今年1月にtvkほかで放送され人気を博した、広島が舞台のリーガルドラマ『びったれ!!!』が、新たに竹中直人や山本耕史ら豪華キャストを加えて映画化。ドラマに引き続き「お人好しで頼りないシングルファーザー」「切れ者の司法書士」「元・極道」という3つの顔を持つ主人公・伊武努を演じる田中圭さんにお話を伺いました。
竹中さんや山本さんには僕から出演をお願いしました
――人気ドラマ「びったれ!!!」が満を持して映画化されました。
1つのキャラクターや作品を続編などで演じられる機会はなかなかないので、映画化は素直にうれしいです。今回、監督もスタッフも脚本家も変わり、ドラマのキャストと演出部と助監督だけが残ったので、僕はドラマイズムを継承して映画に臨みました。法律バトルももちろんありますが、台本を読んで親子の話をテーマにした人間ドラマが物語のメインだと思ったので、これをどう映像化していくのか考えましたね。
――ドラマイズムを継承するといった意味では、プレッシャーが大きかったのではないでしょうか?
僕が指揮を執ったわけではないんですが、ただ演じるだけではなく、ドラマのときから脚本の打ち合わせやキャスティングに参加していました。だから、1つの作品としてちゃんと成立させたかったので、そういうプレッシャーや意気込みも映画は特に大きかったですね。今回、竹中直人さんや山本耕史さんに出演をお願いしたのも僕なんです。2人には出演していただいて感謝しかないですね。本当に助けられたし、人としても俳優さんとしても大好きな先輩たちですから。スタッフも、竹中さんなどが入るとちょっと緊張感が高まるし、いい意味でいろんな化学反応をプレゼントしていただきました。
――いよいよ11月28日(土)の公開が近づいていますが、今はどんな心境ですか?
もちろん自分の反省点もありますが、今は正直ホッとしています。どういう評価をされるか分かりませんが、僕は伊武っていうキャラクターがすごく好きなので、いつかまた伊武を演じられるときが来たときのために、いいところも悪いところも全部自分の中に閉じ込めて公開を待っている感じですね。本当に1人でも多くの方に見ていただきたい気持ちしかないです。かと言ってどうしたら皆さんに見てもらえるかはよく分からないんですが(笑)。
アクションシーンではアドリブで勝手にとどめをさすことも(笑)
――原作・ドラマとともに広島が舞台ですが、広島ロケが行われたのは映画が初だと伺いました。
ドラマでは広島に行けなかったんです。だから、広島での撮影は、空気感という意味では必要不可欠な要素だと思いますし、広島で撮影できてよかったってすごく思います。杉山栄子(森カンナ)の実家として登場する広島市内の湯来町も、実際に湯来で撮影しました。湯来の方がエキストラで参加してくださったのですが、ご当地のおいしいものを振る舞っていただいて。
――ちなみに何を召し上がったんですか?
いっぱい食べましたよ! アナゴ飯、広島焼き、馬刺し、ウニホーレン、魚、パスタ…。ご飯が本当においしかったですね。
――ロケ地での印象的なエピソードはありますか?
本当にすべて印象的だったので難しいんですが、みんなでご飯に行ったのも印象深いし、湯来での撮影中に雪が降ってきちゃったりとか(笑)。あとは、遊園地のシーンで姪のかりん(岩崎未来)と観覧車に乗ってキャッキャしていたのも楽しかったです。
――伊武とかりんとの微笑ましいシーンはとても印象的でした。
未来とは親子としてドラマからずっと一緒にやってきているので、そこそこの絆は生まれていると信じたいです(笑)。たまに照れたりすることもありますが、未来もよく話してくれます。印象的だったのが、劇中で未来が竹中さんとプリクラを撮るシーンがあるんですけど、未来が僕に「撮影が終わったらプリクラ撮っていいですか」って言うから「いいよ! 一緒に撮ろうよ」って言ったらすごく喜んでくれたので僕もすごくうれしくて。でも、実際に撮ろうとしたらゲームセンターが閉まっていたんですよね。そしたら未来がすごく落ち込んでいたのが可愛かったです。未来は、多分本作以外の作品でもまた絶対お会いすると思うので、そのときも仲良くしてくれたらいいなって思っています。
――アクションシーンも迫力満点でした。
ほとんど一発OKだったんですが、アクションは得意じゃないんです。だから「本当にこれでいいの?」って言いながら撮影していました(笑)。
――すべてご自分で演じていたのですか?
そうですね。もちろん、カメラマンさんがうまく撮ってくれたり、いいアクションをつけてくれたっていうのもあります。でも、アドリブで一発多く殴ったり勝手にとどめさしたりしていました(笑)。あと、あのアクションシーンが終わって、伊武がかりんと向き合い始めてからのほんわかした流れが好きなんですよね。
「無理だよ…」女子の理想の男子を演じるときは“びったれ”ます
――タイトルにもある「びったれ」は広島弁で小心者という意味がありますが、田中さんご自身が思う“自分のびったれな部分”はありますか?
基本びったれですよ。お芝居するときはすぐ足がすくむし緊張するし…。いや、ちょっとうそかも(笑)。でも、みんなやっぱりびったれなところは持っていて、そんな自分をどう奮い立たせて一歩踏み出すかだと思います。そういう意味だと、自分のびったれな部分と向き合えてる気もするし、まだ全然勝てないところもありますね。
――ちなみに、最近お芝居で“びったれてしまった”ことはあるのですか?
ドラマ『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』(TBS系)で、僕の演じる小牧が毬江(土屋太鳳)に「もう子供に見えなくて困ってるよ」って言うせりふがあるんですけど、こういう女子を胸キュンさせるようなシーンをあんまり構えたくなくて。キャーキャー言わせたい気持ちも分かるんですけど、「ここでキュンとしてほしいです」って説明のシーンにしたくないというか、せりふは素直にキャラクターの言葉で伝えたかったんです。本当はドヤ顔でイケメン芝居ができたらって毎回思うんですけど、理想の王子様キャラをすごい人間くさく演じたくなっちゃうんですよね。
――現在は、ラブコメディの月9ドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系)にも出演していますね。
原作のマンガには女子の理想の男子が本当にいっぱい出てくるので、そういうのを演じるだけで「無理だよ…」ってびったれます(笑)。そういうことは結構多いですが、びったれ自体は悪いことじゃないと思うんですよ。伊武は「びったれ」って言われるとキレるんですけどね(笑)。
――伊武は3つの顔を持っていますが、もし田中さんが俳優以外の顔を持てるとしたら何がいいですか?
超大富豪になりたい! お芝居はすごく好きなので全然苦じゃないんですけど、家族や友達と海外に行って、セレブっぽく「うぇ~い!シャンペ~ン!」ってアホみたいにやってみたいです。あとは、「実は副業でめっちゃ稼いでいた」みたいな裏の顔が欲しいですね。株やITで一発当てたとか、意外とみんなやってるじゃないですか。でも、僕は全くないので「いつかやってやろう」って思っています。すごく憧れんだよな~。
――最後に、これかから映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。
僕自身、伊武努というキャラクターにすごく惹かれています。3つの顔以外にもいろいろ悩み葛藤していて、こんなにあらゆる顔を持つ人間くさい主人公は果たしているだろうかってくらい。過去と向き合ったり、誰かのために動いたり、共感できるような小さな気持ちの変化がいっぱい詰まっている人間ドラマです。豪華キャストにも出ていただいていますし、親子の絆、法律バトル、アクション、といろんな要素があります。1つのエンターテインメントムービーとして原作ファンはもちろん、ドラマを見てくださった方、もちろんそうでない方にも老若男女問わず楽しんでいただける作品なので、ぜひご覧ください!
PROFILE
田中圭●たなか・けい…1984年7月10日生まれ。東京都出身。O型。
実力派俳優として数多くのドラマ、映画、舞台に出演し、今年、俳優デビュー15周年を迎える。現在は、ドラマ『5→9 ~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系)、『恋の時価総額』(BSスカパー!)に出演中。映画「図書館戦争 THE LAST MISSION」も公開中。
作品情報
「劇場版 びったれ!!!」
11月28日(土)より角川シネマ新宿ほか全国公開(11月7日(土)より広島先行公開)
■あらすじ
かつては暴力団組織で狂犬と恐れられた男・伊武努(田中圭)。極道から足を洗い、いまや司法書士となり亡き姉の娘・かりん(岩崎未来)を男手一つで育てている。ドラマ最終話で無事にかりんを取り戻し、平和な生活に戻ったかのように思えたが、幼稚園のパパ友はまたも不当解雇に怯え、大事な補助者・杉山(森カンナ)の実家は不正な取引で立ち退きを迫られ、かりんまで人質に…。ライバル弁護士・霧浦(山本耕史)の狡猾な戦略、そして外道な伊武の父(竹中直人)の魔の手が伊武の前に立ちはだかる。みんなの未来を背負った伊武は義理と人情を貫き、かりんと杉山、善良な市井の人々を守ることができるのか!?
■キャスト
田中圭、森カンナ、岩崎未来、日向丈、池田鉄洋、黒田大輔、阿部亮平、西田篤史、池谷公二郎、城みちる、国広富之、山本耕史、竹中直人 ほか
■スタッフ
監督:金田敬
原作:田島隆
マンガ:高橋昌大(別冊ヤングチャンピオン)
脚本:竹内清人、田島隆
主題歌:「森森森」あゆみくりかまき(SMEレコーズ)
公式サイト:http://www.bittare.jp/
(C)田島隆・高橋昌大(別冊ヤングチャンピオン)2013/2014「びったれ!!!」製作委員会
●text/金沢優里