◆そんな大きな変化を経て制作された4thアルバム「glow」は、ご自身の中でもいろいろ思うところがあったんじゃないですか?
3年ぶりということもあって、ファンの皆さんの中で“一体どんなアルバムが出るんだろう?”という期待もあったと思うんですけど、個人的には大きなプロジェクトとして“このアルバムで何か新しい水瀬いのりを提示してやるぞ!”という感じではなくて。どちらかというと、自分が今まで積み重ねてきた音楽をもう一度清書するような気持ちで取りかかっていました。新しいものというよりは、今まで見つけてきたものを軸に、自分の音楽をもう一度正しく描きたいなという気持ちで制作に当たったので、ジャケットなどのアートワークも含めて、より親しみやすい身近な存在に感じてもらえたらいいなと。私の中でのアーティスト像がそういうものだったので、スタッフさんにも最初にそう伝えさせていただきました。
◆まさに、そのようなアルバムになっているなと思います。
テイストとしてはいろいろなジャンルの曲が入っているんですが、どれも違った輝きがあって、それが面白いなと思います。“好き”ってひとつではないので、各ジャンルの自分が好きな音楽をギュッと閉じ込めたような1枚になっていて。共通しているのは、すごく優しい世界の曲ばかりということ。どこかに必ず救いがあったり、希望があったり、光の大きさや輝きの光量は違っていても、どの曲にもちゃんと“輝き”が宿っているので、個人的には私のアーティスト活動の第2章というか、新しいステップの軸になるような気がするんです。きっとこのアルバムが、この先、私が私らしくあるための道しるべになってくれるんじゃないかと思っています。
◆アルバムタイトルの「glow」も“輝き”という意味ですが、その“輝き”というテーマは最初から考えていたんですか?
最初はホントに漠然としたテーマをプロデューサーさんにお伝えしたんですけど、日々の中にある小さな幸せを宝箱に詰めるようなイメージが頭の中に浮かんでいて。それは宝石みたいなものじゃなくて、「ありがとう」と言ってくれたおばあちゃんの笑顔とか、ふとしたときに感じるちょっとした幸せみたいなもので。それをどうにかして音楽やジャケットの世界観に落とし込みたくて、いろいろな言葉をプロデューサーさんに伝えて、それを作詞家の岩里(祐穂)さんに伝えてもらって、表題曲である「glow」の歌詞を書いていただきました。
◆アルバムタイトルであり表題曲にもなっている“glow”という単語を考えたのは、水瀬さん自身ですか?
はい。これまでのアルバムタイトルは2つ以上の英単語を組み合わせたものだったんですが、今回は長いタイトルじゃないなというひらめきがあって。“何かシンプルだけど強い言葉はないかな?”と思っていろいろ考える中で、“輝き”の意味を持つglowという単語がすごくいいなと思ったんです。しかも、全部小文字なのがまたよくて(笑)。大文字のように強すぎないし、それでいて決して弱くない感じが気に入って、このタイトルに決めました。
◆“輝き”ならshineという単語もありますよね。
もともとglowという言葉を知ったのは、某テーマパークの雨の日にしかやらない「Nightfall Glow」というパレードからなんです。私も最初はshineとかshiningとかsparkleといった、はじけるほうの輝きをイメージしていたんですけど、“夜に見つける輝きもあるな”と思って。私も、雨の夜でも幻想的な輝きを見つけられる人になりたいし、“これはいいかも!”と思って提案しました。
◆ということは、アルバムのラストに収録されている表題曲「glow」が最初に作った曲?
レコーディングをしたのは最初ではなかったんですが、アルバムの核となる楽曲なので、取りかかったのは早かったと思います。表題曲はすべてコンペで選ばせてもらっていて、この椿山(日南子)さんの曲は、デモのイントロを聴いた時点で“あっ、これだな”という感覚がありました。ほかにもいい曲がたくさんあったんですが、このアルバムを引っ張ってくれて、アルバムの幹になる曲はこれしかない、と。
◆そう思った一番のポイントはどこだったのでしょう?
聴いていて自然と涙が出たことですかね。デモ段階の音源なのに、そこまで胸にくるということは、私の五感が“これしかない!”と言っているような気がして。なんて優しい光なんだろうと救われた感じもしましたし、たくさんの人を救える曲になるだろうなとも思いました。