上坂すみれとヒャダインが初コラボ!「“いつか機会があれば”とずっと思っていました」

特集・インタビュー
2021年10月26日

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

人気声優の上坂すみれさんが12枚目のシングル「生活こんきゅーダメディネロ」を10月27日(水)にリリース。この曲は、現在放送中で彼女も出演するテレビアニメ『ジャヒー様はくじけない!』の第2クールオープニング主題歌になっている。自身の音楽のルーツともいえる“電波ソング”に挑んだ今作。自ら作詞をしたカップリング曲も含め、この一枚に込めた思いをたっぷり伺いました。

 

◆10月27日にリリースされる最新シングル「生活こんきゅーダメディネロ」はヒャダイン(前山田健一)さんが作詞・作曲をされています。

実はお仕事でご一緒させていただくのは初めてなんです。以前から、私の音楽とヒャダインさんが作る楽曲の世界観には通じるものを感じていて、“いつか機会があれば”とずっと思っていました。それで今回、テレビアニメ『ジャヒー様はくじけない!』のオープニング主題歌を歌うことになり、まさにピッタリだなと思いましたので、思い切ってお声がけさせていただいたんです。

◆ヒャダインさんとは、どのような流れで曲を作っていったんですか?

最初に、ヒャダインさんにもアニメ作品の原作を読んでいただき、お互いの意見を出し合いながら、曲の方向性を決めていった感じです。とはいえ、ヒャダインさんと言えばニコニコ動画で電波ソングをたくさん作ってこられてきて、まさしく私自身のオタク活動の根源とも言えるジャンルを牽引されてきている方なので、早い段階で“電波ソング”でいくことは決まりました。

◆実際に上がってきた楽曲を聞いた時の印象はいかがでした?

イントロからヒャダインさん節を感じました。懐かしさと新しさが混在しているのもヒャダインさんらしいなと思いましたし。ただ、“これ、本当に歌えるのかな?”という不安もありましたね。というのも、展開が早く、一曲の中で目まぐるしく変化していくんです。“これはもしや、4〜5人でやっと歌える曲なんじゃないだろうか…”とも思いましたが、何とか頑張ってみよう、と。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆確かに、ユニットやグループで歌うような複雑な曲ですよね(笑)。

そうなんです。ヒャダインさんはいつも味が濃いめの曲がお得意な方で、私の音楽もトリッキーな曲が多いほうなので、きっとそれに合わせてギミックを入れてくるだろうと予想はしていたのですが…ちょっと想像以上でしたね。

◆歌詞にも四字熟語や英語、ローマ字、カタカナが混在していて、ヒャダインさんワールドが炸裂していますね。

主題歌になっているアニメは、主人公であるジャヒー様が魔界でNo.2の実力であったにも関わらず人間界に送られ、4畳半の部屋に住んでバイトをしながら魔界復興を目指すというもの。ですので、ジャヒー様の生活の悲喜こもごもを歌詞で表現していただきました。それに、ヒャダインさんの歌詞の魅力は、おっしゃるようにボキャブラリーの豊富さで。慣用句などもよく登場するのですが、決して説教くさくなく、むしろオシャレさを感じるところがすてきなんです。しかも、ものすごく言葉数が多いのに、どれもしっかりと聞き取れる。初めて聴いてもしっかりと歌詞が分かる電波ソングって、意外と作るのが難しいのですが、この曲はそこにも感動しました。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆やはり言葉数が多いと、歌うのは大変ですか?

私も最初はその不安があったのですが、今回の曲はものすごく歌いやすかったです。テンポもかなり速いのですが、もしかしたらライブで歌うことも想定して作ってくださったのかなと感じました。気持ちが乗ってくると、どんどん歌いやすくなりますし。…というか、むしろ気持ちが乗らないと歌い切れない曲なのですが、レコーディング現場でヒャダインさんが直接ディレクションしてくださったこともあり、終始楽しく歌うことができました。

◆ヒャダインさんからの指示を受ける中で、普段のレコーディングとの違いを感じることはありましたか?

一番の違いは、表現の切り替えの潔さでした。この曲は一行ごとに歌詞の雰囲気がガラッと変わることがあるのですが、「前後のつながりとかは考えなくていいので、思いっ切り変えちゃってください」と言っていただけたんです。その結果、Aメロ、Bメロ、サビで全然歌い方が違ったり。それに、時にはお芝居っぽく感情を表現するところもあり、歌を歌っているというより、せりふの応酬みたいなのがあったのも印象的でしたね。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆ミュージックビデオもすごい内容で楽しかったです!

今回は、なんと5役に挑戦しています。『ジャヒー様はくじけない!』の中で私は魔法少女役を演じているのですが、今回のMVでも魔法少女の設定になっていまして。監督には事前にお伝えしていなかったので、すごい偶然に驚きました。また、映像の中で展開されるストーリーはアニメ作品に少し寄せていて、私がいろんなお仕事をしながら日銭を稼ぎ、貯めたお金で魔法少女に変身して怪獣と戦うという内容になっています。どんどんと物語が展開していく忙しさやテンション感が楽曲に非常にマッチしていて、すごく楽しい映像に仕上がりました。

◆MVの中で演じているいろいろな職種も、監督からのアイデアですか?

そうです。私はアルバイトをしたことがなかったので、楽しかったですね。バンダナを巻いたラーメン店員の格好とか交通整理の警備員の制服など、どれも一度着てみたかったので、それだけでうれしくって。もちろん、実際に働くとなったら大変だと思いますが、疑似体験できただけでもいい経験になりました。

◆いろんな仕事を終えたあとで給料袋を手にする時の笑顔もすてきでした。

今回の監督さんがとても面白い方で、動きやせりふをつけながらイメージを伝えてくださるんです。例えば、給料袋のシーンだと、「『あ、給料だ! うれしいです! ありがとうございます!!』みたいなテンションでお願いします!」とか。しかも、撮影中もカメラを回しながら同じように気持ちを煽ってくださるので、私もその勢いに乗っかっていく感じが楽しかったです。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆怪獣とのバトルシーンも凝っていて素晴らしかったです。

なんと、ゲストに怪獣さんがいらしてくれたんです! 早稲田大学の伝統ある特撮サークルのオリジナル怪獣だそうで、わざわざ来てくださったんですよ。それに私は今、特撮ドラマに悪役の声で出演しているのですが(『ウルトラマントリガー』妖麗戦士カルミラ役)、こうして実際に戦うことで、倒す側や倒される側の気持ちがちょっとだけ分かって良かったです。“あ〜、こんなにやるせない気持ちになるんだなぁ”って。

◆CDジャケットも「生活こんきゅーダメディネロ」のタイトルにピッタリの面白さがありますね。

ハイエンドといいますか、現代美術といいますか…日常生活の中で廃棄されるものたちで作られた非常にエコな衣装を身にまとっています。背景の美術セットも、ダンボールやビニール、アルミなど、どの家庭にもあるものばかり。にもかかわらず、どれもパッと写真を見ただけでは分からないくらいオシャレで驚きました。特にピンチハンガーで作られた王冠を見た時は、“この発想はすごい!”と感動しましたね。ただ、重くて歩きづらいし、着け心地はあまりよろしくないんですが(笑)。

◆ちなみに、表題曲の「生活こんきゅーダメディネロ」にかけて、もし無尽蔵に使えるお金があったら、上坂さんなら何に使いますか?

無尽蔵ですか…それならば、軍隊から戦車や潜水艦を買いまくりたいです。ただ、私は免許を持っていないので、免許をお持ちの方に運転してもらって…。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆特に欲しい戦車はあるんですか?

ソ連の戦車って機動性が高いものが多いんです。中でもT-55は冷戦時代から走っているものがたくさんあって。…そうだ! お金があれば、T-55で旅とかしてみたいですね。

◆いつごろから戦車や潜水艦が好きになったんですか?

結構昔からですね。それに、このお仕事をするようになってから、海上自衛隊で一日艦長をさせていただいたり、陸上自衛隊の方々ともお仕事できたことで、ますます好きになっていきました。戦闘機も好きなんです。ロシアのものだとスホーイとか、ヤコブレフとか、ツポレフとか。でも、航空自衛隊の方々とのお仕事がなくて。機会があればぜひ見に行きたいですね。

◆では、カップリング曲についてもお話を。今回は2曲収録されていて、どちらも上坂さんの作詞です。これは最初から決めていたんですか?

「ものどもの宴」は私の動画ラジオ(『上坂すみれのおまえがねるまで』)のテーマソングになることが決まっていましたので、スタッフさんから歌詞もお願いしますというオーダーがありました。「ドロップス」に関しては、オシャレな曲を作ろうというところからスタートしたんです。ただ、あまりにもオシャレすぎると私がついていけなくなるので、それならば自分で書こう、と。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆「ものどもの宴」はどのようなテーマで作詞をされたのでしょう。

事前に頂いたお題が《夜の舞踏会》だったんです。また、曲調にも優雅さと俗っぽさが交互に出てくる印象がありましたので、あまり貴族っぽい舞踏会になりすぎず、普段は一般的な暮らしをしながらも、ときどき非日常的なパーティーをして楽しむ人物をイメージして書きました。

◆こちらも表題曲同様にテンポ感のある楽曲ですが、歌詞を書く上で難しさを感じた部分はありますか?

やはり、テンポが速いと言葉数が多いので大変ですね。それに、「ものどもの宴」は譜割りが複雑でしたので、余計に難しくて。でも、書けるとすごくうれしいです。4行くらい書いたら達成感にあふれ、“よし、今日はもういいだろう!”と思ったり。そうやって、いつもちびちびと書いています。

◆一気に書き上げるタイプではないんですね。

そうなんです。全然、集中力が続かなくって。なので、締め切りはいつも余裕を持っていただいています。

◆歌詞を書く時のルーティーンなどはあるんですか?

私はいつも、スマホでメールの下書きに書いてますね。メールの件名のところに曲のテーマを書いておいて。そうすると時間をかけて書いていても、内容がブレることがないんです。たまに頭の中が迷宮入りして、どんどんと変な方向にいってしまうこともありますが、その時は潔く一度全部消して書き直します。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆では、もう一曲の「ドロップス」についても教えてください。

先ほどもお話したように、こちらはすごくオシャレな曲です。3曲目に収録されることが決まっていたので、「生活こんきゅーダメディネロ」と「ものどもの宴」を乗り越えてきた皆さんに向けて、“お疲れ様”という思いを込めて、癒やしをあげられるバラードにしました。

◆そんな優しさが(笑)。歌詞も「ものどもの宴」とは言葉のチョイスを含め、ガラッと変わっています。

デモを聞いた時、私にしては珍しく今風のシティポップ感のある曲だなと感じましたので、これまでになかったテーマで歌詞を書いてみようと思ったんです。そこで、いつもは私が別人格のキャラクターになり切って歌詞を書くことが多いのですが、今回は頑張って自分に向けて書いてみました。それもあって、ものすごく難航しましたね。仕事が終わってから近所をウロウロ歩き回ったりして書いた歌詞ですので、“こういうオフの時間を過ごしたい!”という願望や、“上坂さん、お疲れ!”という思いが滲み出ていて。その意味では、とても人間らしい曲だと言えます。

◆作詞はいつも苦労されるとのことですが、普段からインプットするためにされていることはありますか?

特別な何かをすることはないのですが、昔の歌謡曲が大好きで、よく聴いています。昔の歌は言葉の数が多くないので、スッと入ってくるんです。それに、一曲の中にたくさんのドラマが表現されていて、情景も浮かびやすい。とはいえ、勉強のためというより、純粋に好きで聴いていることが多いですし、結果的にそれが自然と自分の身になっているのかなと思います。

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

◆上坂さんは今年声優デビュー10周年を迎えました。最後に、これまでを振り返っていただくと、どんな10年だったと感じていますか?

これまで何かを10年も続けてきたことがない私にとっては、ただただ驚くばかりです。素直に、“私、偉い!”って思います(笑)。有象無象の人間が、よくぞここまで続けてこられたなって。しかも、ずっと楽しい10年でしたので、それもハッピーなことですし、応援してくださっているファンの皆さんには本当に感謝の思いでいっぱいです。そして、声優としてこれまでいろんなキャラクターたちと出会えたことも、私にとっては宝物で。それぞれの役はいつまでも色褪せずに残っていますし、これから出会うキャラクターたちとの絆も大事にして、これからも頑張っていきたいなと思っています。

PROFILE

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

上坂すみれ
●うえさか・すみれ…1991年12月19日生まれ。神奈川県出身。2011年に声優デビューし、2013年に1stシングル「七つの 海よりキミの海」でアーティストデビューを果たす。最近の代表アニメ作品に『ジャヒー様はくじけない!』魔法少女役、『異世界食堂2』アレッタ役、『がんばれ同期ちゃん』後輩ちゃん役、『BanG Dream! ガルパ☆ピコ ふぃーばー!』白鷺千聖役など。

リリース情報

12thシングル「生活こんきゅーダメディネロ」
2021年10月27日(水)発売

https://www.tvlife.jp/wps/wp-content/uploads/2021/10/423955_13.jpg上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー
初回限定盤1980円(税込)

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

通常盤1430円(税込)

上坂すみれ「生活こんきゅーダメディネロ」インタビュー

期間限定アニメ盤1430円(税込)

公式サイト:http://king-cr.jp/artist/uesakasumire

公式Twitter:@uesaka_official

 

photo/松下茜(エントランス) text/倉田モトキ hair&make/北川恵(クララシステム)

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2021年11月2日(火)23:59

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