将来を嘱望されながらも病に冒され、24歳の若さで引退をした元・阪神タイガースの横田慎太郎選手の自伝的エッセイ「奇跡のバックホーム」がドキュメンタリードラマとして映像化。主演を務めるのは、大のタイガースファンでもある間宮祥太朗さん。放送を前に、ドラマを通じて感じた横田選手の魅力や作品に込められた思いを伺いました。
◆阪神タイガースの大ファンでいらっしゃる間宮さんにとって、今回のオファーはどのようなものでしたか?
お話をいただいた時、実はすごく悩みました。横田選手のことも存じ上げていましたし、タイガースファンだからというだけで引き受けるには責任重大だなと。でもマネージャーさんから「自分だったら、もし好きな球団の選手の再現ドラマがあれば、同じ球団を応援している役者に演じてほしいと思う」と言われて、確かにそうだなと思ったんです。それに「祥太朗なら横田選手を誰に演じてほしい?」と聞かれて、なかなか思い浮かばなくて。それならば、と覚悟を決めて引き受けさせていただくことにしました。
◆撮影前には実際に横田選手に会われたそうですね。
はい。横田選手から「恐れ多いです」というお言葉をいただき、僕も「いえ、こちらこそ!」みたいな会話をしていました(笑)。その時点ですでに台本も出来上がっていたので、作中で描かれているいろんなエピソードの裏話を聞いたり、当時の心境を伺えたのも良かったです。
◆タイトルにもなっている奇跡のバックホームは横田選手が引退試合で見せたプレーでした。当時の様子についてもお話されたんでしょうか。
はい、ご本人も「すごく不思議な体験だった」とおっしゃっていました。横田選手はプロ4年目で脳腫瘍の宣告を受けて、術後も視力が戻らなかったり、ボールが二重に見えることもあり、そのためフライを捕球する時、つい後ろに下がるくせがついていたそうです。でも引退試合のあの瞬間だけは「何かに背中を押されたような感じがして自然と体が前に出た、その一歩目がなければバックホームも投げられなかった」とお話されていました。まさに奇跡のようなプレーでしたけど、そこに至るまでには本当にいろいろなことがあり、きっと家族や球団関係者、ファンたちの思いが乗った結果のプレーだったんだなと感じました。
◆撮影はいかがでしたか?
撮影前までは、まだご存命の方を演じることにプレッシャーを感じていました。でも始まってからはそこを意識することはなかったですね。僕が一番大事にしたのは、いかに横田選手が周囲の方に支えられていたかを伝えていくこと。ご本人がおっしゃっていたのですが、両親や家族、それにスカウトの田中秀太さんなどたくさんの支えがあったから、闘病生活や復帰に向けて頑張れたそうなんです。だから僕も、その思いが画面を通して伝わればいいなという気持ちで演じさせていただきました。また横田選手と実際にお会いして感じたのが、人柄の良さ。1時間半ほどの対談でしたが、その短い時間だけでも多くの方から愛される理由が分かったような気がしました。そんな横田選手を演じられて本当に光栄だったなと、今は強く感じています。
◆撮影を通して印象的だったシーンはありますか?
やはり横田選手が引退を決意する瞬間は忘れられないシーンになっています。戦力外などではないですし、相当な覚悟と悲しさ、悔しさなどいろんな気持ちが入り混じっていたはず。今は横田選手も前を向いていらっしゃいますが、決断した時の無念さは計り知れないので、少しでもそういう感情が表現できたらと撮影に挑みました。それにきっとファンの皆さんの中にも、引退の発表を聞いて「お疲れさま」というねぎらいと同時に、今後もチームで活躍をして、やがて球界を代表するバッターになってほしかったという思いもあったと思うんです。そんなファンからの期待を感じ取り、しっかりと受け止めていた横田選手の真っすぐさも、僕はこの作品を通して視聴者に届けたいです。
◆実際にタイガースのユニフォームに袖を通してプレーするシーンはいかがでしたか?
うれしさもありましたが、めちゃめちゃ緊張もしました。一応僕も野球経験者ではあるんですが、当然ながらプロとはレベルが違いすぎるので、横田選手から直接ご指導もいただいてものすごくスイングの練習などをしましたね(笑)。特に大変だったのは、横田選手の左投げ左打ち。僕は右投げ右打ちで全部が逆だったので苦労しました。