横田龍儀インタビュー「自分がどういうふうに変化していくのかを知りたい」

特集・インタビュー
2021年10月27日

横田龍儀インタビュー

ミュージカル「刀剣乱舞」~三百年の子守唄~の物吉貞宗役で2.5次元舞台デビューして以来、MANKAI STAGE「A3!」など、さまざまな舞台を中心に活躍している横田龍儀さん。11月には「朗読活劇 信長を殺した男 2021」に出演を控えています。歴史ものであり朗読劇というこの作品に挑む心構えや、日ごろ“芝居”にどのように向き合っているのか、じっくり伺いました。10月27日発売のTV LIFE「2.5D Actor’s File」と合わせてお楽しみください!

◆「朗読活劇 信長を殺した男 2021」に出演が決まったときは、どのように感じましたか?

朗読劇は去年、リモートで稽古をして無観客配信という形ではやっているのですが、舞台という意味では未経験に近い感じになります。だからこそ、チャレンジしてみたいと思いました。まず原作の漫画を読ませていただき、純粋に面白いなと思った。歴史により興味を持ってもらえて、しかも自分にとっても勉強になる作品だなと。

◆朗読劇に対しては、どのようなイメージがありましたか?

以前は“本を読んで聞かせるなら、目の前で見なくても耳で聞ければいいのでは?”という疑問もありました。でも実際にやってみて、音声だけじゃなく朗読しているときの表情など、いろいろと読み取れるものはあるんだと分かった。お客さんが受け取れる情報は、思っていた以上に多い。1人で読むわけではないので、相手の方の表情を見ながら行うお芝居なんだなと感じました。相手のせりふに対しての反応も、毎回同じわけではない。生の芝居に変わりはないんですよね。

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◆朗読劇になると、稽古時間も少ないそうですね。

はい。僕としては、たっぷり稽古をしてから臨みたい気持ちはありますが、稽古を積んで読めば読むほど役の解釈が深まるということもあれば、逆に、あまり稽古をしないからこそ、やりながら気づけることがある。それはそれで面白いなと思いましたね。稽古を重ねないから緊張もするんですが、それはそれで、ほかでは味わえない新鮮さがあるんです。

◆探り探りな部分もありつつ。

全部解釈してやるのと、分からないものを分からないままにやることと、それぞれによさがあるなと思いました。家で1人で練習もしているけれど、掛け合いって、相手に合わせる部分も大きいので想像通りにはいかないことのほうが多い。いきなり本番だと、“あっ、そう来るのか”というのがその場で分かるのが面白いです。緊張もしますけどね(笑)。その場でどんどんのめり込んでいくっていうのが、朗読劇に出ている側の感触です。

◆せりふが飛ぶ、という不安はないわけですよね。

それはないです(笑)。普通の舞台は稽古期間がしっかりあるので、言い慣れない言葉遣いも、何度もやっていくうちに慣れてくる。朗読劇だと、なじんでないなっていうせりふが分かりやすいんですよね。その分、文字の意味を調べるという事前準備はしっかりするようにしています。

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◆本作はいかがですか? 今の段階での感触は。

僕は今回、役がひとつではなく複数演じるので、その違いをどう表現しようかな、というのは考えています。掛け合いで相手がどう来るのかもまだ分からないので、自分なりに想像を膨らませて、稽古で試せたらと思っています。

◆口がなじまない、というせりふもありますか?

歴史物だと、そういうのは結構ありますね。現代言葉になってしまって、歴史上の人物ならこんな言い回しはしないかな、と自分で録音して確認するとか。これは例えとしての極論ですが、普通のお芝居の場合、何を言っているのか聞き取れないとしても“この人はこういう感情でこんなことを伝えているんだな”というのはある程度分かると思うんです。でも朗読劇は本を手にしているので、ベクトルがちょっと分散してしまう。本にも目がいきますからね。目をそらしたいなっていうときなど、台本へ視線を移すとか、そんなふうに芝居に使うこともあります。

◆今回、2チームに分かれての上演で、ダブルキャストに近い感じもありますが、そういう経験は今までもありますか?

たぶんないんじゃないかな。同じ役を自分以外の人もやるというのは、経験していないと思います。もう1つのチームで同じく豊臣秀吉をやる宮崎湧君とは別作品でも一緒にやっているので、彼のよさもよく知っているんです。彼がやったら、また僕がやるのとは違う秀吉になると思うので、そこは興味がありますね。同じ内容ですが、別の作品みたいな感覚になりそうで、楽しみが増えると思います。

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◆宮崎湧さんはどんな方ですか?

最初は、かわいい顔だな~って(笑)。当時、湧君はよく雑誌にも出ていたので、こんな顔に生まれたら、きっとモテモテなんだろうなぁと。半面、“ちょっと気取っていたらどうしよう!?”と心配もしていたんですが(笑)、そんなことは全然なくて、すごくいい人でした。ただ、それ以上に変わった行動をするので、“面白い人”というイメージに変わりました。先輩と話しているときに、普通は「はい」って返事をするじゃないですか。湧君は「押忍!」って言うんです。「押忍、押忍、押忍!」「ありがとうございます、押忍!」って。彼はYouTubeをやっているんですが、サンリオのハンギョドンが好きで1人でハンギョドン生誕祭をやっていたり、見た目のイメージと全然違う、すごく面白い人なんですよ。言葉でうまく表現できないのですが、実際に会ってほしい人ナンバー1です。「A3!」メンバーだとトシちゃん(立石俊樹)も同じぐらいヘンですけど、役者をやっている人って、みんな、ちょっと頭のネジ飛んでいる人が多いのかな(笑)。

◆個性的な人が多いのは、“役者あるある”ですか?

そういう心持ちじゃないと、やっていけない職業なのかもしれない。人前に出て芝居をするって、普通にやりたいかやりたくないかって考えたら、やりたくない人のほうが多いと思うんですよね。それをやるには、ちょっと変わった人じゃないとできないんじゃないかな。僕は“人の気持ちを変えたい”と思って役者を始めたんですが、冷静に考えると、その動機もちょっとおかしい(笑)。もともと、人前に立ったり、注目されたりっていうのは好きではないんです。でも、舞台に立つと、やっぱり楽しいなってなる。自分が死ぬまでにどういうふうに変化していくのかも知りたいし、やっぱりちょっと変わっているところはあるのかな。

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◆役者をやっていく中で、なかなか役がつかめなかったり、演出家さんからダメ出しをされ続けてしまう、といった壁に当たったときは、どのように向き合っていますか?

ダメ出しを受けたときに、じゃあどうすればその気持ちになれるのかっていうのは、台本を読むしかないわけです。そこで気づいたら“ああ、自分は勉強不足だったな”“もっと台本を読み込まなければいけないな”と反省して、次に生かす。それでも分からないときは、演出家さんと話し合います。気持ちが理解できないまま形だけやったら、うその芝居になってしまいますから。人間の感情って簡単に変わりますし、台本の解釈に正解というのはないと思うんです。自分はそうは思わないってなったら、「一度こういうアクションを挟みますね」と言って演出家さんの言う通りなだけでやらないこともあります。器用な人だったら、すぐにそういう感情に切り替えられると思うんですよ。例えばせりふ上、急にキレるみたいなシーンがあったとしたら、僕はその理由や動機がないとできない。何かを挟みますと言って、「いや、いらない」って言われたときがすごく悩ましいんですよね(笑)。納得がいかないときは、僕は納得していないって顔を前面に出すので、注意されることもあります。“いやでも、急にキレる人もいるか…”など自分なりにいろいろ考えて、パズルのように試行錯誤しながら、答えを導き出すしかないですね。

◆今後やってみたい、興味のある作品や役柄は?

未来の話です。過去はレールがあるので、調べたら出てくることが多いじゃないですか。でも未来は調べられず、想像するしかない。車が空を飛ぶ世界が当たり前だとしたら、“電車はどうなっているんだろう? でもまだあるってことは、この(作品の)世界の人たちは、どういう気持ちで利用しているのかな”とか。

◆興味があるのは、そういう世界で人間はどうなっているのか、ということですか?

そうです。“現在の世界で当たり前のことが、当たり前じゃなくなったときに、人間はどうなるんだろう?”とか。

◆想像力を働かせるのが好き?

いや、本当は何も考えたくないし、何も考えずに生きていけたら幸せなんだろうなって思うんですけど、性格的に“なんで、ここに植物が植えてあるんだろう?”“どうしてこの置物がここにあるんだろう?”と考えてしまうんです。まぁ悪いことではないと思うのですが、“なんで?”“どうして?”と気にならない性格のほうがラクかなとは思います(笑)。

横田龍儀インタビュー

PROFILE

●よこた・りゅうぎ…1994年9月9日生まれ。福島県出身。O型。これまでの主な出演作品は、ミュージカル「刀剣乱舞」シリーズ(物吉貞宗 役)、MANKAI STAGE「A3!」シリーズ(佐久間咲也 役)など。TAAC「The Dumb Waiter」(11月3日(水)~10日(水)東京・すみだパークシアター倉)、舞台「炎炎ノ消防隊」第2弾(22年1月)の上演が控える。MANKAI STAGE「A3!」シリーズの実写映画化作品、「MANKAI MOVIE「A3!」~SPRING & SUMMER~」が12月3日(金)より公開される。

公演情報

「朗読活劇 信長を殺した男2021」

「朗読活劇 信長を殺した男2021」
2021年11月26日(金)~28日(日)東京・神田明神ホール

<STAFF&CAST>
原作:「信長を殺した男~本能寺の変431年目の真実~」(漫画:藤堂裕/原案:明智憲三郎)
脚本:岡本貴也、江頭美智留
演出:岡本貴也
出演:〈桔梗〉平野良、安里勇哉、横田龍儀、菊池修司、相良茉優
〈木瓜〉鈴木裕樹、古谷大和、宮崎湧、大崎捺希、久保田未夢

<STORY>
日本最大の下克上とも言われる“本能寺の変”。その首謀者・明智光秀(平野・鈴木)とその娘の視点を通して、歴史的逆賊とされた男の真実に迫る。なぜ本能寺で主君・織田信長を討ったのか、そしてなぜ娘は父をかばうのか――?

©「朗読活劇 信長を殺した男 2021」製作委員会

●photo/中村 功 text/根岸聖子

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