「毎日勝負している感覚があった」林遣都インタビュー『その男、意識高い系。』DVDリリース

特集・インタビュー
2015年09月18日

ドラマ『その男、意識高い系。』(BSプレミアム)で、実力も無いのにセルフブランディングと自己演出に長けた、中身の伴わない若者=“意識高い系”の一条ジョーを演じた林遣都さんにインタビュー。作品の見どころや、役づくりのヒミツなどを伺いました!

毎日勝負している感覚があった

――“意識高い系”の一条ジョー役に選ばれた感想をお聞かせください。

ありがたいなって思いました。自分のどういった印象から、どういった作品からこういった役のお話をいただけたのかピンとこなかったんですが、僕の可能性にかけてくれたということなので、すごくうれしかったです。

――これまでに演じていないタイプの役ですよね。

コメディはすごい好きなんですが「荒川アンダーザ・ブリッジ」とか「玉川区役所 OF THE DEAD」は、どっちかというと僕は普通で、周りにヘンな人たちがいるっていう作品なんです。でも、今回は自分が一番ヘンな役なので、これはチャンスだと思いましたし、やりがいを感じました。

――演じてみていかがでしたか?

すごいエネルギーを使ってる感じは毎日ありましたね。本当に何をやってもよかったので、もっとやってもよかったのかなと思ったりもしたんです。可能性は無限大だなと。
若者特有の可能性と、この一条というキャラクターの可能性と、本当に広がりのある人物だったので、すごいやってて楽しかったですし、毎日勝負している感覚がありました。

――撮影の前に「これをやってみよう」というようなことを考えていったんですか?

もちろんそういうことばっかり考えてました。でも、あんまり計算とかはしないように気を付けました。ジョーってひらめきを自分の武器とする人間だと思ったので、現場でリアルにひらめいたことがジョーのひらめきにつながっていけばいいなと思って。なるべく現場のやりとりの中で、何でもいいから試してみようという姿勢でしたね。

――難しかったところや悩んだところはありますか?

まず、せりふが大変でした。

――あやしげなカタカナ言葉ばっかりですもんね(笑)。

僕自身も「意識高い系」と言葉もあまり聞いたことがなかったですし、ネットビジネスの世界とかも分からないので、分からない言葉だらけで。それを自分のものにして、スラスラと話さなければいけないところは苦労しましたね。

――撮影現場の様子はいかがでしたか?

伊藤さんが最初の本読みのときにもうせりふが頭に入っていて、初めてお会いしたときに僕の目を見てせりふをぶつけてきたんです。この人は相当な覚悟で春子を演じているんだなって感じたので、僕とも同じ意識でぶつからなきゃなって。

主演が現場の空気を作るっていうのがあると思うんですけど、伊藤さんが相当な意気込みで取り組んでいらっしゃったので、面白い作品を真面目につくっていこうという雰囲気でした。
何よりもスタッフの人たちの目がすごい厳しいんです。ちゃんとした目で見てくれるというか、その場の雰囲気で何となく笑ったりというのが一切なくて、何度もピリっとした空気になりましたし。簡単に笑わない人たちが、ジョーの行動で思わず吹きだしたり、驚いたりというリアルな反応が大事だということを早い段階で感じたので、その目は大事にしてやっていました。

――そういう反応を得られたときは「よしっ!」という感じですか?

段取りをしていて、誰かが噴き出したりとかは気づくんで、そういうときはうれしいですね。あ、これは面白いのかもしれないぞって。

最終的にコイツすごかったなって思ってもらえれば

――伊藤さんとの共演はいかがでしたか?

最後に、伊藤さんと本当に真面目に取り組んで、お互いキャラをぶつけ合ってやれたのがよかったよねっていう話をしたんです。すごい信頼関係を築いてやれましたね。

――印象深いシーンはありますか?

ジョーが失敗をして…というシーンでの春子さんとのやりとりはすごく気持ちをぶつけ合って演じました。短期間の撮影であそこまでやれることってあまりないと思うんですけど、こういう時間って大事だなって感じさせてくれました。

――春子もジョーも、それぞれ魅力的な人物でしたが、林さんから見ていかがですか?

春子さんもジョーもだめな部分もいっぱいあるんですけど、人と接する上で大事にしなきゃいけない部分をしっかり持っている2人だなと思ったんです。
春子さんは、自分を犠牲にして周りの人が幸せになればっていう姿勢で仕事をしていて、信じたものを貫き通せばきっといいことが返ってくると考えている人物。自分を信じて突き進んでいるという姿は、きっと見てくれる人に希望を与えてくれると思います。
ジョーは、カリスマというか…、若いっていう理由でバカにされたりもするんですが、何よりも大人と戦うパワーを持っていますし、若者にはまれに見るエネルギーを持っているというか、どんどん恥をかいて成長していく人物。感性が豊かですし、尊敬するポイントがある同世代の人間だなと感じています。ただぶっとんだことをやって、人を困らせるっていうことよりも、最終的にコイツすごかったなって思ってもらえればいいなということを考えました。

――これまでいろいろな役柄を演じてこられましたが、役作りの際に心がけていることはありますか?

自分がその人間の気持ちにちゃんとなっていれば、間違いないんだろうなって信じてやっています。ただ、それを信じるためには、自分の中でどういう人間か、どういう生い立ちかというような背景を把握していないとだめなんですよね。

「荒川~」の飯塚(健)監督はよく技術的なアドバイスをくださって、その中でいつも頭に置いているのは“絶対にその人物がやらないことを決めておく”ということ。ポケットに手を入れないとか。頭かかないとか。もちろん、姿勢やクセを最初に決めて、もう1つ、絶対にやらないことを決めておくというのは毎回試してます。
でも、何よりも時間をかけてしっかり考えることが大事ですね。

――一条ジョーとご自身で似ている部分はありますか?

基本的には、ジョーは尊敬できる人物です。僕にはない社交性を持っていますし(笑)。ただ1つ、落ち込むときはとことん落ち込み抜け出せないとか、感情の起伏が激しいというところは似ているかもしれないですね。

――ジョーは「意識高い“系”」ですが、林さんは絶対「意識が高い」と思うんです。多くの作品に声がかかるというのはその証拠ですし。ご自身はどう思いますか?

意識…どうですかね…。あんまり高いとは思えない(笑)。

――そんなことないでしょう(笑)。

意識高い人は本当に高いですからね、ほんとに。

――同世代の役者さんとかですか?同世代は気になりますか?

常に気になっていますね。人と比べちゃいけないと思っているので、なるべく気にしないようにはしているんですけど。自分が演じる上でいつも、ほかの人にできるものならやってみろというくらいの気持ちでやっていますし。

人と接する上で大事なことに気づかせてくれる作品

――林さんのデビュー作は2007年公開の「バッテリー」で、それからずっと第一線で活躍されていますよね。

自分の中で「バッテリー」の公開日がデビューということにしていて、もうすぐ10年ですね。

――濃い10年ですね。

そうですね…でも、それこそ自分の意識を高く持っていれば、もっと濃い10年にできたんじゃないかと思うんです。

――それ、完全に“意識高い”ですね(笑)。もうすぐデビューから10年、林さんにとっての俳優の仕事の楽しさ、醍醐味は?

こんな楽しい仕事はないなと感じるんです。演じている瞬間瞬間に。
役を演じることでそこに挑戦が待っていますし、何かを習うとか、どこかのリアルな現場を見に行くとか、ほかの人では体験できないことが常に待っているので楽しいですね、やっぱり
あとは、テレビに出る、映画のスクリーンに出るっていうことは、作品で人に喜んでもらえるということなので、こんなにうれしいことはないです。何より家族がすごく喜んでくれるっていうのが、自分の中で誇らしいというか。もっともっといろいろ見せたいなって思いますね。

――最後に、作品を見る方々にメッセージをお願いします。

個人的にすごく好きな作品で、思い入れの強い作品です。すごくポップで、コメディ要素が強い作品に見えるかもしれないんですけど、仕事をしていく、生きていく中で、人と接する上で大事なことはこういうことだったのかって気づかせてくれたり、考えさせてくれるパワーを持った作品であることは間違いないです。きっと何かのきっかけになると思いますし、エネルギーを与えてくれる作品だと思いますので、ぜひ見ていただきたいです。

 

PROFILE

林遣都●はやし・けんと…1990年12月6日生まれ。滋賀県出身。O型。
「バッテリー」(2007年)の主演で俳優デビュー。日本アカデミー賞、キネマ旬報ベスト・テンなど多くの新人賞を受賞する。以降、ドラマ、映画に多数出演。『放送90年 大河ファンタジー 「精霊の守り人」』(NHK)が2016年3月放送開始予定、映画「グッドモーニングショー」が2016年公開予定

 

DVD情報

「その男、意識高い系。」DVD-BOX
発売中

本体価格¥11,400+税
3枚組

■あらすじ
入社11年目。30代前半の今まで仕事に懸けて来た「猪突猛進系」女子社員、坪倉春子。そんな彼女が「意識高い系」新入社員、一条ジョーに振り回され、イライラさせられ、尻拭いをさせられながら自分も一皮むけていく、新感覚ビジネスコメディー。

出演:
伊藤歩 林遣都
駿河太郎 佐津川愛美 冨浦智嗣 永嶋柊吾 志村玲那 藤本隆宏
松方弘樹(最終話) 大地真央 ほか
作:安達奈緒子 神田優
音楽:佐藤彰信 佐藤紗代子
主題歌:サラ・オレイン「Shine!」
制作統括:篠原圭 東田陽介
演出:河原瑶 金澤友也

2015年3月~NHK-BSプレミアムにて放送(全8回)

■特典映像
☆記者試写・取材会インタビュー 伊藤歩/林遣都/大地真央
☆クランクアップ 伊藤歩/林遣都

■封入特典
リーフレット(12P)

発行:NHKエンタープライズ
販売元:ポニーキャニオン

(c)2015 NHK・テレパック

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