◆今作を撮られた大九明子監督とは初めてになりますが、一緒にお仕事をされてみていかがでしたか?
大九さんの映画は何本も拝見していたので、撮影前からすごく楽しみでした。撮影で印象的だったのは、女性の細かい心情を繊細に撮ってくださること。例えば、日常でうれしいことがあっても、ふと嫌な記憶を思い出させるものを目にして、一瞬で気持ちが沈んでいくことってあると思うんですが、そうした感情の流れを長回しで撮ってくださるんです。喜ぶシーンでも、まずは役者がやりたいように演じさせてくれて、長回しで撮ることで、なぜその人物が喜んでいるのかを私たちに考えさせてくれる。だから、どんどん役が染み付いてくるんです。
◆物語はテンポよく進んでいくのに時間の流れはとても穏やかで、見ていて心地良かったです。
そうなんです。それに、アップと引きの画を効果的に差し込んでいるので、飽きることがないんですよね。
◆大九作品に出演された役者さんが「もう一度出たい」とよく言っている理由が分かった気がします。
私も分かります! 役はもちろん、役者もすごく立たせてくださる監督なので、機会があればまたお仕事したいです。
◆ドラマでは毎回いろんな失恋話が描かれていますが、共感したエピソードはありますか?
どの失恋話も、結構特殊なんです(笑)。でも、カニクリームコロッケのお話(第5話)は大好きです。失恋した娘(大友花恋)を元気づけるお父さん(佐藤貢三)という親子の物語なので、ほかとは少し違った描かれ方をしているんですが、“父親って、娘に対してこんな気持ちなんだ”というのが伝わってきました。私自身、大人になるにつれて、全く仲が悪くなったわけでもないのに、父親と会話をする時間が少しずつ減っていき、だんだん見えない壁を感じるようになったことがあって。世のお父さんと娘さんも歳を重ねると、こうやって言いづらいこと、聞きにくいことが増えていくのかなって思ったりもしました。
◆ミキは第5話で、親子の会話に聞き耳を立てながらいろんな妄想をしますが、広瀬さんも思わず周りの人が話している内容が聞いてしまうことって、ありますか?
あります!(笑) そのつもりがなくても聞こえてくることもありますし、そうなるとどんどん気になっちゃって(笑)。勝手にその人たちの関係性を想像したり、ちょっとクセのある方だと、つい見てしまったり。そうした人間観察をするのも大好きなんです。
◆それがお芝居に反映されることもある?
具体的に何かを真似たりということはないんですが、お芝居の引き出しにはなっていますね。雰囲気で覚えているので、元気な女性役が続いた時などに、演じ分けとして頭の中の記憶から引き出すことはあります。