大竹しのぶが挑む社会派作品「差別などの社会問題だけでなく、世の中に巻き起こっている風潮をテーマにした深みと繊細さのある舞台」 パルコ・プロデュース2021「ザ・ドクター」

特集・インタビュー
2021年10月29日

大竹しのぶ「ザ・ドクター」インタビュー

◆主人公のルースもまさに、一体何を咎められているのか分からない状況にどんどんと陥っていきます。

否定や反論をしようとすると揚げ足を取られ、今度は目の前にある問題とは全く別のことで叩かれたりして、どんどん不利になっていく。ルースのように、そうやって人生がダメになってしまった人って、現実世界でもたくさんいるんじゃないのかなと思います。先日、安部公房の「友達」という舞台を観たのですが、それは一人暮らしの男性の家に、突然見知らぬ大人数の家族が押し寄せてきて、「あなたのためだから」と居座られてしまうという物語だったんです。随分前にこの作品を観た時は、ただただ“怖い話だな”と思っていたのが、今の時代だと“ありえる話かもしれない”と思えてしまって。さすがに見知らぬ人が家に転がりこむことはないでしょうけど(笑)、他人から価値観を押し付けられ、説得させられてしまうことって、今の世の中だと決してない話ではないですよね。

◆この舞台を観終わったあとに、自分の中でどのような感情が生まれるのか興味があります。

それが演劇の大きな力であり、魅力だと思います。観劇後に、作品に込められたテーマやメッセージなどを深く考えるきっかけを与えてくれる。もちろん、映画やドラマがそうではないとは言いませんが、劇場まで足を運び、目の前で役者が登場人物の人生を背負い、いろんな思いをぶつけることで、観る側には作品の想いがリアルに伝わってくる。そこは演劇にしか味わえない醍醐味ですよね。

大竹しのぶ「ザ・ドクター」インタビュー

◆では、今回の稽古で楽しみにされていることはありますか?

今作の共演者は明星(真由美)さん、益岡(徹)さん、村川(絵梨)さん以外の方とは、初共演になるんです。ですので、きっと新鮮な稽古場になるだろうなと思っています。また、この作品は会話の流れがとても大事になってくるんですね。私は海外作品の舞台に出演する機会が多いのですが、翻訳劇は日本独特の会話の間を意識するというより、“私はこう思う”と頭の中に浮かんだ言葉をポンポンと投げかけることが多いので、そうしたテンポ感やリズムを共演者の皆さんとしっかり作り上げていけたらいいですね。そのためにも、いろんな意見を忌憚なく言い合える関係性を築いていきたいと思っています。

◆演出は、これまでに何度もお仕事をされている栗山民也さんです。今年上演した「フェードル」でもご一緒されていますが、その時に今回のお話などはされたのでしょうか?

そういえば、「フェードル」の時には今作の出演が決まっていたのに、何も話してないですね。あれだけ長い時間一緒にいたんだから、いろいろ聞いておけば良かったです(笑)。ただ、「フェードル」は本当に大変な作品で。スポーツの試合のように、毎日「よっしゃー、やったるぞ!」と気合いを入れないと挑めないほどだったので、目の前のことに必死で(笑)。きっと栗山さんも同じだったから、「ザ・ドクター」について会話をする余裕がなかったのかもしれません(笑)。

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