声優・櫻井孝宏の初エッセイ集「自分と向き合い、振り返ることで、知らなかった自分に出会えた」

特集・インタビュー
2021年10月27日

◆今回の書籍には10年以上前に連載していたエッセイも掲載されています。久々に読み直してみていかがでしたか?

確か、28歳から35歳くらいまで書いていたもので、そんなに長期で連載していたのかと、自分でも驚きました。私はほとんどこの存在を忘れていたので、編集さんがどこからか見つけてきた時は、“何てことをしてくれたんだ”と思いましたけど(笑)。と言うのも、エッセイと呼べるほどのものではなく、いろんな声優さんが自由に好きなことを書いていたミニコラムの中の1つだったんです。なので、「あ〜、この時はネタがなかったんだろうな」っていうのが、自分でもありありと分かって(笑)。ただ、まるっきり記憶にないコラムもあったので逆にそれが新鮮だったりと、いろんな楽しみ方ができましたね。

◆当時のエッセイを読んで、自分の考えなどに変化を感じることはありましたか?

感性や感覚的な部分で年齢の経過は感じましたけど、根っこは変わっていないんだなと思いました。それに、自分の書き方のクセもこのころから変わっていなかったです。私の文章って主語がなかったり、説明不足なことが多いんです。今回の連載で初めて、編集者さんから文章の1つひとつをチェックされ、指摘を受けながら書くという経験をしたのですが、どうしても“ここまで説明しなくても大丈夫でしょ”というクセが直らなく、大事な部分を端折ってしまったりする。もはや、そのクセはどうしようもないので、これからはいかにバレないように書くかという発想に変わってきているほどです(笑)。

◆その技術や対抗心は、何のためのものなんですかね?(笑)

なんでしょうね。全くいらないものなんですけどね(笑)。でも、ちょっと試したくなってしまって。とはいえ、さすが編集さんはプロなので、結局毎回“あ〜、またバレたか”とクセを指摘されながら、書き直してますけどね(笑)。

◆ちなみに、ものすごく個人的な感想ですが、今回のエッセイの中で、上京した時の東京の描写が読んでいてすごく面白かったです。あのころの東京を思い出しました。

うれしいです。当時の東京は本当に楽しい街でしたよね。ものすごくいいタイミングで上京したなって思います。バブルが弾けたころで、少しその名残りがありつつ、でも上京したら行ってみたいと思っていた場所がちょっとずつなくなっていたりして。それでも田舎から出てきた人間にとって東京は、とんでもなく楽しい場所でした。

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