殺人事件の重要参考人となった女性実業家・真田梨央(吉高由里子)と、彼女を追う刑事で梨央の最愛の人でもある宮崎大輝(松下洸平)、そして梨央を支える弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に描かれるサスペンスラブストーリー『最愛』(TBS系 毎週(金)後10・00~)。いよいよ全ての真実が明らかになる最終話(12月17日放送)を前に、主演を務める吉高由里子さんのインタビューをお届け。ここまで梨央を演じてきての感想や、印象的だったシーンの裏話、そして最終回の見どころを熱く語ってくれました。
◆いよいよ最終回を迎えます。現在のお気持ちを教えてください。
すごく密度の高い作品なので、終わってしまう寂しさはありますが、その寂しいっていう気持ちの大きさが大きければ大きいほど、自分の中に梨央という役が入っているというか。作品にのめり込むことができているうれしさもあります。
◆これまでの撮影を振り返って思い出すことは何でしょう?
白川郷での撮影が3か月前とは思えないぐらい、みんなと過ごした時間が濃かったなって。みんな、すごく愛情を込めて作っている作品なんだなと思いましたし、育む時間が長かったので、何年も作品に携わっているように感じましたね。吉高由里子がやっているというわけじゃなくて、梨央という人間がそこにいたんじゃないかなって。
◆井浦新さん、松下洸平さん、高橋文哉さんと共演されるシーンが多いと思いますが、最初の印象と変わったことや撮影時のエピソードはありますか?
(井浦)新さんの加瀬という役の愛情というか、懐の大きさが回を重ねるごとにどんどん大きくなっていって、すごく包まれている感覚というか、安心感がありました。新さんとは共演経験があるので、そういった面での安心感はあったんですが、それに加えて、加瀬というキャラクターの包み込むような愛情を感じたんです。だからこそ、梨央は加瀬の愛情に甘えている部分があったし、一緒に苦しんだり、葛藤したんだと思います。
◆松下さんはいかがでしょうか?
大輝は、あんな無骨な男性からかわいさだったり、少しの寂しさに加えて、刑事として梨央に関わらなきゃいけないという葛藤もあるキャラクターで。仕事での立場が悪くなっても梨央との愛を育もうとしたりと、梨央と大輝は素朴さが残る、小さな幸せを見つけるのが上手な2人。そんな大輝を演じた松下さんは、ホッとするような優しい声を持っている方で。梨央はそんな大輝にちょっと寄りかかって、甘えていた部分や支えになってた部分もあるのかなと思います。
◆では、弟役の高橋さんは?
文哉君は「本当に20歳なの?」っていうくらい落ち着いている部分があれば、ピュアで真っすぐなところもあって、母性本能をくすぐられるような感じがしましたね(笑)。本当はもっとしっかりしている部分もあるのかもしれないけど、私が今まで経験したことのない、“弟がいるお姉ちゃん”っていう気持ちにさせてくれたのは、文哉君の甘え上手、人懐っこさの力だなって思います。
◆ミステリーの中にもラブストーリーがある本作ですが、吉高さんが演じていて思わず“キュン”だったり、感情が動いたシーンは?
私は1話の最後と2話の最後は、ヒリヒリしましたね。真田ウェルネスを訪ねてきた大ちゃん(大輝)に、梨央が「初めまして」と言うところは、「よく、そんな顔で大ちゃんに初めまして言えるな」と。2話でも、大ちゃんに「できれば友達として話したい」と言われて、梨央が「どこから話す?」って挑発的に言うところは、演じながらも感じ悪いなって思いました(苦笑)。いっぽうで、5話は苦しかったですね。大ちゃんが桑田さん(佐久間由衣)に頭を下げて、梨央と優がお父さん(光石研演じる達雄)の残した映像を見る時間をくれたところは、すごく3人の関係性が表れていて、 “最愛”の違う形だったというか。そのお父さんの映像も、苦しく感じました。
◆“キュン”はどうでしょう?
6話の梨央が大ちゃんに隠れて歩道橋から電話するけど見つかって追いかけっこするシーンは、みんな好きなんじゃないかな(笑)。
◆演じていて、どういう表現が難しかったですか?
喜怒哀楽が表に出たほうが、見ている人には伝わるんですよね。単に悲しんでいる顔をしてても伝わらないというか。出しやすい顔って難しいなって感じましたね。おいしいもの食べている時は、一番素直な顔だと思います。優が作ったオムライスを食べるシーンはもっと味わって食べたかったですし、梨央の行きつけの「峰」で出してもらうもんじゃ、実はいつも食べられなかったんですよ。なので、「今度、もんじゃを食べに行こう」ってマネージャーさんと話してました(笑)。
◆中でも、特に大変だったのは?
大人数がいて自分だけしゃべるというのは、どちらかと言うと苦手って思いましたね。「あんまり、こっち見ないでくれ」って(苦笑)。あとは、どのドラマも1話に多くの時間をかけたりするんですけど、最終話は短期間で撮ろうとしてて。それは難しいというか、ハードなスケジュールだなって(笑)。
◆これまでインタビューした方たちから「吉高さんが現場を明るくしてくれている」というエピソードが必ずと言っていいほど出てきていたのですが、現場で意識されていたことはありますか?
私的には盛り上げようというか、常に“自分が一番楽しんでやるぞ”という気持ちで臨んでいます。作品を楽しんだ分だけ自分の中に深く刻まれるし、いっぱい取り入れたいと思う作品でもありました。それに今回、キャストの方たちがみんな良い人で。それは、スタッフさんたちも口をそろえて言ってますね。
◆素で楽しんでいたからこそ、皆さんからそのようなエピソードが出たんですね。
そうだと思います。私自身、悲しいシーンで悲しさに浸るというやり方をしてこなかったからかもしれないですね。カットがかかったら切り替えようと自分でも思っていますし。スタッフさん同士も仲が良くて、現場の和気あいあいとした感じが全体的に居心地の良い環境を作ってくれたんだと思います。
◆新井プロデューサーや及川光博さんが、吉高さんの本番とカットの切り替えがすごいとおっしゃっていました。
ミッチー(及川)こそ、切り替えがすごいんですよ。後藤さんとしてスンってしていたり、怪我をしているのにカットがかかると、急にスイッチが入ってキレキレなポーズをしたり。私から言わせてもらえば「ミッチー、あなたもですよ」って(笑)。確かに、私は瞬発力タイプだと思うんです。 “よーい、スタート”の勢いで役に入るので、カットがかかったらそのスイッチを外せるっていうのが、できるようになっていて。無意識なうちに、自分の中に落とし込んだルールなのかもしれないですね。
◆本編には苦しくなるようなところもありますが、気持ちの面で辛くなることは?
フィクションという部分に救われています。これが実際にあったお話だったら、もっと苦しくなっていると思います。ただ、『最愛』は愛のカタチのお話で、台本もすごく愛情を持って作られているので、悲しいシーンはその愛情を感じたからこそ悲しくなると思うんです。なので、「この部分はどうやったら響くかな」と、その悲しみをどう広げようかと考えたり。すごく勉強になりましたね。
◆SNSでは、『最愛』に対する考察が大いに盛り上がっております。吉高さんはそうした反応はチェックされていますか?
自分で調べようとしなくても、普段連絡がこない人や“そんなドラマ見る人だったっけ?”というような友人から「すごく面白い」「先が気になる」とか「来週で終わらないでよ」と連絡が来て。反響が如実に分かりますね。それに、ネットニュースなどを見たら、放送後の土曜日、日曜日は特に『最愛』に関する記事がぶわーっと出ていて。エゴサーチはしていないんですけど、その記事についているコメントは見ることがあります。
◆『最愛』が多くの人を魅了する要因はずばりどこにあると思いますか?
誰しも心に抱えている何かっていうのが、登場人物に当てはまるんじゃないかなと思うんです。誰しも、開けたくない、自分の中で蓋をしておきたい過去ってあると思うんです。それを、それぞれが持っている信念で閉じ込めていると思うんですけど、そういう生々しさとか、痛々しくもあるようなリアルな部分が共感を得ているのかなと。それに、ちゃんと次の展開が気になるように作られていて、「この~!」ってなります(笑)。あとは、主題歌の力もすごいですよね。このドラマ自体を、そして見ている人を巻き込んでくれるような求心力のある曲で。毎回、誰と夢中になるんだろうっていうタイミングを探すんですが、オンエアで「君に夢中」が流れだすと「ここか!」ってなります。
◆確かに、共感する部分がたくさんあります。
主張が強すぎないというのも、あるのかもしれないですね。また、何かをしながら、誰かと一緒に見るのもいいんですけど、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんじゃないかなと。
◆本作への出演は、ご自身にとってどんな経験になりましたか?
ファンの方が多い新井順子さん・塚原あゆ子さんペアということで、その2人の世界観を壊さないように、怯えながら、それによって自分のハードルもすごく上がるというか、プレッシャーの中で始まった作品で。でも実際にやってみたら、みんながこの2人とやりたくなる理由が分かりました。画の話じゃなくて、心の話で全部演出やお話を作ってくださる現場なんです。そういった意味でも、『最愛』っていうドラマのタイトルが本当にピッタリな作品で、一つひとつただの言葉じゃなくて、ちゃんと心に響くような言葉で説明してくれたのがすごく印象的でしたね。本当にいい経験をさせてもらっているなと、感謝しています。
◆その経験から、女優として成長できたことや新たな気づきなどがあったら教えてください。
各々の愛が同時に動いているお話で、同じシーンにいてもみんな愛の方向が違ったりするので、“このせりふを言ったとしても、この言葉の裏にこういう感情があるんじゃないか”とか、“悲しいから悲しい顔じゃなくて、悲しいから笑ったほうが悲しくなるよね”とか、技術的な話じゃなくて、心の感情を動かすようなお話をすることが多かったです。それから、最初は「ヘラヘラ封印だよ」「笑顔禁止だからね」と言われていたので、もっとバキバキでキレッキレな女社長なのかなって思っていたら、ちゃんと人間っぽい感情がある社長役で。その役を演じられたことで、学ぶことがたくさんありましたね。実は、自分の表情を見るのが怖くて、現場でモニターチェックをしなかったんですよ。だから、オンエアを見て“こんな顔してたんだ”って驚くことが何度かあったり(笑)。
◆最後に、最終話を楽しみにされている方たちにメッセージをお願いします。
最終話は、梨央を守ろうとするみんなの愛が詰まっています。ぜひ心して見てください。
PROFILE
吉高由里子
●よしたか・ゆりこ…1988年7月22日生まれ。東京都出身。O型。最近の出演作には、『わたし、定時で帰ります。』『知らなくていいコト』『危険なビーナス』、映画「きみの瞳が問いかけている」など。
番組情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系
2021年12月17日(金)後10・00~10・54
©TBS