◆尚の東京での暮らしぶりも含めて、映画に出てこない部分での尚の裏設定みたいなものはあったんですか?
その部分についても、監督と都度話しましたね。私の中でも、尚が登場しないシーンや台本からも“実はこういう思いを抱えていたんじゃないか”という尚像が自然と浮かんでくるものがありましたし。
◆麻奈美と尚の姉妹関係は、繊細で複雑です。尚は麻奈美のことをどう思っていたと推察しますか?
もちろん嫌いではないし、大切に思う気持ちもあったと思うんですが、ぶつかっても真正面からケンカすることはできない、少し不思議な距離感があったんだと思います。尚としては、大事に思うからこそ遠慮してしまう部分があるんですかね。すごく複雑な姉妹の形ではあるんですが、尚にとって麻奈美は、数少ない“救い”だったんじゃないかと思います。
◆筧さんもお姉さんと弟さんがいらっしゃいますが、ご自身にとって姉弟はどういう存在ですか?
あらためて考えることはあまりないですが、やっぱり自分という人間が形成される中で絶対に不可欠な存在ですし、自分の中に姉や弟の要素は自然と組み込まれていると思います。それと同時に、一緒に生きてきた同志みたいな部分もあって。最近、自分の中に組み込まれている姉や弟の匂いを感じるんですよ。尚と麻奈美は複雑な関係ではありますが、多分シンパシーみたいなものを感じる部分はあったと思います。
◆兄弟や姉妹って、親ともまた違う距離感ですしね。
私の場合、一番の理解者みたいな感じもあります。親には心配かけたくないから言えないことも、姉には全部話せたり。そういう意味でも、私にとって姉と弟は不可欠な存在ですね。
◆同じ妹として、尚とどこかで通じるようなところはありましたか?
私は常々、ほかの姉妹を見ていても“お姉ちゃんって、いろいろなものを背負わされて苦しいだろうな”と思っていて。自分はホントに甘えさせてもらっているなと(笑)。尚も麻奈美にちょっと甘えるようなシーンがありますし、もしかしたら姉妹の関係性としては、うちと少し近いのかもしれないですね。
◆あらためて、この映画の見どころを教えてください。
完成した映画を観た時は、尚が亡くなったあとの周囲の人たちの思いを知ることができて、自然と涙が出てきました。基本的には家族に焦点が当てられた作品だと思いますが、観る人によっては、尚や麻奈美の生き方から何か感じるものがあるのではないかなと。ご覧になった皆さんが、それぞれ何を感じてくださるのか、すごく楽しみです。