中村蒼「新たなステージに踏み込めた」役柄への挑戦、先輩・後輩との共演で感じた思いとは

特集・インタビュー
2021年12月12日

居場所を無くした少女が女性騎手としての夢に挑み続け、未来へ駆け抜けていく姿を描くドラマ『風の向こうへ駆け抜けろ』(NHK総合)。そんな本作のキーパーソンである、厩舎を運営するやる気のない調教師・緑川光司役を務める中村蒼さんにインタビュー。

今回挑戦した乗馬のエピソードや、主演を務める平手友梨奈さん、板垣李光人さんとの共演、さらに俳優としての目標や今後の展望についてお話しいただきました。

中村蒼 インタビュー

◆まず、本作に対してどのような印象をお持ちですか。

すごくストレートな作品だなと思いました。人間の成長物語や共に協力していくことの大切さを伝える作品は多くありますが、今回の作品には特にそれが色濃く出ているんじゃないかなと思います。

◆台本を読み進めていく中で、今回演じられる緑川光司という人物をどのように解釈されたのでしょうか。

“やる気のない調教師”という設定のとおり、序盤の光司はただただ時間が過ぎていくのを待っているような男です。平手さん演じる瑞穂のたとえ挫折をしても何度でも立ち上がる姿に感化されて、光司も、ほかの厩舎メンバーも変わっていきます。

厩舎に集まっている個性豊かなメンバーは、一見問題のある人たちが多いように捉えられるかもしれませんが、実際は光司が一人ひとりの本質を見極めているからこそ集まった顔ぶれなんです。なので、彼の根本にある優しさを意識し、自堕落な生活からの成長を表現していけたらと思って演じました。

◆光司と中村さんに共通点はあるのでしょうか。

あまりないかもしれないです。彼は実力もあって才能に溢れていて、すごく羨ましい部分をたくさん持っている人間だなと思います。周りの人がついてくる理由も彼自身の人柄にあると思うので、僕自身“憧れ”をもって演じさせていただいた感じです。

◆これまで様々な役柄を演じられている中村さんですが、新鮮に感じる点はございましたか。

厩舎を営んでいる光司は自らが厩舎メンバーに指示を出し、「先生」としてみんなが自分のことを慕っている設定なんです。そういった集団を引っ張っていくような役柄はこれまであまり演じたことがなかったので、新鮮に感じています。ムードメーカーのような存在の“中心人物”と他者を先導する“リーダー”では少し意味合いが異なると思っているのですが、光司は後者のリーダー気質がある方だと認識し、とてもやりがいがありました。

◆主人公・芦原瑞穂役の平手友梨奈さんとのご共演はいかがでしたか。

初めてご一緒させていただいたのですが、すごく明るくてフランクな方なんです。年相応のきらきらとした輝きもありながら、彼女の年齢では考えられない程のガッツや仕事に対する覚悟をしっかり持っているので、対峙してお芝居をしていると、時々強い眼差しに引き込まれていきます。

劇中序盤では、光司にとって瑞穂はつい目を背けたくなるような眩しい存在なのですが、そんな瑞穂をエネルギッシュに演じられるので僕自身も自然と彼女に応えていかないと、という気持ちにさせられました。平手さんはすごくクリエイティブな部分があり、時に想像を超えたお芝居をされるので、一緒に演じていて楽しかったです。

◆本作では乗馬のシーンもございますよね。

平手さんはキャストの中でも1番馬とのシーンが多く、馬とも自然にコミュニケーションをとり、当たり前のように接して指示を出されていたのでその姿に衝撃を受けました。僕は少しでも馬が動くとビクビクしてしまいますが、平手さんは最初から臆することなく接されていたので、肝が座っていて、これがスターのゆえんか…と(笑)。

◆中村さんご自身の乗馬や、馬とのコミュニケーションはいかがでしたか。

乗馬の経験自体はあったのですが、今回は乗り方も乗馬とは違ったスタイルだったので、初めてに近い形での挑戦になりました。実は以前、馬に乗ったときに落ちてしまい、すごく怖くなったことがあったのですが、乗馬の先生に「今乗ったほうがいい」と背中を押していただき、乗り越えることができました。

今思えば、一度落ちて恐怖の壁を取り払ったことで不安を解消できたので、逆に良かったのかもしれません。馬の脳は人間で言うと3歳児ぐらいだと聞いたことがあるのですが、「こんなところまで見ているんだ」とか「その言葉どこで覚えたの」という衝撃があったりする年齢なので、結構発達しているんですよね。乗る人の不安は馬にもすぐ伝わるので、まずは自分が馬を信頼をして関係を築いていくことが大切だと今回の撮影で改めて実感しました。

◆板垣李光人さんとのご共演も本作が初ですよね。

はい。本作で板垣君が演じる木崎誠は言葉を発することができないという設定なので、表情や動きだけでお芝居をしているのですが、限られた表現方法の中でもしっかり誠の気持ちを表現されていました。撮影初日からいきなり難しいシーンの撮影があったのですが、迷いもなく堂々と演じていたので圧倒されました。彼も19歳だから平手さんと同い年ですよね。恐ろしい…勘弁してくださいという感じです(笑)。

◆これまでも、共演者の方に圧倒されたことはございますか。

今年の夏に舞台でご一緒させていただいていた佐々木蔵之介さんは、本当にすごい方でした。言わずもがな、お芝居が素晴らしいですし、まさにリーダーのような存在で、ご自身も難しいお芝居に向き合いながら「あのシーンはこうしたらもっと良くなるかも」と僕たちにも提案してくださったんです。

周囲にも気を配りながら、余裕を持って作品を引っ張っていく姿を目の当たりにして、圧倒されましたね。“続けること”が1番難しいことだとは思いますが、僕も蔵之介さんの年齢になったときにお芝居をやれていたらいいなと思います。

◆中村さんにとって、これまでに出演された作品の中で、本作はどのような存在だと感じられていますか。

リーダー的存在としてみんなを引っ張っていって、「先生」と慕われるような役柄を、自分もやる年齢になったんだなと。これまでは若さゆえに無知であったり、周りに振り回されるような役柄が多かったのですが、今年30歳になってこういった役柄のお話をいただけるようになったんだなと思うと、また1つ違った、新たなステージに踏み込めた作品かなと思います。

◆俳優を続けられる上で、中村さん自身を奮い立たせる存在は何なのでしょうか。

やっぱり周りの人や家族の存在ですかね。その人たちが喜んでくれたらいいなと。「もっと頑張らなくては」というエネルギーにもつながっています。◆本作の撮影中、現場で楽しみにされていたことはございますか。

ご飯はやっぱり大事ですね。本作の撮影で岩手県に行ったのですが、毎食地元の方がご飯を作ってくださったんです。その地域の郷土料理なども準備していただいて、暖かいものをいただけたこともすごくうれしかったです。

◆プライベートはどのように過ごされているのでしょうか。

歩くことが好きなので、時間が許すときは歩いています。仕事の日も、「今日は都内だ」とわかったら目的地を調べて、可能な時は歩いて向かうこともあります。ラジオを聴きながら歩くのも好きですし、通りがかりのお店を調べていろいろと想像するのも楽しいです。

◆それでは最後に、来年、そして今後の抱負を教えてください。

目の前にあるものに対してしっかり向き合って、こつこつと頑張っていきたいです。本作を経て、これまでとはまた違ったフィールドに到達したように感じていますが、これから年齢を重ねるごとにますます淘汰されていく中で、その人なりのオリジナリティが求められるようになっていくと思うので、食らいついていきたいです。

PROFILE

中村蒼
●なかむら・あおい…1991年3月4日生まれ。福岡県出身。A型。
2006年に主演舞台『田園に死す』で俳優デビュー。2022年5月6日(金)より、主演舞台『ロビー・ヒーロー』が新国立劇場にて開幕する。

番組情報

土曜ドラマ『風の向こうへ駆け抜けろ』(前・後編)
NHK総合
2021年12月18日(土)・25日(土)後9・00~10・13

●photo/小澤正朗 text/安井美彩希

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2021年12月19日(日)23:59

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