◆そうした中で、今回演じた祐樹という役はどんな男性だったと感じていますか?
早くに母を亡くし、年齢的に中学3年生という反抗期の年頃の役で、そこに仲村トオルさん演じる父が新たな恋人を連れてきたことで、親子の関係がさらにギクシャクしていく。祐樹の境遇は誰しもが通る道ではありませんが、親と子がすれ違うことは多くの人に経験があると思いますので、その意味では共感しやすい役でした。また、人は年齢を重ね、大人になるにつれて、自分の感情を隠して表面上の会話ができるようになるけれど、祐樹はまだそれすらできない。だから、父に対して感情をむき出しにしたり、それをぶつけることしかできないのかなと感じましたね。
◆祐樹には心の傷があり、同時に、父をいろんな角度から責め立てていく重要な役割を担っていますよね。
彼自身、中村ゆりさん演じる母を亡くしたという心の障害を抱え、その彼が今度は父と恋人にとっての障害になる。ものすごく大事な役割を任されていると感じたので、とにかく丁寧に演じることを意識しました。ただ今思えば、当時15歳だった僕には、まだそれ以上深くは、自分の役割を理解していなかったようにも思います。
◆と言いますと?
この撮影を終えてから、いろんなドラマや映像作品に携わっていく中で、自分が登場するシーンの意味について客観的に考えることができるようになってきたんです。例えばこの作品では、父と杉野希妃さん演じる恋人が愛を確かめ合ったシーンのあとに祐樹のシーンへと繋がることが多いんですね。それはつまり、父が心のどこかで息子を障害だと感じてしまっていることを想起させる役割があるからで、いっぽうで、ドロドロとした大人の恋愛から一旦離れて、観る人の気持ちを一度落ち着かせるような働きもある。とはいえ、当然ながら、そうしたことは台本のト書きに書かれてはいないので、もっとしっかり作品を読み解く力を身につけなければいけないなと、あらためて強く思いましたね。
◆では、こうして2年前のことを振り返ると、藤原さんにとっての初めての撮影現場はどのような存在になっていますか?
一番大きかったなと感じるのは、役者としての実感が湧いたことです。それに、なんといっても、素晴らしい役者の皆さんと共演させてもらえたこと。すごく刺激的でした。撮影の休憩中などにお話させてもらうこともありましたが、撮影に入ると親子として感情をぶつけ合うことができる。そんな経験を仲村トオルさんとさせてもらえるなんて思ってもいなかったので、“あ〜、本当に僕の役者としての人生が始まったんだな”と感じましたね。