『エルピス』脚本家・渡辺あやが語る長澤まさみの魅力「ご本人の中に揺れ幅がある人間的な方」

特集・インタビュー
2022年10月24日
『エルピス-希望、あるいは災い-』
『エルピス-希望、あるいは災い-』脚本家・渡辺あや

10月24日(月)スタートの月10ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(カンテレ/フジテレビ系 毎週月曜 午後10時)で、脚本を担当する渡辺あやさんにインタビュー。ドラマ誕生秘話や撮影現場の雰囲気などを聞きました。

本作は、実在する複数の事件から着想を得て制作された社会派エンターテインメント作品。スキャンダルによりエースの座から転落したアナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)と彼女に共鳴した仲間たちが、10代女性が連続して殺害された事件のえん罪疑惑を追う中、一度は失った“自分の価値”を取り戻していく姿を描く。恵那と共に行動するうだつの上がらない若手ディレクター・岸本拓朗役で眞栄田郷敦、恵那と拓朗の先輩で報道局のエース記者・斎藤正一役で鈴木亮平が出演する。

◆本作の成り立ち、企画の始まりなどについて教えてください。

プロデューサーの佐野亜裕美さんに初めてお会いしたのが2016年の春でした。当時佐野さんは連続ドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』を担当されていて、私と何か連ドラの企画を考えたい、とおっしゃってくださったのがきっかけでした。そのときは一緒にラブコメを考え始めたのですが、なんだか盛り上がらなくて(笑)。むしろ、政治の話になると急に2人で熱くなって盛り上がっていました。
佐野さんは東京大学の教養学部出身で、日本の裁判制度や事件などに興味を持っていらっしゃって。そちらをやった方がいいなということで、佐野さんがいろいろな事件のルポタージュ、主にえん罪のものを読ませてくださいました。それを読んでショックを受けたと言いますか、「日本でこんなことがあるんだ」と驚きました。せっかく佐野さんと私でお話を作るのなら、2人同じ熱量で取り組めるものにしようと。

◆事件ルポを読まれたということですが、どのようなことにショックを受けられましたか?

この国の国民として生きている以上、裁判制度や事件の捜査などが正しく公正に行われていると信じたいですが、そうではないところもあって。過去に実際にそのようなことが起きているし、もしかしたら今も起きているかもしれないという不安や恐怖を感じました。

◆長い期間をかけて作られてきたとのことですが、形になった心境はいかがですか?

まだ信じられないというのが正直なところです。あまりにもいろいろなことがたくさんありまして、ここにたどり着くまでのハードルがたくさんありました。そもそも、このようなえん罪をテーマとしたドラマをテレビでやるということ自体にもハードルがあるのですが、たくさんのハードルを佐野さんが超えてくださって、放送してくださるカンテレさんの厚い懐もあり、実現することができました。でも最後まで何が起きるか分からないですね。

◆ハードルがたくさんある中で、それでも諦めなかった理由は何でしょうか。

ひと言で言うと佐野さんの熱意ですね。絶対に実現させるとおっしゃっていただいたので、私も佐野さんを信じて脚本を書かせていただきました。

『エルピス-希望、あるいは災い-』
『エルピス-希望、あるいは災い-』©カンテレ

◆渡辺さんは民放では初めての連ドラということですが、これまでとの違いや意識されていることはありますか?

実は何もないんです。佐野さんがたまたま民放という舞台で活躍されている方だった、という感じで。書き方を変えたりもしていないですし、普段の自分の書き方のままやらせていただきました。

◆撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

すごく良い現場でした。どのポジションにいらっしゃる方も、本質をつかんでお仕事をされている印象で。静かに熱中されている感じがしました。
主演の長澤(まさみ)さんは、この作品を考えていたとき最初に思い浮かんだ人物でした。佐野さんはよく長澤さんのことを”肉体と精神のエネルギーがアンバランスな感じ”と表現するのですが、それは私にも感覚的に共感できる部分がありました。長澤さんの表情には、弾力性を感じるんです。表情が豊かで、落ち込んでいるときと明るいときの幅が大きい方なのかなと思いました。いつもベストを保っていられる人というより、ご本人の中に揺れ幅がある人という感じで、そういう方は役者さんとして魅力的なんです。
長澤さんが演じている浅川恵那というキャラクターもまさにそういう人で。本来すごく能力があってエネルギーもある人だけど、女子アナウンサーとしてそのエネルギーを殺さないと生きていけないような状況にもあるというところから物語がスタートします。そこから彼女が復活していくということで、今低い位置にあるものが復活していくときの伸び幅を表現できる方なんじゃないかと。ご本人にお会いして、人間的な方だと思いました。

◆監督の大根仁さんとは何かお話されましたか?

大根さんは人物を立体的に描くことに長けていらっしゃる方で。この物語の一番の見せ所は、それぞれのキャラクターの存在感や葛藤だと思うのですが、それを描くのに理想的な監督だと思っています。

◆本作を通して視聴者の方に伝えたいことは?

私が初めていろいろな現実を知ったときと同じように、まだえん罪などについて知らない方もいらっしゃると思いますので、このようなことが実際にあるんだということをお伝えしたいです。ドラマの登場人物たちは、正しくないことを正したい、という気持ちで動いていますが、書けば書くほど、何が本当に正しいのかは言えないなと思ったんです。一見正しいと思われていることも、実は歪められていることもあるんだと。それも届けられるのではと思います。

PROFILE

渡辺あや
●わたなべ・あや…1970年2月18日生まれ。兵庫県出身、島根県在住。2003年、映画「ジョゼと虎と魚たち」で脚本家デビュー。脚本作にNHK連続テレビ小説『カーネーション』、ドラマ『火の魚』『その街のこども』『ワンダーウォール』『ストレンジャー 上海の芥川龍之介』『今ここにある危機とぼくの好感度について』、映画「メゾン・ド・ヒミコ」「天然コケッコー」「ノーボーイズ・ノークライ」など。

番組情報

『エルピス-希望、あるいは災い-』
『エルピス-希望、あるいは災い-』©カンテレ

『エルピス-希望、あるいは災い-』
カンテレ/フジテレビ系
2022年10月24日(月)スタート
毎週月曜 午後10時~※初回は15分拡大

公式HP:https://www.ktv.jp/elpis
Twitter公式アカウント:@elpis_ktv

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