ゴスペラーズインタビュー「素晴らしいコンテンツパワーが生まれた」『日本エコー遺産紀行』

特集・インタビュー
2021年12月17日
左から)北山陽一、酒井雄二、村上てつや、黒沢薫、安岡優

12月19日(日)放送の『日本エコー遺産紀行 ゴスペラーズの響歌』(BS8K)に出演する、ゴスペラーズのみなさんにインタビュー。

トンネルや銭湯など、独特な響きのするところを探してゴスペラーズがハンドマイクなしのアカペラで歌い、響きを堪能。“エコー遺産”を認定していく『日本エコー遺産紀行 ゴスペラーズの響歌』。好評だった去年放送の第1弾に続く第2弾として、12月19日(日)に新作が放送される。

今回の舞台は、横浜。響きのスポット・エコー遺産の候補となるのは、横浜三塔の1つであるクイーンの塔(横浜税関)やみなとみらいへと注ぐ大岡川にかかる橋の下、そして日産スタジアム下にある巨大空間の3か所だ。

横浜をテーマにしたユーミンの「海を見ていた午後」のほか、「ロビンソン」、「あの鐘を鳴らすのはあなた」、「We Are The Champions」、「星屑の街」などをゴスペラーズが熱唱。8K放送が誇る22.2CH立体音響によって響きを再現していく。

そこで、完成した番組の試写会に参加した直後のゴスペラーズのみなさんに、番組を観た感想や今回の収録で感じたこと、番組で今後実現していきたいことについてお話しいただきました。

左から)酒井雄二、村上てつや、黒沢薫、安岡優、北山陽一

◆完成した番組を鑑賞してみていかがですか。

村上てつや:番組の鑑賞を通して、響きのちょっとした変化というのは常に身の周りにあるものなんだなということを改めて意識していただけるんじゃないかなと思いました。僕らも番組を通して追体験をしていくなかで、あの場にはいたんだけど違うものとして味わうことができたので、そういったことも想像しながら見てもらえたらうれしいです。

北山陽一:「自分たちの歌を客席で聞いてみたい」とよく言うのですが、なかなかできないんですよね。でも、こういった臨場感のある形で収録してもらうことで、かなりそれに近い体験ができたんじゃないかなと感じました。特に、カメラが切り替わると響きにも変化が感じられるので、収録時に自分たちが感じていたものとすごく似ている音もあれば、全然違う音もあったりして。自分たちも知らなかった部分があったので、情報が得られたところも楽しかったです。

安岡優:自分が聞いていた音だけが思い出にあるので「あのマイクでこの音を聞いたらどんな音になるんだろう」と思っていた音を聞かせていただくことをすごく楽しみにしていました。当然、歌っているときは隣にいるメンバーの声が大きく、1番遠くにいるメンバーの音は小さく聞こえるんですよね。なのでそれぞれの頭の中にある思い出の音は全員違って、それをマイクという1つの客席のポイントから新たに聞くとなると、発見があるんです。やっぱりハーモニーって音が溶け合い、1つになって届いているんだなということを、改めて感じました。

北山:思い出よりもうまくなかった?

安岡:そうそう。自分の歌ばかり聞こえるから、ついあら探しばっかりしてしまうんですよ、小心者だから(笑)。でもこうやって聞いてみると他のメンバーの音と関係しあって和音になるから、意外と良い音だったんだなっていう(笑)。

黒沢薫:実は今回の収録で橋の下で歌う時、小雨が降っていたんです。「今日できないかもね」なんて言いながら待機している時間もあって。でもいろんなスタッフの方が動いてくださって、何とか撮影を終えられました。もちろん実際の響きもとても面白かったですし、スタッフのみなさんの「響きを収録するんだ」という気迫を感じられたこともすごくうれしかったですね。番組のチームと歌う我々の関係性もハーモニーなんだなと強く感じました。

酒井雄二:僕はすっかり、お世話になった音響の専門家の先生のファンになってしまいました。登場すると「来たっ!」っていう(笑)。視聴者の皆さんも僕らが今、(このインタビューで)ふんわりと言葉にしていることが分かった瞬間はすごく面白いと思います。そして、他の追随を容易に許さない番組になってきたなと(笑)。素晴らしいコンテンツパワーが生まれた気がしています。

◆今回の放送は前回とどんなところが違うと感じていますか。

村上:楽曲を“どう聞かせるか”ということに関して、前回の放送を踏まえてスタッフの皆さんと話し合ってきたんですけど、それがすごく良かったなと感じています。今回はちょっとだけ“映える”要素も加えたので、さらに楽しめるものになったんじゃないかな。

北山:そういえば、前回「1回で終わらせたくない」と、悲痛な叫びを上げたことを覚えています(笑)。今回は横浜という限定しているようで広大なエリアが舞台になっていますが、そういうテーマをもって響きを、となってくると、また急に今後の展開が見えてきたなと(笑)。

安岡:僕は前回のいろんな空間の響きを味わうという内容に加えて、今回はそこにより動きが出た気がしています。空間の範囲が町全体になったので、日常にある響きの変化を収録できたところが面白かったですね。もっといろんな街に行ってみたいですし、僕たちの思い出を「あの場所ってこんな響きだったよね」と視聴者の皆さんと共有できる番組になったと思います。

黒沢:僕は横浜に久々に行けたことが単純にうれしくて、収録の後もプライベートで横浜へ行ってあのゴンドラに乗っちゃいました(笑)。

安岡:ついに(笑)。みんなで話していたんだよね、誰も乗っていないって。

黒沢:乗りながら「あそこでハモってたんだな」とか考えたり(笑)。そして、この番組は割と響きだけを信じて作ってくださっているところがあるので、1回目の時はかなりハードルが高かったと思うんですよ。でも、今回はかなりリラックスして、信じて歌うことができました。

酒井:僕は、前回の放送の時、普段はほとんど連絡をとっていない兄から「あれはどういう番組なんだ」と連絡をもらいました(笑)。そういった、今まで興味関心を持っていなかった層の方にもリーチする可能性が高いんじゃないかなと感じました。

◆今後、番組で行きたい場所ややってみたいことはありますか。

安岡:やっぱりそれぞれの故郷に行きたいんじゃない?

北山:故郷もありだよね。あと、歌ってみたいと思うのは自然かな。

黒沢:森も響くっていうからね。

北山:「普通そんなところで歌わないだろう」と思うようなところでハモってみたいですね。この番組をやらせていただくなかで、見えているものと響きの相性が合うと気持ちが良いということに気づいてしまったので、大自然の中でもエコー遺産を探しに行きたいです。

村上:屋久島だな。

酒井:最高じゃん! 実は僕も思っていたのよ。

黒沢:あとは、僕は八王子出身なものですから高尾山も行ってみたいです。ケーブルカーの中なんかも響くんじゃないかなと思っているんです。ケーブルカーの響きに山頂の響き、あとはちょっとした自然園のような動物がいる場所もあるので、今度は動物に向かって聞かせるっていうのはどうですか!

一同:(笑)

北山:確かに、今回は普段生活の中で聴いている音との間にもストーリーがあるなって感じて、それはそれで響きとして楽しいとわかったんですよね。

安岡:周りの音も雑音ではなくて、一緒にハモっている感じがするんだよね。あとは、個人的に今までの活動の中で印象的だった響きは京都の東寺かな。音響システムがない時代にたくさんの人にお経を聞かせるために作られた構造物だから、小さな音がまるでスピーカーから音が出ているかのような大きな音に聞こえるんです。自分が歌っているはずなのに歌っていないみたいに錯覚するほどで。

北山:そうそう。宗教ごとの構造物を比べてみるのもいいよね。

安岡:かつての人類はどのようにして響きを構築してきたのか、そんなのも気になります。

酒井:でも北山は原点がトンネルなんだから、もう少しトンネル道を…。

安岡:青函トンネルも行く?

北山:人工のトンネルもいいけど、ケービングもしてみたいな。1キロぐらい続いている洞窟とかあるじゃない。でもわかんないよ、黒ぽんとかが歌うと上から何か落ちてくるかもしれないよ(笑)。

安岡:つららとかね(笑)。あとは、いつかゼロを探す旅にも出てみたい。タイトルに「ゴスペラーズの」とついて複数やらせていただく番組っておそらく初めてだと思うので、初の冠番組と呼んでも良いのではないでしょうか。そんな番組をNHKさんにいただいている僕らは響きを探す素材として、これからもいろんな街に行って歌い続けていけたらいいなと思っています。

北山:(エコー遺産に)認定しないという選択肢もないわけではないですからね(笑)。

酒井:1人難色を示すとかね。

安岡:四つ星とかね。これからも頑張ります。

番組情報

『日本エコー遺産紀行 ゴスペラーズの響歌 ~横浜の響き~』
BS8K
2021年12月19日(日)後5・00~6・00

※先行放送(2Kステレオ放送)
BSプレミアム
2021年12月18日(土)後11・30~深0・30

©NHK

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