鬼才・万田邦敏監督が「UNloved」「接吻」に続き、万田珠実と3度目のタッグを組んだ映画「愛のまなざしを」が間もなく公開。そこでTV LIFE webでは、公開記念カウントダウン特集と題して、連日出演者のインタビューをご紹介! 第2弾に登場するのは、この映画で主人公の息子役を演じている、今最も注目度の高い若手俳優の1人、藤原大祐さん。すでにさまざまな話題のドラマに出演しているものの、実はこの映画が彼の役者人生の原点だった。果たして、彼が初めての現場で感じたこととは…? 幼少期から大好きだったという映画話や、これからの目標など、彼の“今”に迫ります!
◆今回の出演はオーディションで決まったそうですね。
はい。映画の撮影があったのは2年前の秋で、それが僕にとって生まれて初めてのオーディションでした。お芝居をするのも初めてで。でも、全く緊張しない性格ということもあって、ワクワクしながらオーディション会場に行ったのを覚えています。
◆ということは、初めての撮影現場でもあまり緊張はなく?
撮影初日は、“映画の現場って、どんな感じなんだろう?”というドキドキ感がありました。でも、やはり緊張はなくて、楽しみのほうが大きかったです。それに、いざ現場に入ってみると想像していたものと違うことが多くて、いろんな刺激を受けました。例えば、僕の勝手なイメージだったんですが、役者は出番がくるまでずっと控室で待機していて呼ばれたらいく、と思っていたんです(笑)。でも、万田組は、基本的に現場の近くで皆さんと集まっている時間のほうが多くて。そのおかげでスタッフさんや共演者の皆さんと一体となって1つの作品を作り上げているという気持ちになれましたね。
◆初めてお芝居をするという経験はいがでしたか?
それまでにも演技のレッスンは受けていましたが、やはり現場で役を演じるとなると全然違いました。とはいえ、事前にリハーサルの時間があったりと、いろいろ準備をさせてもらえたんです。そのことで、ただ言われたことを形にするのではなく、監督の意向を聞き、お互いの考えをディスカッションしながら役をイメージしていけたのが良かったですね。
◆監督の演出で印象的だったことはありますか?
すごくリアルさを追求されているなと感じました。特に監督が大事にされていたのが、身体の動き。「人って、会話をしている時も手を動かしたり、何かしらの動作をしているよね」とおっしゃっていて。それを聞いて、“確かに!”と思いました。お芝居って、どうしても相手にせりふをしっかり伝えることに意識がいって、身体の動きが止まってしまうんです。でも、今回の作品ではそれを極力なくそうとされていて、「かなり難しいと思うけど、よろしくね」と言われました。
◆実際はどうでしたか?
かなり難しかったです。でも完成した作品を観た時に、ものすごく動きが自然に見えたので、“なるほど、こういうことか!”と。その時、監督がおっしゃっていたことの意味が、本当に分かった気がしました。
◆そうした中で、今回演じた祐樹という役はどんな男性だったと感じていますか?
早くに母を亡くし、年齢的に中学3年生という反抗期の年頃の役で、そこに仲村トオルさん演じる父が新たな恋人を連れてきたことで、親子の関係がさらにギクシャクしていく。祐樹の境遇は誰しもが通る道ではありませんが、親と子がすれ違うことは多くの人に経験があると思いますので、その意味では共感しやすい役でした。また、人は年齢を重ね、大人になるにつれて、自分の感情を隠して表面上の会話ができるようになるけれど、祐樹はまだそれすらできない。だから、父に対して感情をむき出しにしたり、それをぶつけることしかできないのかなと感じましたね。
◆祐樹には心の傷があり、同時に、父をいろんな角度から責め立てていく重要な役割を担っていますよね。
彼自身、中村ゆりさん演じる母を亡くしたという心の障害を抱え、その彼が今度は父と恋人にとっての障害になる。ものすごく大事な役割を任されていると感じたので、とにかく丁寧に演じることを意識しました。ただ今思えば、当時15歳だった僕には、まだそれ以上深くは、自分の役割を理解していなかったようにも思います。
◆と言いますと?
この撮影を終えてから、いろんなドラマや映像作品に携わっていく中で、自分が登場するシーンの意味について客観的に考えることができるようになってきたんです。例えばこの作品では、父と杉野希妃さん演じる恋人が愛を確かめ合ったシーンのあとに祐樹のシーンへと繋がることが多いんですね。それはつまり、父が心のどこかで息子を障害だと感じてしまっていることを想起させる役割があるからで、いっぽうで、ドロドロとした大人の恋愛から一旦離れて、観る人の気持ちを一度落ち着かせるような働きもある。とはいえ、当然ながら、そうしたことは台本のト書きに書かれてはいないので、もっとしっかり作品を読み解く力を身につけなければいけないなと、あらためて強く思いましたね。
◆では、こうして2年前のことを振り返ると、藤原さんにとっての初めての撮影現場はどのような存在になっていますか?
一番大きかったなと感じるのは、役者としての実感が湧いたことです。それに、なんといっても、素晴らしい役者の皆さんと共演させてもらえたこと。すごく刺激的でした。撮影の休憩中などにお話させてもらうこともありましたが、撮影に入ると親子として感情をぶつけ合うことができる。そんな経験を仲村トオルさんとさせてもらえるなんて思ってもいなかったので、“あ〜、本当に僕の役者としての人生が始まったんだな”と感じましたね。
◆藤原さんはその後、多くのドラマで活躍されています。映画とドラマで現場に違いを感じることはありますか?
ありますね。それこそ、ドラマは出番まで控室などで待機していることのほうが多いので、“やっぱりそういう現場もあるんだ”と思いましたし(笑)。それに、映画は撮影してからお客さんに観ていただくまでにタイムラグがありますが、連続ドラマだと撮影しながら視聴者の声が聞ける。それが楽しかったり。昨年放送された『おじさんはカワイイものがお好き。』が初めてのドラマ出演だったのですが、この作品に出させていただいたことで、僕の中で新たな勢いがついたような感覚があって。というのも、ドラマって映画と違い、テレビをつけっぱなしにしていたら、たまたまドラマが始まって、そこで初めて見る役者に興味を抱くこともある。そうした偶然の出会いがあるドラマの面白さを知り、“こういうお芝居の届け方もあるんだ!”と実感できたんです。その意味では、初めてのドラマの現場は僕にとって、2つ目のターニングポイントだったと言えますね。
◆そもそもの話になりますが、昔から映画やドラマはお好きだったんですか?
幼いころから映画は大好きでした。ただ、自分で演じてみたいという思いを持っていたわけではなく、純粋に好きで観ていたんです。昔は映画館に通って上映中の作品をたくさん観ていましたが、最近は自宅でも観るようになって。特に昔の作品に興味が湧いて、70年代から90年代までの映画を観ては、そこに出ていた役者さんや監督の関連作品を掘りさげてましたね。
◆沼にはまっていく感じですね(笑)。
はい(笑)。作品ごとにどんなことに挑戦しているのかを見るのが楽しくて。逆に、同じ役者や同じ監督の作品を観続けていると、その人の核が見えてくるんですよ。例えば、別の作品で似たようなシーンがあった時、“この監督はずっとこの撮り方にこだわってるんだ”っていう、その人の個性や芯の部分が分かってくる。それがすごく面白いんです。今回も、万田さんの映画に出ると決まってから、万田さんの過去の作品を見返しました。そうしたら、やはり万田さんにしか出せない空気感やカラーがあることに気づいて。でも、それはあえてここでは言わず、僕だけの秘密にしておくので、ぜひ皆さんも探してみてください(笑)。
◆ちなみに、好きな役者はいますか?
僕の中でずっと揺るがない大好きな俳優は、リバー・フェニックスさんです。昔、「スタンド・バイ・ミー」を観たのがきっかけで。ただその時は、漠然と“すごい役者さんだな”という印象があっただけでした。でも、自分が演じる側になってあらためて見返してみたら、目力の強さがすごいことに気づいて。「スタンド・バイ・ミー」に出ていた時の彼の年齢は僕よりもずっと下なはずなのに、少ないせりふで、目だけで訴えかけてくるものがある。そのことに衝撃を受けましたね。
◆では、好きな監督は?
王道ですが、クエンティン・タランティーノ監督やスタンリー・キューブリック監督が大好きです。特にタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」は、僕の生涯で一番の作品です。昔から心のつながりが描かれている作品が大好きでよく観ているんですが、「レザボア・ドッグス」はその象徴とも言える作品だと思っていて。登場人物のギャングたちはお互いの素性を知らないのに、一緒に生活することで仲間たちの芯の部分を分かり合っている。その関係性がすごくすてきだなって思うんです。
◆自分で映画を撮りたいという思いは?
今のところ、それはないです(笑)。自分が出たいというほうが強いですし、仮に監督するのではあれば出演はせず、出演作は別の方に撮ってほしいですね。
◆最後に、今後の役者としての目標を教えてください。
夢は常に大きく持とうと心がけていて、世界を目指したいと思っています。ただ、闇雲に思っているわけではないですし、いつもそのチャンスを狙っているというわけでもなくて。今は一歩一歩をしっかりと踏みしめていこうと思っています。僕の演技を見て少しでも気になってくださる方の思いを大切にしながら、おごることなく頑張っていきたいですね。
PROFILE
藤原大祐
●ふじわら・たいゆ…2003年10月5日生まれ。東京都出身。主な出演作はドラマ『おじさんはカワイイものがお好き。』『恋する母たち』『推しの王子様』など。
作品情報
「愛のまなざしを」
2021年11月12日(金)全国公開
(STAFF&CAST)
監督:万田邦敏
脚本:万田珠実、万田邦敏
出演:仲村トオル、杉野希妃、斎藤工、中村ゆり、藤原大祐、万田祐介、松林うらら、ベンガル、森口瑤子、片桐はいり
配給:イオンエンターテイメント 朝日新聞社 和エンタテインメント
(STORY)
貴志(仲村トオル)は患者の話に耳を傾けてくれると評判の精神科医。6年前に亡くした妻・薫(中村ゆり)に囚われ、薬で精神を安定させる日々を送っていた。ある日、患者としてやってきた綾子(杉野)は、治療関係を越えて、貴志と愛し合うようになる。しかし綾子は、貴志の薫への断ち切れない思いや、薫との子である祐樹(藤原大祐)の存在を知ると、猛烈な嫉妬し、独占欲を抱くようになる。そして前妻の弟・茂(斎藤工)に近づき…。
公式Twitter:@aimana_movie
公式Instagram:@aimana_movie
©︎Love Mooning Film Partners
photo/金井尭子 text/倉田モトキ hair&make/時田ユースケ(ECLAT) styling/勝見宜人(Koa Hole inc.) 衣装協力/suzuki takayuki
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<応募締切>
2021年11月17日(水)23:59