現在放送中の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合ほか)で、桃山剣之介役を演じる尾上菊之助さん。
桃山は日本映画界を率いる銀幕の大スター。時代劇映画の「棗黍之丞見参」が大ヒットし、シリーズ化される。清新な演技と甘いルックスを兼ね備え人気を不動のものとし、デビュー作の「桃から生まれた剣之介」からとった“モモケン”の愛称で親しまれる。
モモケンを演じるにあたり「大川橋蔵さんのことを思い浮かべて役作りをしました」と明かす尾上さん。役柄への印象や、2代目ヒロイン・るい(深津)と3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)とのシーンについてお話しいただきました。
尾上菊之助 インタビュー
◆出演が決まった時の気持ちを教えてください。
“朝ドラ”は必ずと言っていいほど見ていました。毎朝、心温まるストーリーに感動をいただいているので、このお話が決まったときは驚きました。私にとって銀幕のスターといえば大川橋蔵さんです。私が小さい頃に、よく大川橋蔵さんが家に来られていて、お年玉をいただいたりした記憶がほんの少し残っています。だから、今回は橋蔵さんのことを思い浮かべて役作りをしました。演じる前には橋蔵さんのお墓参りに行き、ご報告もさせていただきました。
◆モモケンに対して、どんな印象を持っていますか?
この物語は親子3代のヒロインが描かれていますが、私が演じる銀幕のスター「桃山剣之介」は親子2代で登場します。親と子の2役を演じるということで、その差を出すにはどうしたらいいのか相談させていただきました。おそらく父親はスター然とした方だったのだろうと推察します。一般の方は近寄り難いというか、お手洗いに行くところや食べるところなどを見せず…「ひょっとしてトイレに行かないんじゃないか」と思わせるような。
そして、2代目になると「テレビの申し子」と言われています。映画からテレビの時代になって、ひなたやるいたちにも、親しみやすいスターとして存在したんじゃないかと思います。ひなたの弟の出産時にも居合わせて関わりますが、そういう優しさがひなたたちがモモケンを好きになってくれた要因のひとつかなと思います。そしてやはりスターですから、丁寧だけれども凛としていて、そのなかにも毅然としたものがあったり、オーラみたいなものがあったり、そういう所作や姿勢、セリフからスターの雰囲気がにじみ出ているといいなと思いながら演じております。
◆ヒロインのるい(深津絵里)とひなた(川栄李奈)とのシーン、そして深津さん、川栄さんとの共演はいかがでしたか?
るいやひなたと関わることによって、モモケンはすごく変化していきます。2人とご一緒するシーンは多くありませんが、とても意味のある、そして重みのあるシーンだと感じています。深津さんは凛とされています。24時間るいさんでいらっしゃるような感じがします。そんな印象を受けました。すべてを背負って生きていらっしゃるんだな、というものを感じました。川栄さんは、ひなたという役名の通り、現場でもとても明るくてあたたかくて、笑顔が絶えない方だなという印象です。
◆視聴者の方々に向けてメッセージをお願いします。
あんこがつなぐ物語。戦前から戦後復興まで、豊かになっていく時代を描いていますが、家族の在り方もその時代によって、微妙に変化しているのが、このドラマのおもしろいところだと思います。
現代は、家族というよりも個人で戦っていかなければならない時代で、スピードも速いです。その中で朝の15分『カムカムエヴリバディ』を見ていただくと、家族がどれだけ自分のことを思ってくれているのか、先祖…おじいちゃんから伝わっているあんこというものが、自分にとってどういうものなのか、どういう支えになってくれているのか、そして、人に対してどういう影響を与えているのか。
あんこが自分にとって原点となるものなんだ、ということを語ってくれています。それを視聴者の立場から自分ごととして見た場合に、先祖たちは自分になにを残してくれたのか、家族は自分にとってどういう存在なのか…ということを感じさせてくれるドラマだと思います。
モモケンの殺陣に関しても、初代と2代目では、構え方がまず違います。「黍之丞、見参!」という時の刀の構え方が違いますので、違い探しをしていただければと思っています。この物語全体を通して、家族を思う、偲ぶということを感じますが、ヒロインの方たちを通して、モモケンも自分個人だけではなく、家族や父のことを思い返していると思います。この親子のつながりというものを見ていただきたいです。
番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
NHK総合ほか
毎週(月)~(土)前8・00~8・15ほか
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