◆今回の物語は、“キングスマン”の誕生秘話が描かれますが、本作ならではの魅力といえば?
小澤:時代背景が感じられるところかな。第一次世界大戦が偶然にして始まるところも描いているわけですが、その歴史的背景にもきちんと触れていて。さらに、戦争の描写もあるんですが、俯瞰で撮った街に爆撃が落ち、廃墟になるところを早回しで見せていく。あえて俯瞰して戦争を描いているところに、この映画のすごさを見た気がしました。それから、いわゆる秘密兵器的なガジェットが、“この時代にあったらいいな”というものばかりなところもワクワクしましたね。
梶:アクションが圧倒的なのはもちろん、シリアスな人間ドラマを丁寧に描いているのが本作品の大きな魅力かと。”英国紳士”と”スパイ”という異色の組み合わせが見事にハマっています。前作はハリーとエグジーの『世代を超えた友情』を、今作はオックスフォード公とコンラッドの『親子関係』を。年齢や人間性の違う2人のバディ感とコンビネーションに惹かれますね。そして、今作はいわゆるエピソードゼロ的な立ち位置。この作品で『キングスマン』の作風に惹かれたら、前2作も間違いなく楽しんでいただけると思います。
◆親子関係という点に注目した際の、本作の面白さは?
小澤:人間臭さですね。オックスフォード公は、息子の決意を知りつつも、やはり危険なところに行かせたくないんですよ。でも言葉が足りなくて、それをうまく息子に伝えられない。コンラッドからすると、その心配がちょっとうざいという(笑)。よくある親子関係ではありますが、そこに英国紳士的なプライドと親子間での駆け引きも混ざってくるので、その関係性ややり取りも見どころだと思います。
梶:作中で描かれている世界は、時代も地域も環境も、現代日本を生きる僕らとは異なる点だらけではありますが…それでもきっと多くの方が、この親子の色々な部分に共感するんじゃないかと思いますね。彼らの意見の食い違いや衝突は、極論、互いを思う気持ちから溢れているもの。シリアスな場面も多く描かれている本作ですが、そんな2人の姿を見ていると「いつの世も、親子ってこんな感じなのかもな」と、どこか微笑ましく思えてくるところもあるかもしれません。
◆親子愛だけでなく、師弟愛を描いている作品でもありますが、お2人が“師”と仰いでいる方は?
小澤:山寺宏一さんですね!!
梶:それ、たぶん僕のエピソードです!(笑)
小澤:(笑)。僕は公私共にお世話になっている佐藤浩市さんですね。ご縁があって一緒にいろいろなことを体験させていただけているのは、本当に光栄なことで。それから、緒方拳さん。僕のことを「征悦」と呼んでくださっていたんですが、芸能界で僕のことを「征悦」って呼ぶのは、緒方さんと浩市さんくらいなんです。緒方さんからは書を教えていただいたことが心に残っていますし、緒方さんと浩市さんの流れの中に自分がいられるのは、うれしいですね。
梶:僕は、それこそ山寺宏一さんです。もちろん尊敬する先輩や近い距離感でお世話になっている先輩方もたくさんいらっしゃいますが…山寺さんは、自分が声優を目指し始めた時に初めて意識した方であり、その後もいろいろな作品でお声をお聞きして、気が付いてみると「この役も山寺さんだったんだ!」ということが多くて。幅広いジャンルでご活躍されていますが、自分の中では「アニメといえば」「吹き替えといえば」山寺さんであり、憧れて目指してきた存在です。今では多くの作品で共演させていただいて…とある作品ではライバル役もやらせていただけるようになり、それが夢のようであり、とてもとても幸せです。このコロナ禍でお酒を飲みに行く機会がなかったので…早くご一緒して、いろいろなお話を伺ってみたいです。