4月24(日)午後10時よりスタートするハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』(WOWOW)。本作はエンターテインメント・シーンの最前線で活躍するハリウッド最高のスタッフと日米のスター・キャスト陣によって撮影された超大作ドラマ・シリーズ。舞台は1990年代の東京アンダーグラウンド。世界で最もきらびやかな大都会として憧れられた東京のリアルで凶暴な裏の姿を、ハリウッドが誇る本気の“映像魂”がこの上ないクオリティでよみがえらせる。そんな本作で、人気No.1のカリスマホスト・アキラを演じる山下智久さんにインタビュー。オーディションの過程や、東京のお気に入りのスポットなどを聞きました。
◆ドラマ『TOKYO VICE』出演までの経緯を教えてください。
20代前半の頃から、いつか外国の作品にも出てみたいという気持ちが芽生え、いろんなオーディションを受けてきました。でも、なかなか役を頂くことができず、やっぱり難しいかなと思っていたときに、この役を勝ち取ることができたんです。合格の連絡を電話でもらった瞬間のことは、今でも鮮烈に覚えています。作品の中ではメインといった役ではないのですが、自分の中ではとても大きな役となりました。刑事とヤクザと記者の話がメインで、自分がホストというポジションでいかに作品のスパイスになって、記憶に残ることができるのか。監督と話し合い、自分で味付けをして、日々現場の皆さんの足を引っ張らないよう頑張りました。
◆オーディションはホストのアキラ役で受けた?
僕はアキラと、あとヤクザの石田役で受けました。緊張して、アドレナリンが出ていたと思います(笑)。とにかく必死でした。
◆いくつものオーディションにチャレンジしていたんですね。
チャンスがあれば、なるべく受けるようにしていました。でも、この仕事もオーディションも、本当にはかないなと。一生懸命せりふを覚えて、演技の練習をして臨んでも、役に結びつかないこともある。仕事もそうです。どんなに準備に時間をかけても、撮影が終わったらそれで終わり。オーディションの場合、努力が実らないかもしれないからこそ、そこにどれだけ情熱を持って臨めるかが大事なことで。どうせダメだろうな…と思ったら終わりだし、決まらないことのほうが圧倒的に多いけれど、それでも情熱を注げる自分でいたい。今回はラッキーなことに役を頂けて僕のモチベーションも上がったので、引き続き、チャンレジをしていきたいと思います。
◆はかなさを感じながら、どのようにモチベーションを保っていますか?
オーディションは作品のイメージや役にハマるかどうかであって、挑戦してみないことには結果も分からない。先は見えないし、不安定な仕事だと思います。でも、その不安定なところから安定に持っていくというのも、ロマンがあって僕は好きなんですよね(笑)。仕事にしても、瞬間の積み重ねで本当にはかないなと思うのですが、だからこそ輝きも強くなる。そう自分を奮い立たせながらやっています。本当は、僕ははかないのは嫌いなんですけどね。すてきな瞬間は、ずっと続いてほしいって思うから。
◆はかないと感じるようになったのは、いつぐらいからでしょうか。
結構前から思っていました。こんなに頑張ってせりふを覚えたのに、本番一回で終わりか〜って。せりふを入れるのに1週間かけて覚えたのに、今日でもう終わりかって思うと、すごく切ない気持ちになる。「いい演技ができた!」と満足する人もいると思いますが、僕はそうじゃなくて。でもやめられないのは、中毒性があるんでしょうね。覚えている時間も好きなんだと思います(笑)。
◆今回、アキラというキャラクターはどのように作り上げていったのでしょうか。
彼は人を人だと思っていないタイプです。ホストとして成り上がっていくというのが大きなモチベーションとしてあるとは言え、それだけでは正当化できないくらい、人として何かが大きく欠落している。救いようがないな、というのが僕の印象です。だけど、それが面白い。演じるという意味ではね。これまでは光が強い役が多かったので、そういう意味では影のある、真逆のほうに振り切ってやることができた。自分の俳優としてのキャリアという面で考えると、とてもいい経験をさせてもらいました。
◆アプローチ的にも今までにない感じで作っていった?
そうですね。時間的な余裕というか、監督と話し合う機会も、役について考える時間もたくさんあったので。ホストクラブに通う時間もね(笑)。1日1日が、僕の中ではとても貴重な日となっていました。
◆クラブにやってくるサマンサ役のレイチェル・ケラーさん、ポリーナ役のエラ・ルンプフさんとはどのようなやりとりをされましたか?
エラさんから“アキラは私(ポリーナ)のことが好きだと思う?”と聞かれました。 “僕にも分からないけど、無意識の中で好きという感情はあると思う。アキラはお金を巻き上げることが目的で動いているけど、本当に深い心の奥底では好きという感情もある。そう思いながら演じたほうが、深みが出るんじゃないかな”という話をしました。時間があったので、ゆっくりと関係性を築くことができたのでよかったです。
◆会見で「ありのままの自分でいることを認めてもらえて心地よかった」と語っていましたが、これまで自分を出すことについて、悩んだ時期もあったのでしょうか。
正直申しますと…あ、今、僕はうそがつけない人間ですので(笑)。競争社会で生きてきたせいか、どうやったら人気が出るのかを考えながら生きていたので、本当の自分というのを隠していたところはあると思います。むしろ、昔は自分を出すというのが怖かった。多くの人に好かれたい。そうじゃないと、デビューできないと思っていましたから。年齢を重ねてきて思うのは、この先も隠したままでいては、新しいものは何も生まれないだろうなということ。この作品で、役を通して今までにない感情になれたことも大きい。やる前は悩んでいたけれど、今はもうチャレンジしたあとなので、スッキリしています(笑)。どんなふうに皆さんに捉えてもらえるのか、楽しみですね。
◆役作りで、具体的に今回工夫したことはありますか?
20歳ぐらいのときに山崎努さんに出会ったことで、作り物じゃない、本物になる瞬間を作り出すことに感銘を受けたんです。何十年も着ている自分の革ジャンを現場で着ていて、フィクションの世界にディテールでうそのない瞬間を作り出していた。『TOKYO VICE』は90年代の東京の話なので、当時、僕が先輩にもらったアクセサリーを持っていき、監督に言ってアキラとして着けさせてもらいました。
◆海外作品に出ることの魅力とは?
新しい仲間に出会えることです。いろんな国に行って友達が増えていく感じが、すごく楽しい。今までの経験から、一度仕事をした人から、また声を掛けてもらえたりすることもある。気持ちが通じれば、また会いたいと思うのはごく自然でシンプルなこと。そこに関しては、国内、国外で違いはないのかなと思っています。
◆最後に、東京でお気に入りのスポットも教えてください!
東京って、おいしいレストランがすごく多いんですよね。中でも特に好きなお寿司屋さんがあって。おいしいご飯を堪能しながら、ホッと安心できる場になっています。場所は…表参道近辺です(笑)。
PROFILE
●やました・ともひさ…1985年4月9日生まれ。千葉県出身。A型。現在、『正直不動産』(NHK総合)に出演中。
番組情報
ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』
2022年4月24日(日)WOWOWにて独占放送スタート
WOWOWオンデマンドにて第1話配信中
出演:アンセル・エルゴート、渡辺謙、菊池凛子、伊藤英明、笠松将、山下智久
監督:マイケル・マン(第1話)ほか
●photo/Teekay