オダギリジョーインタビュー「役者冥利に尽きる光栄なこと」『カムカムエヴリバディ』

特集・インタビュー
2022年01月11日

現在放送中の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合ほか)で、大月錠一郎役を演じるオダギリジョーさん。

錠一郎は、ヒロイン・るい(深津絵里)が働くクリーニング店に客として訪れる謎の男。名前も住所も分からないうえにすぐに消え、いつもシャツには同じ汚れをつけており、背広から下着まで大量の洗濯物を置いていく。そんなつかみどころのない言動や行動がるいを戸惑わせるが、やがてこの出会いがるいの運命を動かしていく。

本作へのオファーを「お引き受けするかどうかすごく悩みました」と明かすオダギリさん。“朝ドラ”への思いや錠一郎を演じるうえで考えていること、そして共演していく中で感じた深津さんの印象についてお話しいただきました。

オダギリジョー インタビュー

◆出演が決まったときの気持ちを教えてください。

正直なことを言うと、“朝ドラ”はあまり見たことがなかったんですよ。自分との距離が遠いものだったので、お引き受けするかどうかすごく悩みました。やっぱり“朝ドラ”って朝の顔でもあり、NHKを代表する作品の1つですもんね。
そこに自分が参加していいんだろうかという気がしていました。僕は夜中の作品のほうがしっくり来るタイプだし(笑)、今までもインディーズや小さな作品に重きを置いて活動してきたので、“朝ドラ”は自分らしくないかなとだいぶ悩みました。
ただ、脚本家の藤本さんが自分をイメージして書いてくれた役だと聞くと、役者冥利に尽きる光栄なことだとうれしかったし、求めてくれた以上のものをお返ししたいという気持ちに傾いていきました。

◆錠一郎役を演じるうえでどんなことを意識しているのでしょう。

僕は俳優として少しひねくれたタイプだと自覚していますが、あまり分かりやすい表現をしたくないタイプなんです(苦笑)。なのでNHKだから、“朝ドラ”だからと言って、丁寧で分かりやすい芝居をするのではなく、いつも通りの表現を心がけました。
例えば、自分が演じるジョーは最初20代なんです。40代の自分が説明的に20代を演じようとするよりも、何歳であろうと人間が持つ感情や感覚的な部分を表現することを重視していました。
あとはトランペットですね。ジョーにとって何よりも大切なトランペットが嘘にならないように、とにかく練習を続けました。1日に6時間を超える日もありましたが、そうした時間の積み重ねが体に染み込み、芝居に影響していくものなので、妥協のない形でトランペットに向き合いました。準備さえできていれば、あとは現場で『なるようになるだろう』という感覚で挑みました。

◆2代目ヒロイン・るい役の深津さんにはどのような印象を持っていますか。

深津さんは、すごく丁寧な方だと思います。作品に誠意を持っていて、真摯に芝居に向き合っている姿が印象的です。台本に関して疑問があれば、深津さんと僕、演出担当やプロデューサーみんなで話し合う時間を持ちながら進めていますし、ひとつひとつ、適当には進めずに、慎重にものづくりをされる印象です。
今までの仕事の選び方も、そういうことなんでしょうね。自分が納得できないものは引き受けないで、ちゃんと本気で向き合える作品だけを選んでいる。それは同業者として、心から信頼できるポイントですね。
現場での深津さんはとにかく集中されていて、気軽に話しかけることはできない雰囲気があります。それは他者を威圧するものではなく、心地良い緊張感ですね。同時に、共演者もスタッフも深津さんに対して100%の安心感を持っていますし、深津さんを中心に『カムカムエヴリバディ』が転がっているのを強く感じます。
スタッフもみんな愛情深く、温かい良いチームなんです。大阪の情がにじみ出ている愛すべきチームです。これだけ仲良く、家族のような関係がつくれているというのは、“朝ドラ”のチームだからなのかなっていう気はしていますね。

◆視聴者の方々に向けてメッセージをお願いします。

深津さんと僕が演じる、るいとジョーはひなたの人生にも関わっていく大切な役なので、丁寧に感情を紡ぐように心がけています。安子編もすばらしかったですが、るい編は大阪らしい明るさと、藤本さんの描く人生の機微を細やかに表現できれば良いなと思っています。
るいとジョーの物語が後々ひなたに受け継がれ、ひなた編になった時に、また改めてるいとジョーの若かりし日々や大阪での物語が愛おしく感じてもらえたらいいなと思いますし、ひなたを見ているだけで、若き日のるいとジョーを思い出せるような、そういう強い感情を残せる2人が作れたらいいなと思います。

番組情報

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
NHK総合ほか
毎週月~土曜日 前8・00~8・15ほか

©NHK

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