待望の映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」が、2022年6月11日に公開された。世界征服を狙う悪の軍団・レッドリボン軍が復活するという情報が、わくわく感を増幅させる。このレッドリボン軍が生み出した人造人間ガンマ1号を演じるのが、大人気声優の神谷浩史さん。本作に対して、そして「ドラゴンボール」という作品に対する思いを聞きました。
◆「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」が、いよいよ公開されます。過去2作に続き、今作も鳥山明先生が自ら脚本を執筆されました。レッドリボン軍がフィーチャーされていますが、台本を読んだときの感想は?
「レッドリボン軍が復活するんだなぁ」という、当たり前の感想を抱きました(笑)。自分の役を通じて台本に触れると、感想というよりは、役としてどうやって関わっていこうかを考えてしまうので。
◆神谷さんは1996年~1997年に放送されたテレビシリーズ『ドラゴンボールGT』に参加していますが、20年以上ぶりの参加が決まったとき、どう感じましたか?
20年以上もチャンスがなかったのに、今さら参加できる権利を獲得するとは、よく分からない幸運に恵まれた感じです。「ドラゴンボール」というコンテンツが長く愛されているからこそ今も続いているのでしょうし、僕自身もよくここまで声優を続けてこられたなとしみじみします。20年以上…恐ろしいですね(笑)。第1話で僕が演じた役は、名前が明確でなかったのを記憶しています。当時の台本が手書きだったのもあって、ボベルなのかポベルなのかよく分からない。毎回、書いてある文字が違うけれど、特に名前を名乗るわけでもないので問題はなかったですが(笑)。
◆演じる人造人間ガンマ1号は、神谷さんから見てどんなキャラクターですか?
ガンマ1号は、ヒーローなんです。予告編でも公開されていますが、「スーパーヒーローだ」と公言しているキャラクター。ヒーローとして生まれ、その使命を持って行動します。そういうキャラクターが「ドラゴンボール」の世界に現れて、孫悟空たちとどう関わっていくか…。楽しみにしていただければと思います。
◆注目してほしいシーンはありますか?
ストーリーとしては全部ですが、何よりもそれを彩る絵が最大限の見どころだと思っています。鳥山明先生が描いた表紙クオリティのキャラクターが延々と動き続ける、ちょっと見たことのない映像です。それだけでもぜひ映像体験としてご覧いただきたいですし、もしかしたらこの手法が将来的にはスタンダードになるかもしれません。そのエポックな作品になるはずです。
◆今作は孫悟飯とピッコロにスポットが当たっていますが、2人の活躍にはどんな感想を持ちましたか?
この師弟関係が物語のメインになるのは、実は画期的なことなんですよね。ピッコロさん…僕は呼び捨てじゃなく“さん付け”してしまうのですが(笑)、ピッコロさんはそもそもが非常に変わったキャラクターです。神様から切り離された悪の部分が出自で、最初は悪いキャラクターとして描かれていましたし、今でもその緊張感はあると僕は感じます。でも悪人じゃないという、そのバランスが絶妙で。悟飯の潜在能力を引き出さない限り自分の未来もないという状況から利害関係が一致して、ピッコロさんは悟飯を育てました。悟飯がひもじい思いをしていたらそっと食料を持って来たり、いわゆるツンデレですけど(笑)、それをナチュラルにやっているキャラクター。緑色の肌に紫色の胴着で、キャラクターデザインもかなり異色なのに、存在感と魅力をちゃんと表現できている。何もかもが絶妙なバランスで、魅力的なキャラクターだと思いました。
◆人造人間ガンマ2号は、宮野真守さんが演じます。アフレコはいかがでしたか?
「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」という映画は、画面にいるキャラクターがとにかく動いて芝居をしています。カメラが別のキャラをメインに映していても、自分が演じているキャラクターが見切れているときは芝居を継続しているわけです。そのせりふは、台本にはない。だからキャラクターを自分の中にしっかり落とし込んでおかないと、自然なせりふが出てこないんですよ。今回のアフレコはマモちゃん(宮野)が先行して声を入れてくれていたので、僕はその声に反応するせりふを入れる形でした。もしこちらが先に録っていたら逆の立場になっていましたが、僕は反応する方が得意なので、助かったなと。ガンマ1号・ガンマ2号は、「スーパーヒーローである」ことを矜持に掲げているキャラクターです。ヒーローはこうあるべきという指針が自分の中にあれば、自然と言葉が出てきます。マモちゃんもそれを受けるせりふをちゃんと言ってくれていたので、その点でも彼が人造人間ガンマ2号でよかったな、と思いました。
◆神谷さんにとって“スーパーヒーロー”とは?
みんながイメージするスーパーヒーローは人類の危機を拭いさってくれる存在だと思うんですけど。多分それって、破綻してしまうと思うんですよね。人によって“正義”が違うので、行きすぎた正義は誰かにとっての悪になってしまう。全ての人にとってのヒーローはおそらくあり得ないことだと、僕は思っています。だからこそ身近な人の望みをかなえるというか、小さな危機でも前向きに立ち向かっていける人がヒーローたり得るんじゃないかなと思います。
◆もしドラゴンボールで願いがかなうとしたら、神谷さんは神龍に何を願いますか?
新型コロナウイルス撲滅! あとは、自分の目の届く範囲の人たちが幸せだったらいいですね。
◆公開を楽しみにしているファンへ、メッセージを!
世界的コンテンツとして認知されている「ドラゴンボール」は、鳥山明先生という一人の偉大なる日本人クリエイターによって生み出されています。その鳥山先生が本作の原作・脚本・キャラクターデザインに関わっているというだけで、この作品に対する熱の入れ方が伺えることでしょう。「ドラゴンボール」の新作が作られる、その作品が全世界に発信される。これはもう、一つのお祭りです。このお祭りにリアルタイムで参加できるなら、した方がいいですよ。参加したら「すごく面白かったな」という感想を持ち帰っていただけることは、もう決まっていますから。
PROFILE
神谷浩史
●かみや・ひろし…1月28日生まれ。千葉県出身。A型。主な代表作に『進撃の巨人』(リヴァイ役)、『ONE PIECE』(トラファルガー・ロー役)、『夏目友人帳』(夏目貴志役)などがある。また、声優だけでなくナレーターや歌手としても活躍している。
作品情報
「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」
2022年6月11日(土)より全国公開
<STAFF&CAST>
原作&脚本&キャラクターデザイン:鳥山明
監督:児玉徹郎
声の出演:野沢雅子、古川登志夫、神谷浩史、宮野真守 ほか
●photo/中村 功 text/篠崎美緒 hair&make/NOBU(HAPPS.) styling/村田友哉(SMB International.)