小鳩ミク(ギター&ボーカル)、SAIKI(ボーカル)、KANAMI(ギター)、AKANE(ドラムス)、MISA(ベース)の5人から成るガールズバンド・BAND-MAIDが、9月21日(水)に2nd EP『Unleash』をリリースする。ステージ衣装はメイド服、奏でるサウンドは本格ハードロックというギャップも相まり、世界中から支持されている彼女たち。本作を引っ提げ、10月から全米ツアーを敢行することも決定した。今回は『Unleash』制作エピソードや全米ツアーへの意気込みと共に、5人の素顔が垣間見えるインタビューをお届けする。
◆今回の2nd EP『Unleash』は、どのようなコンセプトで制作されたのでしょうか?
小鳩:“これからもっと海外に進むぞ”というときに、コロナ禍になってしまったんですっぽ。その動きたくても動けないモヤモヤした感じを、SAIKIが“気持ちが海に沈んで動けない”と表現してくれて。そこからEPとリード曲「Unleash!!!!!」に共通するテーマとして、沈んだ場所から解き放たれて息ができるようになるイメージで制作して、分かりやすく“世界征服”第2弾と銘打って出すことにしましたっぽ。
SAIKI:ちょっと“世界征服”の説明をすると、もともとジャンルに縛られたくない、自分たちが“BAND-MAID”というジャンルになりたいという思いから掲げた目標だったんです。そこから2018年にアルバム『WORLD DOMINATION』をリリースしたとき、みんなの頭になぜかBAND-MAIDが流れてしまう、つまり曲で“征服する”ことが“世界征服”じゃないかという考えに至って。『WORLD DOMINATION』が世界征服の第1弾だとしたら、今回の『Unleash』は第2弾だという位置づけをした感じですね。
◆そんなコンセプトの下、収録する楽曲はどのように制作を?
小鳩:基本的には、どの曲も同じような流れですっぽ。KANAMIがベースとなるメロディーやデモを作り、MISAとAKANEがアレンジや打ち込みをして。最後に私とSAIKIが歌詞を付けるという感じですっぽ。
KANAMI:「Unleash!!!!!」に関して言えば、『WORLD DOMINATION』のリード曲「DOMINATION」の流れに続く曲であり、その前年に両A面シングルとして出した「Choose me」を意識してという要望もあって。その2曲からイメージを膨らませて、“これからまた仕切り直して世界征服を突き進めるぞ”みたいな気持ちで作りました。
MISA:今回あえてやってみたのが、パソコンでベースラインを作るということなんです。というのも前作のアルバム『Unseen Word』(2021)のとき、自分の“手クセ”が増えてきたのを感じて。あえてそれをなくそうと思い、取り入れてみました。
AKANE:私の場合、曲によってはデモにガッツリ、フレーズを入れ込むこともあるんですけど、「Unleash!!!!!」はキャッチーな曲だし、メロディーを引き立てたかったから、シンプルなほうがいいなと思って。耳なじみよく同じフレーズを繰り返す、聞きやすさ重視のビートにしたんです。
◆歌詞に関しては、いかがでしょうか?
SAIKI:詞はコロナ禍で感じていた気持ちをそのまま、思うように動けなかった悔しさと、悲しみを晴らせる内容にした感じですね。制作前から既にアニメーションを入れたミュージックビデオ(以下MV)を作ることも決まっていたから、どういうワードを入れたらいいか、アニメ制作スタッフとミーティングも重ねて。小鳩とそれぞれ詞を書き合って、いいとこどりをしました。小鳩は結構、知的な言葉遣いをするから、それを少し崩したりもしましたね。
小鳩:大まかな土台が小鳩で、音的に気持ちいい、口に出して気持ちいいところはSAIKIが書いた箇所が多いですっぽ。
◆「Unleash!!!!!」は先行配信され、MVも公開されています。反響はいかがですか?
小鳩:以前から自分たちをアニメ化したいという思いがあったから、達成感がありましたっぽ。しかもここまで細かく作っていただいて、大満足ですっぽ。
SAIKI:今までのMVで一番、再生回数の増え方も速くて。ご主人様お嬢様(※ファンの呼称)も、こういうのを待ち望んでいたんだなと思いました。
◆自分たちもファンも満足の仕上がりになっている。
小鳩:アニメ制作の皆さんが、私たちの映像を見たり、インタビュー記事を読み漁ってくれたりしたみたいで。最初の打ち合わせの段階から私たちの好みや趣味、こういう動きが多いとかを把握してくださっていたので、こちらからはほとんど何も追加でお願いすることがなかったですっぽ。
SAIKI:『美少女戦士セーラームーン』みたいに変身したいという個人的な願いもかなえてくれて、うれしかったです(笑)。AKANEとKANAMIの描き方も面白くて。
小鳩:AKANEはバナナを食べながら変顔してたし、SAIKI LOVEなKANAMIは目がハートになってたっぽ。
AKANE:ある意味、KANAMIが一番アニメっぽいキャラクターかもね(笑)。
MISA:私、ずっとお酒持ってた(笑)。
小鳩:やっぱり、MISAと言ったらお酒っぽね。ステージドリンクもお酒だし、酔っぱらってるような動きもリアルだったっぽ。
MISA:よくできてるなぁ、すごいなぁって感心しました。
◆“Unleash”には“解き放つ”“解放する”といった意味がありますが、皆さんはどんなときに感情が解放されますか?
SAIKI:KANAMIはギターソロじゃない? 解放しているの、よく見かける。
KANAMI:ステージはストレス解消の場ですからね。
SAIKI:曲作りは?
KANAMI:曲作りそのものというより、作り終わった瞬間かも。“終わったー! 間に合ったー!”みたいな(笑)。
AKANE:私はやっぱ、食べてるときかな。
◆重視するのは量ですか、それとも質ですか?
AKANE:(食い気味に)量です、量です!
SAIKI:質にこだわらないって、ヤバくない?(笑)
AKANE:やっぱ、満足行くまで食べたいから。食べ放題なんて最高!
小鳩:でも、食べるものに偏りはあって、例えば納豆とか、AKANEは同じものばっかりずーっと食べてるっぽ。メンバー間で方向性を共有するために、コロナ禍中はよくリモートで話し合っていたけど、だいたい午前中だったから、AKANEはよく朝ごはん食べながら参加していて。それがいつも、納豆ごはん。あのでっかい器、ボウルだったっぽ?
◆ボウルに入れて食べている…?
AKANE:どんぶりじゃない?
MISA:いや、あのサイズ感はボウルだと思う(笑)。
AKANE:まぁ、よくおそうめん入れたりはしているけど(笑)。納豆はね、コロナ禍で在宅が多かったときなんて、1日6個は食べていたと思う。
小鳩:ずっと(1食で食べる量を)“2個”って言い張っていたっぽね。それだったらまぁ普通の範疇内かなと思ってたら、3パックで1個って意味だったっぽ(笑)。
SAIKI:本当にさっき、この取材前に分かったよね(笑)。
◆食べるのが好きというわりには、体型は引き締まっていますよね。
AKANE:ドラムで消化しているんです。だから、曲が難しいバンドでよかったなって。
MISA:BAND-MAIDがジム代わりってこと?(笑)
◆他の方は、どんなときに感情が解放されますか?
小鳩:私は家で競馬を観ているときかもしれないですっぽ。だいたい、グリーンチャンネル(競馬専門チャンネル)を観ながら叫んでいますっぽ(笑)。予想して普通にスマホで馬券も買うし、一口馬主もやっているから、自分のお馬さんを応援してもいますっぽ。
SAIKI:(ヒソヒソ声でKANAMIに“一口馬主”について説明)。
小鳩:まぁ普通、知らない人のほうが多いっぽねー。
SAIKI:知らなくていいし、知らなくても困らない(笑)。
KANAMI:“結構、お金持ってるんだねー”って話してた。
小鳩:いやいや、一口馬主と言ってもかわいいもので、1頭1〜2万円ぐらいっぽ。それを2〜3頭持っている感じだっぽ。
SAIKI:いつかちゃんと馬主になって、“クルッポー”って名前付けたいんだもんね?
小鳩:そう、クルッポーにしたいっぽ。でも、すんごいお金持ちにならないと無理だから、だいぶ遠い夢だっぽ。
◆SAIKIさんはどんな時に解放される?
SAIKI:現実的な話になっちゃうけど、やっぱり寝るときかな。
KANAMI:SAIKIは寝ているとき、本当に解放された顔をしているからね。
AKANE:電話も絶対出ないもん。
KANAMI:だから夜9時以降、連絡取れなくなる。
小鳩:あと、いきなり寝るっぽ。
SAIKI:アハハハ(笑)。
◆MISAさんは?
MISA:コロナ禍前までは、“赤ちょうちん”でしたね。でも最近はそういうところへ飲みにも行けなくなって。“解放されてるなー”と思うのは、ネットで洋服買うときぐらいかも。
小鳩:ゲームは? 「バイオバザード」やってるとき、解放されないっぽ?
MISA:ゲームで銃を撃ってるときは、確かに。“ヘッドショット、ヘッドショット”(ターゲットの頭を撃ち抜くこと)って、よく言ってるし(笑)。
小鳩:(笑)。一発でゾンビ倒せるから、ヘッドショットしたほうが効率いいっぽね。
MISA:またヘッドショットしたときの音がね、気持ちいいんですよ。
◆なるほど(笑)。作品の話に戻りますが、今回のEPでオススメの曲をそれぞれ教えてもらえますか?
KANAMI:私は1曲目の「from now on」ですね。まさに私のストレスを発散する、解放感のあるインスト曲になっていて。イントロから印象的なリフで、この曲で“つかんじゃうぞ!”みたいなイメージで作りました。
小鳩:オーケストラの要素もあるっぽね。
KANAMI:そうなんです。今回のEPにも収録されている「Sense」を作ったとき、オーケストラのオケを勉強して。ずっとオーケストラのインストが欲しいって言われていたし、今なら作れるなと思って、作りました。
◆リズム隊のお二人は?
MISA:私は「influencer」ですね。これまでの曲でベースソロがあったのは、「NO GOD」(『Unseen Word』に収録)ぐらいで。ここまでシンプルにベースが際立つベースソロはなかったし、しかも長いから、お客さんもベース音を聞き取りやすいと思う。
小鳩:その部分、KANAMIは“何したらいいか分からない”って悩みを話していたっぽね。
KANAMI:あらかじめ“尺長のベースソロを入れるぞ”と思って作ってはいたけど、実際にお給仕(ライブ)のリハでやってみたら手持ち無沙汰で。私、何してればいいんだろうって。
小鳩:“ティーでも飲んでいればいいんじゃない?”って、言っときましたっぽ(笑)。
MISA:スポットライトを浴びている自分が思い浮かべやすいし、ライブでも印象に残りやすいだろうから。こういう曲もあるといいなって思いました。
AKANE:私は2曲目の「Balance」かな。3連符や8分、16分とセクションごとにガラッと音符が変わっていく曲だから、めちゃくちゃ難しくて。こういう曲ってグルーヴ感が大事だし、コロナ禍の間に個人練習して、自分のタイム感やリズム感を作っておいてよかったなって。じゃなかったらたぶん、もっと苦戦していたと思います。
◆ボーカルのお二人はどうでしょうか?
小鳩:私はコーラスでシャウトを入れている、「Corallium」と「HATE?」ですっぽ。「After Life」(『Unseen Word』に収録)ぐらいから、試しにレコーディングでシャウトを入れてみる機会が増えて。自分の中ではどんどんうまくなっているのを感じているし、SAIKI先生から一発OKをもらえることも増えてきたんですっぽ。先生、厳しいんですっぽ。“ちょっとロックさが足りない!”って、よく言われるから(笑)。
SAIKI:やっぱ、(ロックさは)大事なんでね。「influencer」も長いシャウトをバトンタッチでやるから、レコーディングのとき面白かったです。“はい次!”“足りない!”みたいな(笑)。私も自分が詞を書いたという意味で、「Corallium」と「HATE?」を推そうと思います。2曲で真逆のことを言ってるから、そういう振り幅も楽しんでほしいし、「HATE?」は男性にちょっとワンパン入れる感じで書いたから、思い当たる人の胸に突き刺さればいいなと。とりあえず、“嫌い”って連呼したかったんですよ。また英語で言うと口なじみもいいし、存分に食らいながら堪能していただきたいです(笑)。
小鳩:またSAIKI大好きなご主人様たちを喜ばせちゃうっぽね。
KANAMI:そんなに“好き”って言われても、みたいな。
小鳩:言葉としては、“嫌い”って言ってるのに(笑)。
SAIKI:まぁ確かに、裏返しと思っていただいていいですよ。
KANAMI:ありがとうございます♪
◆KANAMIさんがお礼を(笑)。SAIKIさんとKANAMIさんって、不思議な関係ですよね。
小鳩:KANAMIはSAIKIのこと、ヤバすぎるぐらい大好きなんですっぽ。
KANAMI:(SAIKIは)物知りで、さっきも“赤ちょうちん”について教えてくれたんです。店頭に赤ちょうちんが並んでいる居酒屋さんがいっぱいあって、何軒も飲み歩くんでしょ?
MISA:まぁ、そうだね。そうやって改めて言われると、変な感じだけど(笑)。
小鳩:KANAMIは性格も独特で。「“ぽっぽ”って連呼してる小鳩さんがやばいかと思ったら、KANAMIさんが一番でした」って、言われることも多いですっぽ。
KANAMI:絶対、ぽっぽ(小鳩)のほうが変だと思う!
SAIKI:まぁKANAMIは、見た目とのギャップもあるからね(笑)。
◆では最後に、全米ツアーに向けて意気込みをお願いします。
小鳩:頓挫した計画をようやく再開できるということで、楽しみにしてますっぽ。海外でのお給仕は久しぶりだから新鮮な感じもあるし、今までの中で一番長い期間のツアーでもあるから。どうなるんだろうって気持ちも大きいですっぽ。
KANAMI:本当に分からないよね。3週間以上もアメリカツアーをやる日本のバンドって聞かないし、アメリカでもあまりいないらしいから。
SAIKI:BAND-MAIDで前に2週間半の海外ツアーをやったときは、ヨーロッパとアメリカのセットだったから。次の会場までの距離もあるし、とにかく移動、移動でしたね。
小鳩:たまに早く着いたとき、それこそパリでエッフェル塔に行ったりしたけど、まともに観光したのはそれぐらいですっぽ。
◆ツアースケジュールを見て思ったんですが、衣装は何着持って行くんですか?
小鳩:前に海外ツアー行ったときは1着だけだったから、オフの日にしっかり洗濯しないといけなかったっぽ。
SAIKI:今回は衣装もリニューアルしたし、前のも持って行く予定になっています。
小鳩:ちょっと楽になるっぽ! この衣装、なかなか乾かないんですっぽ。
SAIKI:新しいのはまだマシだけど、前のは本当に乾きにくくて…。
◆この衣装ならではの悩みですね(笑)。アメリカだと、メイド服でライブに来る人も多いのでは?
小鳩:いるっぽね。すんごく体の大きな男性が、小鳩の衣装を着てくるっぽ(笑)。
SAIKI:すっごくマッチョな人、いたよね。
AKANE:でも、それがうれしかったりするんです。
MISA:私の格好をマネして、ちゃんとジャックダニエルの瓶まで持っている人がいたりして。
小鳩:メイド服の人たちが集まって写真撮って、SNSに上げてくれたりするんですっぽ。日本でもどんどん増えてくれたら、うれしいっぽ!
PROFILE
BAND-MAID
●ばんど・めいど…2013年に結成し、翌2014年アルバム『MAID IN JAPAN』でインディーズデビュー。2016年に『Brand New MAID』でメジャーデビューを果たす。愛らしいステージ衣装と相反する本格的ロックで海外ファンの心をつかみ、同年に世界8都市を巡るワールドツアーを敢行。YouTubeでの総再生回数は1億5,000万回を超えている。2022年10月からの全米ツアーを経て、2023年1月9日(祝・月)には東京ガーデンシアターにて単独公演を開催予定。
リリース情報
2nd EP『Unleash』
2022年9月21日(水)発売・配信
【初回限定生産盤(CD+Blu-ray+ポストカード、ポスター型ブックレット)】5,900円(税込)
【初回生産限定盤(CD+DVD)】3,500円(税込)
【通常版(CD only)】2,500円(税込)
配信リンク:https://lnk.to/_unleash
ライブ情報
「BAND-MAID US TOUR 2022」
2022年10月9日(日)〜11月1日(火)
カリフォルニアで開催される人気フェス「AFTERSHOCK FESTIVAL」を皮切りに全米13都市で公演
「BAND-MAID TOKYO GARDEN THEATER OKYUJI」
2023年1月9日(月・祝)東京ガーデンシアター
WEB
公式サイト:https://bandmaid.tokyo/
●live photo/MASANORI FUJIKAWA text/小山智久