阪神・淡路大震災20年/サンテレビジョン開局45周年記念作品として制作された『神戸在住』。震災の起こった1月17日に地上波で放送、同日に神戸、東京、大阪の劇場で劇場版が公開された。劇場版のDVD発売を記念し、本作でドラマ初主演を果たした藤本泉さんにインタビュー。作品への熱い思いを語ってもらいました。
どう感情を表したらいいのかバランスが難しかった
――本作がドラマ初主演となりますが、お話を聞いたときの感想はいかがでしたか?
主演と聞いて、うれしさ半面、プレッシャー半面という感じでした。震災当時私は3歳で震災の記憶もありませんでしたので、少し不安はありましたが、そんな状況が私が演じる桂と同じで、等身大で演じられるのでは、と楽しみでした。
――最初に台本を読まれたときの印象は?
本当にやさしいストーリーで、背景に震災というテーマがあるけれど、登場人物は今を生きる女の子たちなのですごく共感もできましたし、これは若い人が見ても通じるストーリーだなと思いました。
――埼玉県で生まれ育った藤本さんが、撮影でなじみのない神戸に行かれたという点で桂とリンクしますよね。
そうですね。現場も関西のスタッフさんが多かったですし、共演した女の子たちも関西出身の子たちだったので、そういう意味では本当に桂と似ていました。でも、神戸は親戚が住んでいたり、震災前に両親が住んでいたことがあったので、すごくご縁を感じましたね。
――関西での撮影でカルチャーショックはありませんでしたか?
現場はやっぱり賑やかでした(笑)。自分も含めてですけど。すごい盛り上がって、女の子4人意気投合しました。実際に仲良くなりましたし、スタッフさんもとっても明るくて、笑いの多い現場で楽しかったです。
――同世代の女子が4人集まったら…
それはそれはうるさいんですよ(笑)。すぐ歌とか歌いはじめちゃったりして。
――そうでしょうね(笑)。そんなにぎやかな現場の中、桂はとても繊細な役柄でしたが、演じてみていかがでしたか?
難しかったですね。繊細で内気で、私とは180度違うような子だったので。どのように感情を表したらいいのか分からなかったので、バランスがすごく難しかったです。
私にとってこの作品との出会いは大きかった
――そんな桂が、ストーリーが進むにつれて成長していきます。
少しずつ自分の意見をいうようになって、少しずつ行動にも移せるようになって。普通の人からするとちょっと分からないくらいスローペースなんですよね、何もかも。決心してから行動を起こすまでも本当にスローなんです。
でも、桂の成長が物語のメインだと思いましたし、伝えたい点でしたから、見ている方々にどうやったら伝わるかを考えました。
――劇中で、桂は人生の道標となる絵に出会いますが、藤本さんご自身にとって道標となるような出会いはありますか?
私にとって、この「神戸在住」っていう作品は、ただ物語を見せる映画というものではなく、震災に思いを馳せる、風化させたくない事実を役者として伝えるっていう、そういう意味がある作品です。その点で、ただ役を演じるのではなく、表現者として伝えたいという気持ちで取り組みました。残さなければいけないもの、伝えていかないといけないものを伝えられたという点で、私にとってこの作品との出会いは大きかったですね。
私も桂同様、神戸に関してきれいな町っていう印象ばっかりだったんです。だけど、この作品の撮影期間中にいろんな場所に行って、モニュメントとか、震災の傷あととかに触れて、やっぱり意識も変わりました。震災の起こった1月17日に公開だったのですが、1月17日に神戸にいたというのも初めての経験でした。
朝5時46分に黙とうをして、撮影の合間をぬって、東遊園地の「希望の灯り」に行って献花をさせていただきました。それはこの作品に出会っていなければきっとできなかったこと。そういう意味でも大きな出会いでしたね。
――桂の恋愛も作品の大きな柱になりますね。
そこは私もすごく考えて演じた部分です。一筋縄ではいかないですし、普通の大学生の恋愛とも違うものだったので。桂にとって日和さんはただの好きな人にとどまらず、人生の道標で、本当に希望の光みたいな特別な存在だったと思うんです。日和さんと親しくなって、お仕事を手伝ったりしていく中で桂自身がすごく成長しますし。
日和さんとの出会いが桂の人生にとって大きな出来事になっているんですよね。
――特に楽しかったシーンはありますか?
女の子4人が本当に仲良くて現場もうるさかったので、4人でカフェでパンケーキを食べているシーンとか、画材屋さんでふざけてるシーンとか、映っていないところですごくはしゃいで盛り上がってましたね。そういう4人のシーンが楽しかったです。
神戸の方たちにとっても大切な作品になってくれたら
――大先輩である竹下景子さんとの共演もありました。
竹下さんは震災に特別な想いをお持ちで、復興支援の活動もされているので、演じられた役柄の武内さんと竹下さんご自身がリンクしていて。竹下さんとのシーンは、この撮影の中で一番印象に残っているシーンのひとつですね。
――公開時の舞台挨拶の反応はいかがでしたか?
神戸と梅田で初日舞台挨拶がありましたが、泣いているお客さんが多かったと聞きました。震災のシーンは少ないですし、震災を前面に出しているわけではないのに、たくさん出てくるいまの美しい神戸の風景を見ているだけで、自然に20年前がよみがえってきて涙が出るという方が多かったそうです。神戸の方たちにとっても大切な作品になってくれたら嬉しいなと思いました。
――「劇場版 神戸在住」がDVD化されますが、どんな人に見てもらいたいですか?
私のような、震災を知らない、経験していない若い人に見ていただきたいですね。この作品を通して、自分が経験していない痛みを知ること、そしてそれに寄り添うこと、それを乗り越える強さを感じてほしいです。
PROFILE
藤本泉●ふじもと・いずみ…1991年10月21日生まれ。埼玉県出身。
『ハンマーセッション!』(00年)、『37歳で医者になった僕 研修医純情物語』(12年)、BS時代劇「薄桜記」(12年)などのドラマ出演を経て、「つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語」(13年)で映画初出演。その後も「新大久保物語」(13年)、「小川町セレナーデ」(14年)、「アオハライド」(14年)と映画への出演が続き、今後の活躍が期待される。
オフィシャルブログ(http://stblog.stardust-web.net/fujimotoizumi/)
DVD情報
「劇場版 神戸在住」DVD
発売中
価格:3800円+税
特典映像:「案内します!ドラマ&劇場版『神戸在住』の日々」※ナレーション:藤本泉/メイキング映像/劇場版予告編/TV放送CM(15秒・30秒)
■ストーリー
父親の転勤を機に東京から神戸へやってきた19歳の辰木桂(藤本泉)。
彼女は大学の美術科へ入学し、明るい未来への扉を開けるように大学生活をスタートさせてまもなくのころ、東遊園地で中年の主婦に声をかけられる。
「震災前は、あそこに私らの家がありましてん。一家5人で住んどったんよ」
そんな主婦の言葉に桂は神戸に来て初めて阪神・淡路大震災の惨禍に見舞われた町にいるのだということに気づく…。
■キャスト
藤本泉/菅原永二 浦浜アリサ 松永渚 柳田小百合
松尾貴史 田中美里(友情出演) 仁科貴 愛華みれ/竹下景子
■スタッフ
監督:白羽弥仁
脚本:安田真奈
原作:木村紺「神戸在住」(講談社刊)
製作:サンテレビジョン
製作総指揮:朝日義治
製作:門前喜康、石田好一、中村仁
企画プロデュース:大西昭彦
プロデューサー:嶋田豪、高瀬博行
イラストデザイン:タナベサオリ
制作プロダクション:アイエス・フィールド
配給:アイエス・フィールド
発売元:サンテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
(C)2014 木村紺・講談社/サンテレビジョン