文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を2度受賞している、さそうあきらによる同名漫画を実写映画化した「ミュジコフィリア」。本作で、天性の音楽の才能を持つ主人公・朔に想いを寄せる凪を演じた松本穂香さんに、役作りや歌唱シーンについて聞きました。
◆凪をどのように演じようと思いましたか?
漫画原作を読んだ時、感覚で生きていたりホワホワしているように見えるけど、実は繊細でしっかり芯もあり、おバカに見せるのは違うと思ったので、とにかく「朔ちゃんを好きだから」という気持ちを軸に置きながら役作りしていきました。それから、凪はギターが弾ける役だったので、その練習もしました。撮影直前まで、ひたすら弾き続けました(笑)。
◆漫画原作の凪とは違った、松本さんが演じる凪のポイントは?
実は、衣裳さんやメイクさんからアイデアを頂いて。衣裳さんには、凪らしさというか、ゆるっとしていて個性がある感じを出してもらいました。また、メイクさんからは「髪の毛先をハネらせるのは、どう?」とご提案があって。日によって、毛先のハネ具合が違っていて、凪が元気な時はハネ具合も元気になっているんです(笑)。
◆凪の役作りの1つとして、歌唱がありました。
先生についていただいて、定期的にボイストレーニングをしました。凪が劇中で歌う「小石のうた」を中心に練習していったのですが、凪の心情をより深く理解できる、とてもすてきな曲だなと思いつつも、かなり難しくて…。特にサビの部分がとても高音なので心配だったのですが、レッスンを通じてなんとか出せるようになりました。
◆歌唱シーンでは、谷口正晃監督からどのような演出や要望があったんですか?
谷口監督からは「凪を演じているのは松本さんなので、松本さんが思う歌い方で、自由に歌ってください」と言われました。撮影場所が賀茂川で慣れない緊張感があったのですが、風が吹いていたり鳥が飛んでいたりと、目の前に広がる景色を見ながら、解放感で無事歌いきることができました。
◆朔役・井之脇海さんとの共演はいかがでしたか?
井之脇さんとは、連続テレビ小説『ひよっこ』の時に少しだけ共演させていただいて以来で。その時はキャストが女性ばかりだったこともあり、現場の隅っこで静かにしているイメージでしたが(笑)、今回共演させていただいて、自分の意見をしっかり言われて、こだわるところはこだわる、とても熱い方だなと。京都弁のお芝居は大変だったと思いますが、とにかく感情を大事に、朔を演じられていたと思います。
◆松本さんは大阪出身ですが、京都ロケでの印象的なエピソードはありますか?
賀茂川以外、京都らしい所には行っていないかもしれません(笑)。今回の撮影で大文字山に登ったことで、京都の新しい一面を知ることができたような気がします。それから、現代音楽研究会の部員役の皆さんが和気あいあいとしているのが、私は役柄的に一歩引いた立ち位置だったので、ちょっとうらやましかったですね。
◆完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?
私はほとんど朔ちゃんとしか絡んでいなかったので、完成した作品を観て、すごい熱量を感じました。特に、朔ちゃんとお兄ちゃんがぶつかり合うシーンは、谷口監督やスタッフさんから「とてもいいシーンが撮れた」と聞いていたんですが、感情が溢れているシーンだなって。自分の歌唱シーンに関しては、「みんな、どう思っているんだろう?」って、やっぱり恥ずかしかったです(笑)。
◆本作に出演したことで、松本さん自身がどんなことを学べたのか、見どころを含めて教えてください。
音楽を通して人と人が繋がることもあるのを、あらためて知ったような気がします。そして、初心みたいなものを思い出させてくれました。純粋にすてきな音楽がたくさん溢れている作品なので、観ているだけで楽しい気持ちになれると思います。
◆ちなみに、本作は音楽をテーマにした作品ですが、松本さんは普段どんなアーティストの曲を聴くことが多いですか?
歌詞に共感しやすいこともあるのか、女性の曲を聴くことが多かったのですが、最近はIndigo la Endさんなど、中性的な歌声のアーティストを選んで聴いています。曲調的には元気で明るいよりは、ちょっとしっとりしている曲が多くて、新しいアーティストを探すよりは、好きなアーティストの曲をずっと聴いていますね。
PROFILE
松本穂香
●まつもと・ほのか…1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2017年、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』で注目を浴び、2018年のドラマ『この世界の片隅に』では主人公・すず役に抜擢。以降、「おいしい家族」「わたしは光をにぎっている」「酔うと化け物になる父がつらい」「みをつくし料理帖」と主演映画が相次いで公開。2022年3月24日にNetflix全世界配信予定の映画「桜のような僕の恋人」に出演する。
作品情報
「ミュジコフィリア」
2021年11月19日(金)全国ロードショー
※11月12日(金)京都先行公開
(STAFF&CAST)
原作:さそうあきら「ミュジコフィリア」(双葉社刊)
脚本・プロデューサー:大野裕之
監督:谷口正晃
出演:井之脇海、松本穂香/川添野愛、阿部進之介、
縄田カノン、多井一晃、喜多乃愛、中島ボイル、佐藤都輝子、
石丸幹二、
辰巳琢郎 茂山逸平 大塚まさじ 杉本彩/きたやまおさむ 栗塚旭、
濱田マリ、神野三鈴
山崎育三郎
主題歌:「小石のうた」松本穂香(詞・曲:日食なつこ)
配給:アーク・フィルムズ
(STORY)
音楽へのコンプレックスを持ちながら、京都の芸術大学に入学した漆原朔(井之脇海)は、ひょんなことから現代音楽研究会にひき込まれる。しかし、そこには朔が音楽を遠ざけるきっかけとなった異母兄の貴志野大成(山崎育三郎)がいた。そして、朔と同じように天性の音感を持つ女性、浪花凪(松本穂香)が彼の前に現れ、朔は秘めたその才能を開花させようとしていた。
公式サイト:https://musicophilia-film.com
公式Twitter:@musicophilia_21
公式Instagram:@musicophilia_21
©︎2021 musicophilia film partners ©️さそうあきら/双葉社
photo/関根和弘 text/くれい響 hair&make/尾曲いずみ(STORM) styling/李靖華
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2021年11月25日(木)23:59