部下たちにそれを決して見せない覚悟ができたんじゃないかな。そして、それは古代が沖田艦長を見て思っていたことだったのではないかと感じるんです。これは僕の想像ですが、古代はずっと沖田さんに相談し、沖田さんの前で泣いていたと思うんですよ。そんな時期を経て「沖田艦長のようになりたい」「艦長はこうあるべきだ」という覚悟をした。実は、僕自身はあまり彼の「覚悟」について意識していなかったんです。でき上がった映像を見て、迷いがなくなったと感じたので、とても不思議でしたが、きっと古代のセリフを見て、無意識のうちに「覚悟」が声に乗ったんだろうなと思います。
◆本作で『ヤマト』に初めて触れる方に見てほしいポイントは?
『ヤマト』はずっと「人類のために命を賭して宇宙へと旅立つ、愛とロマン」を描いていて、それは普遍のテーマなんですね。だから、小学生が見ても、20代の方が見ても、“ヤマトおじさん”が見ても(笑)、きっと同じ気持ちを感じてもらえると思います。なので、若い世代の方にはどこをというよりもまず、「上の世代の方と共通の話題で盛り上がれますよ」と伝えたいですね。1970年代の『ヤマト』をリアルタイムで見ていた世代の方で、新しいシリーズを見ていない方もいらっしゃると思いますので、「『2199』から『2205』のシリーズ、めちゃくちゃ面白いですよ」って話題を振ってみてほしい。今って、ヤマトが描いている普遍のテーマを新しい世代に繋いでいく、すごく大事な時期だと思うんです。だからとにかく見ていただいて、上の世代の方と『ヤマト』という共通の話題で語り合ってください。
◆本作でのお気に入りのシーンや注目シーンを教えてください。
土門と古代との関係性に注目してほしいです。雪と話をしている時に古代が「あいつは俺なんだ」ってポロッと言うんですが、僕も祐を見て、「昔こういうところあったな」「こんなふうに不器用だったな」と思うので、すごく共感したんです。「僕って古代進なんだな」と思えたシーンだったので、すごく好きなんです。それから、土門と古代ってシンパシーが強すぎるせいか、多くを語らないんですよね。そこに男の美学を感じました。あとは、薮さんかな。チョーさんのお芝居って、軽やかな中にいろいろな感情が乗っかっていて、すごく深いんですよ。人間の泥臭さやずるさ、汗や熱をものすごく感じるお芝居をされるので、薮にもいろいろあったんだなと思えて、一番共感できるかもしれないと思ったくらいです。薮ファンの皆さんは、楽しみにしていてほしいですね。「裏切り者と不穏分子が一緒に旅をする」というセリフも好きです。
◆本作は、ほかにも印象的なセリフがたくさん登場しますよね。
古代の「ヤマトは希望の艦だ」というセリフも、未知の世界へと進んでいく人々を応援してくれる、背中を押してくれる言葉だなと思いました。長ゼリフの中の一節ですが、すごく心に残りました。
◆コロナ禍ということで、ほぼひとりずつのアフレコだったそうですね。
そうなんです。『ヤマト』は“仲間を信じることで艦を進めていく”というストーリーですし、その結果“異星人とでも分かりあえる”という人と人を描いたドラマで、さらに本作は“みんなで運命を背負うことで、古代も重圧から解放されていく”という、“みんな”が大切な物語なのに、それを1人で録るのかと。最初はつらかったですね。でも、これも運命かと思い、ならば『2199』から『2202』までで培ってきた信頼関係や絆をしっかり見せようと切り替えることができました。古代は「ポジティブ馬鹿野郎」だと思うので(笑)、その気持ちになれたのかな。桑島(法子)さんだったらこう返してくるだろうとか、祐だったらこうするだろう、山寺(宏一)さんだったらこう演じるだろうと想像もできましたね。実際に完成した映像を見たら、僕の想像を超える演技もたくさんあって、やはり皆さんこれだけの熱量をくれるんだと、改めて感動しました。その分、スタッフの皆さんはすごく大変だったと思います。だから今ここで、『2205』を作ってくださったヤマトクルーの皆さんにお疲れ様でしたと言いたいですね。
◆自分と古代がリンクしてきたというお話でしたが、自分のことも「ポジティブ馬鹿野郎」だと感じますか?
すごくうじうじしていて、内向的で、あまり論理的に物事を考えられる人間ではないという、ちょっとネガティブなイメージが自分自身にあるんです。でも、周りの人から見た自分は、ポジティブで明るいイメージみたいなんですよ。『2199』の頃から感じていたんですが、僕、悪いキャラクターをほとんど振られないんですね。声のトーンは、ミドルで低めだし、悪いキャラクターもいけると思うんです。でも、いつもポジティブ馬鹿野郎や悪者になりきれない人、ラスボスなんだけど、本当は人のために戦っている人…と、いい人を演じることがほとんどなんですね。そう考えると、周りの人がポジティブだと思ってくださる一方で、キャラクターも僕をポジティブに見せてくれているんだと思います。20年近く声優をやってきたから相互に関係し合って、今の自分はポジティブな人になっているのかもしれませんね。
◆本作のタイトル「新たなる旅立ち」にちなんで、今後新たに始めたいことはありますか?
初めて言うんですが、最近は若手の子を育ててみたいと思い始めました。具体的には何も決まっていませんが、自分の声優としての技術や思いを若手に伝えたいです。もちろん、それには準備をしっかりしなければならないんですが、そういうフェーズに入ってきているので、そこも古代とリンクしていると感じます。
◆多くの人の思いを乗せたヤマトの新たなる発進、たくさんの方に見ていただきたいです。
そうですね。今この時代にヤマトがまた発進するということに、僕はとても強い意味を感じています。エンターテイメントって、どこまでいっても見た人がポジティブな思いを抱けるものだと信じて、僕は声優としてエンターテイメントに関わっています。今の時代、理不尽なことや我慢しなければならないことも多く、生きているとつらいこともたくさんあると思います。でも、どんなことがあっても前を向いて空を見上げて進んでいけば、必ず希望の未来が待っているんだと『ヤマト』は感じさせてくれる。なので、ぜひ見てください。一緒にこの船に乗って、未来へ旅立っていただければうれしいです。
PROFILE
小野大輔
●おの・だいすけ…5月4日生まれ。高知県出身。主な出演アニメ作に『進撃の巨人』エルヴィン・スミス役、『おそ松さん』松野十四松役、『黒執事』セバスチャン・ミカエリス役、『NIGHT HEAD 2041』霧原直人役、『怪物事変』ミハイ・フロレスク役など。
作品情報
『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』
2021年10月8日(金)より劇場上映・Blu-ray 特別限定版販売・デジタルセル配信同時スタート
(STAFF&CAST)
原作:西﨑義展
製作総指揮・著作総監修:西﨑彰司
監督:安田賢司
シリーズ構成・脚本:福井晴敏
脚本:岡秀樹
キャラクターデザイン:結城信輝
音楽:宮川彬良、宮川泰
アニメーション制作:サテライト
配給:松竹ODS事業室
声の出演:小野大輔、桑島法子、大塚芳忠、山寺宏一、井上喜久子、畠中祐、岡本信彦、村中知、羽多野渉、伊東健人 ほか
(STORY)
白色彗星帝国との戦いから3年。ガミラス民族を滅亡から救うべく、デスラー総統が新たな母星として見出したのは、強大な星間国家の領域内にある星だった。銀河で勃発する領土紛争。ガミラスと安全保障条約を結ぶ地球は、その争いに巻き込まれていく。一方古代進は、地球に軍事的・経済的優位をもたらしていた時間断層が自分たちの命と引き替えに消滅したことに責任を感じながらも、ヤマトの新艦長の座についていた。来るべき有事に備え、新クルーと共に訓練公開に旅立つヤマト。その中には、古代を狙う何者かが紛れ込んでいた…。
公式サイト:https://starblazers-yamato.net
公式Twitter:@new_yamato_2199
©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会
photo/松下茜(エントランス) text/野下奈生(アイプランニング)
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2021年10月15日(金)23:59