コミックスのシリーズ累計発行部数が2300万部を超える人気漫画『ゴールデンカムイ』のTVアニメ第四期が、2022年10月3日(月)より放送スタートする(TOKYO MX、読売テレビ、北海道放送、BS11ほか。Prime Videoにて見放題独占配信)。今期では、相棒の契約を更新した「不死身の杉元」こと杉元佐一と、アイヌの少女・アシㇼパの新たな旅が描かれる。あらためて相棒として、アイヌから奪われた金塊の争奪戦に関わることになった2人は、さまざまな人と出会い、翻弄されながら前へ進む。杉元を演じる小林親弘さんに、作品のこれまでを振り返ってもらいつつ、今後の見どころなどについて聞きました。
◆原作が最終回を迎えて、大きな話題となりました。
僕自身が毎週のように楽しみにしていたので、「終わったなぁ」という何とも言えない気持ちでいっぱいになりました。もちろん、コミックス最終巻も購入しています。たとえオーディションに落ちても読み続けていただろうと思えるくらい面白い作品と出会えたことに、感謝しています。
◆小林さんが思う『ゴールデンカムイ』の面白さ・魅力は?
まず、ドラマチックかつ誰も予想できない展開と、毎回ひと笑いは起こしてくれるバランス感覚が絶妙です。例えばキロランケが死ぬ場面では、回想でギャグシーンも挟んでいました。それなのに、余計に悲しくなるんです。しんみりしてしまう展開をあえて明るくしてより読者を悲しませることができるんだと、驚きました。こんなに変な人がたくさん出てくる作品もあまりないですよね。原作者の野田(サトル)先生がキャラクターみんなを尊重していて、それぞれの良さも描いてくれているんです。だから、変な人たちもいとおしいと思える。それが作品の魅力にもなっているんじゃないでしょうか。
◆そういった原作の魅力がアニメにもしっかり反映されていると思います。
そうですね。アニメでは「音」や「動き」が加わることで、より立体的に作品を感じられるようになっています。変な人が妙な動きをしていたり、おいしそうな料理が出てきたり、アイヌ語などの言語が耳で聞けたりというのは、アニメならではの面白さだと感じています。
◆アニメのアフレコ収録を振り返ってみての思い出を教えてください。
第一期のころ、僕はとにかく緊張していました。アニメ作品の出演経験もそんなに多いわけではなかったですし、会う方々が洋画の吹き替えの主役をやるような大先輩ばかりだったので。でも同時に、ちょっと矛盾しちゃうかもしれませんが、緊張してもしょうがないなという気持ちもどこかにあったんです。すごい方々ばかりだからやるしかないって、胸を借りるつもりで毎話一生懸命に演じていたら、あっという間に収録が終わっていました。
◆先輩方とは現場でどんなお話をされましたか?
二瓶(鉄造)を演じた大塚明夫さんは「何で俺が杉元じゃないないんだ、オーディションこなかったぞ」とおっしゃられていました(笑)。その後も会う度に「まだ『ゴールデンカムイ』録っているのか?」「もっと二瓶を出してくれ、回想でもいいから」と言ってくれます。辺見(和雄)役の関俊彦さんは「いつもこんな変な感じなの?(笑)」っておっしゃられていましたし、有坂(成蔵)役の島田敏さんが伸び伸び演じられている姿も印象に残っています。本作に出演される先輩方はみんな「面白い作品だね」って言ってくださるんです。それが、作品の面白さを証明しているような気がします。
◆杉元を演じる上で、意識していることはありますか?
勝手に芝居を導いてくれる力のある作品なので、僕は物語や杉元の感情に乗っからせてもらっているだけです。杉元の考え方が変わったから自分はこうして演じてみようと思ったことはあまりなくて。杉元と同じく、その都度の課題や目的に向かって一生懸命頑張っている感じです。
◆そんな杉元にとってターニングポイントになったと思う場面は?
まずは第一話。細かいところでいえば、アニメ第十七話で鹿を撃てたこと、第二十四話で尾形に撃たれたところ、あとは第三十五話でアシㇼパさんと再会したときですね。杉元の行動原理は、いつの間にか全てにおいてアシㇼパさんが軸になっている気がします。
◆杉元とアシㇼパはどういう関係だと感じていますか?
最初はお互いに目指すものが近くて相棒契約を結びますが、徐々にお互いが大切になっていっている気がします。頭がいいアシㇼパさんをうまく利用できるかなと思っていた杉元ですが、旅をしていく中で「この子には自由に生きてほしい」と思うようになっているんじゃないかと。杉元は自分が戦争に行って傷ついたから、ひょっとしたら、もう同じような思いをする人を増やしたくないっていうエゴもあるのかもしれません。
◆ただ、親子とかっていう感じではないですよね。
恋人とか親子とか、そういう代名詞を付けなくても、年齢が離れていても、民族が違っても、食べるものが違っても、尊重し合えている関係だと思います。
◆第三十五話でアシㇼパと再会するシーンの収録は、演じる白石晴香さんともご一緒でしたか?
はい。第三期はしばらく鯉登少尉役の小西克幸さん、月島軍曹役の竹本英史さん、谷垣(源次郎)役の細谷佳正くんの4人での収録でしたが、第三十五話は白石さん、尾形 (百之助)役の津田健次郎さん、白石(由竹)役の伊藤健太郎さんと一緒に収録しました。物語的にも、演じる身としても会うのが久しぶりだったので、「再会」をリアルに受け取れた収録になった気がします。
◆掛け合いをしていく中で懐かしさも感じた。
そうですね。みんなとも「このメンバーで録れるのがうれしいね」という話をしました。
◆アニメ第四期の製作が決まったときのお気持ちを教えてください。
やっぱりうれしかったですね。自分自身が原作を毎週追いかけていたので、「あのシーンが声や動きが付いた状態で見られるんだ、聞けるんだ」とか、「この新しいキャラクターは誰が演じるんだろう」とか、いち読者として楽しみにしていました。
◆菊田特務曹長や海賊房太郎など、第四期でも新キャラクターが続々と登場します。
実は役者陣でも誰がどのキャラクターを演じるのか、予想するんです。その時間は本当に楽しいですね。
◆ちなみに、これまで当たった方はいらっしゃるんですか?
ソフィアは健太郎さんが当てていました。あと、(山田)フミエさんを演じるのはくじらさんしかいないだろうと話していたら、やっぱりそうでしたね(笑)。
◆役者さんの間でもそういうお話をされるんですね。
たぶん、みんな原作ファンだからだと思います。原作が好きだからこそ、誰が演じるのか、アニメではどういう描き方をされるのかが気になるんですよね。
◆新キャラクターのキャストの方々と一緒にアフレコ収録はできましたか?
菊田特務曹長役の堀内賢雄さんとは何度か録りました(取材時は8月)。鶴見中尉役の大塚芳忠さんと永倉(新八)役の菅生隆之さんと賢雄さんがロビーから一緒に出てきたときのオーラは半端なかったです(笑)。子供時代に自分が見ていた作品で吹き替えなどをやっていた皆さんとご一緒できるって、本当に光栄なことですよね。賢雄さんはお酒を飲むのがお好きなので、こういう時期じゃなかったら食事をご一緒したかったです。まだ一緒に収録できていない新キャラクターのキャストの方々もいらっしゃいますが、音声は聞かせていただきました。皆さんすごくしっくりきますし、カッコよかったので期待していてください。まだ発表されていない新キャラクターの声優さんも、本当に楽しみにしていてほしいです。
◆第四期で注目のキャラクターは?
印象が一番変わるのは宇佐美上等兵。もう新キャラクターと言っても過言ではありません。第四期ではひょっとしたら宇佐美がいちばん輝くかもしれないです。
◆これまで演じてきてあらためて感じる、杉元という人物の魅力は?
先入観や社会的にどう思うのかというよりも、自分がどう思うかで行動できる強さ。あとはどんな人でも受け入れる懐の広さと優しさです。もし普通に生きていたとしたら、いいお兄さんになっていたんじゃないかと思います。
◆第四期の見どころと、杉元の注目ポイントを教えてください。
第四期では、金塊探しの旅に進展があります。目的に近づいていく感覚は見ていてワクワクすると思いますし、果たして本当にあるのかというところも含めて、ミステリーが徐々に解明されていきますので、楽しみにしていてください。杉元の注目ポイントとしては、やはりアシㇼパさんとの関係ですね。これまで少し離れていた分、あらためて言葉を交わして関係を深めていきます。今までだったら言えなかったこともぶつけ合うので、二人の今後や関係にも注目していただければと思います。
◆二人の関係を中心に物語が動いていく?
杉元中心に考えればそうですが、例えば鶴見中心に考えればまた違った物語が見えてきます。おのおのが独立した立場でいるというのが『ゴールデンカムイ』の群像劇としての魅力だと思います。月島と鯉登の関係を見ているだけでも面白いですし(笑)。視点を変えて見ると新たな面白さが発見できる作品だと思いますので、ぜひ何度もご覧ください。
PROFILE
小林親弘
●こばやし・ちかひろ…1983年9月5日生まれ。愛知県出身。主な出演作は『アオアシ』福田達也役、『転生したらスライムだった件』ランガ役など。洋画や海外ドラマの吹き替えなど幅広く活躍する。
番組情報
『ゴールデンカムイ』第四期
2022年10月3日スタート
毎週(月)TOKYO MX、読売テレビ、北海道放送、BS11ほかにて放送
Prime Videoにて見放題独占配信
<STAFF&CAST>
原作:野田サトル
チーフディレクター:すがはらしずたか
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
声の出演:小林親弘、白石晴香、伊藤健太郎、大塚芳忠、中田譲治、津田健次郎、細谷佳正、乃村健次、菅生隆之、杉田智和、松岡禎丞、竹本英史、小西克幸 ほか
※「アシリパ」の「リ」は小書きが正式表記
●text/M.TOKU ©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会