声優・櫻井孝宏の初エッセイ集「自分と向き合い、振り返ることで、知らなかった自分に出会えた」

特集・インタビュー
2021年10月27日

櫻井孝宏「47歳、まだまだボウヤ」インタビュー

◆そもそも、書き下ろしのために地元に行く案が出た時はどう思われましたか?

“え〜〜…”って感じでした(笑)。“きっと、行っても何もないよ?”って。もちろん、これまでの連載でずっと自分のルーツを書いてきたので、編集さんからの「取材を兼ねて地元を巡りましょう」という提案には説得力があり、納得もしました。でもグズりましたね(笑)。やはり、自分の過去を晒してきたとはいえ、今までは文字だけで留めていたものなので、それを写真も込みでリアルに晒してしまうことにちょっとだけ抵抗があったんです。両親が登場するというのも、なかなか抵抗感がありましたし。まぁ、両親は意外とこういうことに慣れてるからいいんですけど(笑)。それより、一番のゴネた理由は、果たしてイメージどおりのエモい旅になるのだろうかという不安があったからなんです。結局、懸念したとおりの結果になってしまったわけですが(苦笑)、それでも今となってはすごく楽しい旅だったなと思います。

◆この書き下ろしでは登場する人物の名前が全てカタカナ表記になっていますが、これはどういった理由なんでしょう?

残念ながら、そんなに深い意味はないです(笑)。連載のタイトルが『ロール・プレイング眼鏡』なので、ロール・プレイング・ゲームのキャラクターに自分で名前をつける時のようにカタカナにしてみました。それと、少し第三者の目線っぽく俯瞰的に書いてみようという思いもありましたね。またこの書き下ろしでは、私の個人的な部分にかなり踏み込んでいますので、漢字のままで登場人物に立体感が出てしまうよりはカタカナで記号っぽくし、少し薄めた印象を持たせたいなと思ったんです。ゲームで言うところの、3人のパーティーのようなちょっとした遊び心ですね。…と、ダラダラと説明してますが、つまりは上手く書けなかった時の保険みたいなものです(笑)。

◆書き下ろしエッセイは、《振り返りの旅は、振り返ってこなかったことを確認する旅になった》と締めくくっています。

本当にそのとおりでした。自分って、何かを懐かしむような生き方や付き合い方をしてこなかったなぁって。普段でも、実家に帰ったところで地元の友達に会うことが一切なく、ずっと家にいるんです。それに対して寂しいとかひねた感情もなく、それが自分の中では当たり前なんですね。でも、こういうことを書くと、私のことを“寂しい人間”と思う人がいるかもしれない、という懸念はありました。全然そんなことはないんですが。

◆生き方や価値観の違いですよね。

まさに。人によっては、“友達は多いほうがいい”とか、“休日はみんなと遊びに行くのが楽しい”という考えの方っていますよね。それは否定しません。でも、休日に1人でゲームをするのが楽しみで、それを目的に毎日を頑張ってる人もいるんだよ、ということをこの本では書いていて。書き下ろしに関しては、それをあらためて強く実感する旅になりましたね。

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