9月6日(火)にいよいよ最終回を迎える火曜ドラマ『ユニコーンに乗って』(TBS系 毎週火曜 午後10時~10時57分)。8月30日に放送された第9話で、スタポニキャンパスの発展のため、サイバーモバイルとM&Aという形で手を組み、新たなスタートを切ったドリームポニー。さらに、須崎(杉野遥亮)が佐奈(永野芽郁)、栗木(前原滉)に、父親の会社に入ることを告白し、結末に向けて動き出した。最終回を目前に控え、プロデューサーの松本友香さんと岩崎愛奈さんに、本作に込めた思いや終盤の見どころを聞きました。
◆制作に至るまでの経緯を教えてください。
松本:人生何回でもチャレンジしていいし、新しいことを何かやりたいと思ったら、今の自分の立場、状況とか関係なく、まず一歩踏み出してみたら景色が変わるかもしれないっていう、その一歩を応援したい気持ちで作っているドラマです。現在、アメリカや中国、韓国など世界でユニコーン企業が数多く生まれている中、日本はスタートアップ企業や、新しいことを始めることに抵抗が強い精神風土だなと感じることがあります。そこの勇気を周りがまだ認められなかったり、少し変わり者扱いをするような風潮がある中で、誰かの新しいチャレンジを素直に応援できるような文化が生まれたらいいなと思って企画を思いつきました。そして、女性社長ものや、女性主役で描かれるお仕事ドラマが増えてきてはいる中で、わりと女性がスーパーバリキャリだったり、強い女性が描かれるものが多くて。その時代も1つあった上で、等身大で実は私も起業できるんじゃないかなとか、私も勇気を出して一歩踏み込んでみたら、CEOとして何かひとつ世の中を変えることが実現できるんじゃないかなとか。等身大のCEOがいてもいいなと、同じ目線を重要視しています。
◆スタートアップ企業を題材にした狙いは何でしょう?
松本:先ほど、『日本は新しいことを始めることにすごく抵抗感が強い精神風土』とお話しましたが、さらにその先の、新しいアイデアを世の中に発信していく力とか、9話のテーマにもなっていましたが、新しい会社の技術を大手と一緒にコラボして、大きいものにしていくという分野においても、“弱い”って言葉でひとくくりにするのは言葉足らずな部分もあるんですが、世界に比べたら、ユニコーン企業が少ない原因としてあるのかなと思います。まだまだ新しいチャレンジをする人に対して、ちょっと意識が高いっていう皮肉っぽい捉え方をしたり、実績を強く重視し、新しいものに抵抗があったり。そういう空気感だったり、起業ってすごくハードルの高いものって思っている精神風土がある中で、日本こそ純粋な会社もの、お仕事ものだけじゃなく、スタートアップ企業を舞台にしたドラマを描けたらいいなと。お仕事の内容を描くのはもちろん、自分がやりたいことを形にする選択肢を増やせられるようなお仕事ドラマを作れたらという狙いはありました。
◆苦労したこと、大変だったことはありますか?
松本:今も大変だなと思っているのですが、みんなが思っていることのちょうど同じラインに立ったほうがいいのか、ちょっと先のメッセージを登場させたほうがいいのかは悩みました。先を行き過ぎると、そうじゃないと感じる人もまだまだいると思いますし、手前だとその動きは既にあるよねと。そのあたりの世の中のラインと、本編のラインをどうそろえるか、抽象的なことなんですが、そこはすごく考えましたね。日本もやっと、スタートアップ企業を応援するという動きがある中で、うまくそういう空気と、ドラマの空気と世の中がちょっと変えたいと思う空気が合えばいいなと意識しました。
岩崎:私も、いくつになっても挑戦ができるというメッセージを世の中に届けたいなと思っていました。その中でスタートアップ企業を描くというのは、決して楽なことだけではないので、リアリティと、どこまで夢を描けるかのドリーム感と、そこのバランスがすごく難しいなと思いました。変に難しくしすぎて「やっぱり起業は難しい」と思われてしまうと寂しいなと思いましたし、かと言ってあまりに軽快にストーリーが進みすぎると「そんなに簡単なことではない」という思いもある。もちろん努力や苦労があって、真っすぐな気持ちというのも必要だよということもしっかりと描いていきたかったので、それを主人公に担ってもらおうと。姿勢や仲間たちとの支え合いといったバランスは難しかったですが、いつもよりほんの少し遠くに手を伸ばしてみたり、背伸びしてみるだけで得られるものがきっとあるよっていうのが伝わっていたらうれしいです。
◆配慮もありつつ、難しさもあったということですね。
松本:そうですね。アナログを批判したいわけでもないですし、7話のデジタルディバイドの回も、田舎も進んでいるけど、そうじゃないところもまだあるというバランスは大変でしたね。
◆参考にされた作品はありますか?
松本:もちろん海外のスタートアップ企業モノや女性CEOの作品はいくつか勉強に見ました。今の日本の状況に落とし込むとどうだろう、火ドラのドリーム感を掛け合わせるとどうなんだろうかとか、意識した部分はあります。ですが、1番参考にしたのはリアルな人たちの声。ガッツリと5社に取材していて、実際に見に行かせてもらったり、ビジコンへ行って、これから起業する人たちの意見を聞いたりとか、その人たちのエピソードを物語に使っていることが多いです。
◆IT用語やデジタルについての知識が多く出てきました。それらが小鳥さん(西島秀俊)の存在で親しみやすくなっているのかなと思うのですが、こだわったところなどを教えてください。
松本:スタートアップ企業はそもそもカタカナ用語が多い企業なんです。私たちもクランクインする半年前ぐらいから、いろいろなスタートアップ企業へ取材に行ったんですが、分からない用語や、聞いていて難しいと思う言葉がたくさんありました。最近、TikTokでもスタートアップの人あるあるで、カタカナが多すぎて分からないみたいなネタがあったりするんです。そういうところを真面目すぎず、物語の中にうまく取り入れて、なおかつそれをちゃんと同じ目線で立って質問してくれる人がいたらいいなと思い、そういう役目を小鳥さんに担ってもらいました。
◆小鳥さんの反響は狙い通りでしたか?
松本:こんな人がいたらいいなと思いながら、夢を託して作ったキャラクターだったので、視聴者の皆さんにもちゃんと「分かる、こんな人いてほしい」って思ってもらえる存在となって、すごくよかったなって思います。西島さんからも、こんなことをしたらどうだろう、あんなことをしたらどうだろうって、台本以上のアイデアをくださったり、足し算引き算しながらドリームすぎず、でもこんな人がいたらすごく救われるよねっていう部分を一緒に作っています。
◆西島さんを起用した理由を教えてください。
松本:強面なイメージがあった中で、ここ数年すごく柔らかい役だったり、エプロンを着けている役をやられていて。西島さんのにじみ出る優しさが、絶対すてきな小鳥さんになるなと思ったんです。そして、TBSの日曜劇場ではなく、火曜ドラマに出ている姿をちょっと見てみたいなというチャレンジもあって、オファーしました。
岩崎:西島さんは世代を越えて愛されている俳優さん。老若男女問わず、西島さんをすてきだなと憧れている人が多いと感じています。本作がそういう世代間の考え方やギャップの違いを軽く超えていけるような作品にしたいということもあったので、小鳥さんがそういう象徴の人ですし、西島さんにその役を担っていただけたら、最高な小鳥さんになるのではないかなという思いがありました。実際、本当にとてもすてきな方で、松本も言っていたようにアイデアをたくさん出してくださいますし、常に現場の空気を穏やかにしてくださって一緒に作品を作ることを楽しんでくださっていることが私たちも分かるし、周りもそれに感化されて、もっとこうしてみたいなっていうアイデアが日々生まれてきます。
◆具体的に採用された西島さんのアイデアはありますか?
松本:2話で、杉野さんと前原さんがLUUPっていう電動キックボードに乗って出勤してくるシーンがあったんです。そのとき、西島さんがその2人の姿を見ていて、自分も乗りたいと言われていたんです。若い人たちの会社で小鳥さんも成長していく中で、新しいものを取り入れていければいいよねと。その結果、9話で西島さんがLUUPに乗るシーンが出来ました。
◆作品中には図書館も出てきましたが、それはデジタルとの対比を意識されたのでしょうか?
松本:デジタルが進む一方で、アナログな部分も大切なところがあるなと思います。対比を意識しているわけではなかったですが、実は図書館ってすごく建築にこだわってきれいなところが多いんです。シチュエーションや設定も含め、監督と美しい建築の図書館で撮影をしてみたいねと、ビジュアルイメージから入った部分もありました。
◆前原さんがインタビューで“劇団ドリポニ”と言われていましたが、ドリポニメンバーの撮影エピソードで印象に残っていることがあれば教えてください。
松本:“劇団ドリポニ”は、ドリポニがワンルームみたいな作りなので、永野さん、杉野さんだけがせりふのあるシーンでも、西島さん、前原さん、(青山)テルマさん、坂東(龍汰)さんが後ろにいることが結構あるんです。西島さん、前原さん、テルマさん、坂東さんの4人はせりふのない中で、永野さんたちの後ろで何をやるかに命を懸けていて(笑)。 “劇団ドリポニ”ができたことをきっかけに、いろんなアイデアを日々現場で出してくださって。4話で投資家の人にもらったクッキーを食べているシーンがあったんですが、台本では海斗(坂東)だけがむしゃむしゃ食べるという設定だったのが、みんなでクッキーを取りあって食べていたり。yogiboがある休憩室のシーンでは、どんな体勢にしよう、どのくらいの距離感にしようと、いつも盛り上がっていました。ですが、私たちも足し算引き算が必要なので、バランスでカットしてしまう部分もあるんですが…(苦笑)。カットされるかもしれないところも含めて、何をギリギリまでやるかみたいなところを楽しんでやっていただけています。
◆『私の家政夫ナギサさん』も手掛けたお二人。そこで得たことを生かした部分もありますか?
松本:火ドラ=キュンキュン=直接的なラブだけじゃないなっていうのは『ナギサさん』を作ってみて感じました。心の癒やしというか、心のつながりのキュンみたいなものも求められているのかなと。いろいろなバランスの作品が編成される中で、自分より人生経験豊富な人からもらえる言葉だったり、安心感だったり、そういう関係性から得られるもの、癒やしや力になることってあるなと、そこは意識しています。
岩崎:『ナギサさん』をやっていた時に、現場でよく話していたこととして、世代間のギャップや遮断というか、「あの世代はこうだから」とか、「若い子たちはこうだから」みたいなバイアスのかかった見方が自分たちを窮屈にしているなと思うところがあったんです。それを『ナギサさん』ではナギサさんみたいなおじさんの家政夫さんと家事の苦手な女性とで描きましたし、今回は大人のおじさん部下と、女性CEOという、立場も今まで考えてきたこと、生き方も違う2人が出会うことで、世代間の遮断をしたり、バイアスをかけて人を見るのではなくて、お互いに心を開いてみると、古きを知って新しきを知る、新しきを知って古きを知ることもあるだろうし、相互理解につながったりとか、お互いを尊重する動きの一歩になったらすてきだなというのは考えました。
◆佐奈と須崎、小鳥さんという三人の関係の行方も気になるところです。
松本:ゴールは企画書の段階でほぼ決まっていました。クランクイン前に7話、8話くらいまで固まっていたので、やりながら変えるとか、反響を聞いて揺れるというのはなかったです。いろんな多様性を認めていきたいというのもあるので、好きっていう定義、好きっていうひとつの言葉だけど、その捉え方とか、その人への好きと、あの人への好きって違ったりもするし、その好きの中でもたぶん佐奈っていう女性がその人とはどういう関係でいたいんだろうっていうのを、ちゃんと答えを導き出していって、たどり着いていく。そこで、彼女が最後にどの人生が自分にとって、正直で真っすぐな生き方になるかっていうのを考える物語になっていると思います。
岩崎:8話で「好きにもいろんなかたちがある」というメグ(青山)のせりふもありましたが、いろんな種類の好きがあると思うんです。恋みたいなキュンキュンする、この人が好き!みたいなものだけじゃないかたちもあると思いますし、『ナギサさん』でも描いたような尊敬とか、人から生まれる愛だとか恋っていうのもあると思います。単純にひと言で恋とか好きとは言えない、愛のかたちとか、好きのかたちっていうのが提示したいものでもあったので、そういうのも楽しみに見ていただけたらうれしいなって思います。
◆最終話に向けた見どころをお願いします。
松本:最終回はこのドラマの命題でもある“何歳でもチャレンジしたっていい”というのと、“大人の青春”のゴールの集大成です。最後まで「私も明日から頑張りたい」と背中を押してくれるような物語があったりするので、いつものカラーもありつつ、大人の青春のゴールを楽しんでもらえたらなって思います。
岩崎:最終話も希望あふれる物語になっていると思うので、そこを楽しみに見ていただきたいです。私たちも登場人物みんなにとても愛着を持っていて、彼らがどんな答えや幸せ、結末をつかんでいくのか、ワクワクしながら台本を作りました。そういう彼らの姿から、この人たちは進化を止めないんだな、未来はどこまでも続いていくなっていう、希望を感じてもらえたらうれしいなと思っているので、ぜひ最後まで楽しみにしていてください。
PROFILE
松本友香
●まつもと・ゆか…2015年にTBSに入社。これまでに手掛けた作品は『私の家政夫ナギサさん』『この初恋はフィクションです』など。
岩崎愛奈
●いわさき・あいな…2017年にTBSスパークルに入社。これまで手掛けた作品は『私の家政夫ナギサさん』『#家族募集します』『ファイトソング』など。
番組情報
火曜ドラマ『ユニコーンに乗って』
TBS系
最終回 2022年9月6日(火)午後10時~10時57分
番組HP:https://www.tbs.co.jp/unicorn_ni_notte_tbs/
番組公式Twitter:@unicorn_tbs
番組公式Instagram:@unicorn_tbs
番組公式Tiktok:@unicorn_tbs
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