TBSの深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」で9月20日から放送開始した『階段下のゴッホ』(TBSほか 毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分)。本作は、自分らしく生きるために邁進し、強くたくましく夢にも仕事にも向き合い進んでいく主人公・鏑木都の姿を通して、生きやすいようで生きにくい令和の時代を闊歩する女性たちにエールを送るヒューマンラブストーリーだ。
大手化粧品メーカーに勤める“高収入バリキャリ女子”で、ある絵画に出会ったことで一念発起し、画家になるという夢をかなえるべく東京藝術大学を目指す主人公・鏑木都をSUMIRE、都が美術予備校で出会う6浪中のミステリアスな青年・平真太郎を神尾楓珠が演じる。
そんな本作でプロデュース兼全話の演出を担当する小牧 桜さん(TBSテレビ)による連載が、TV LIFE webでスタート。本作に込めた想いから撮影の裏側まで、演出・プロデューサーという立場ならではの視点でお届けしていきます。
第5回:でこぼこな握手
拝啓、皆様。
第5話は再び、主人公の都が、自分の環境や置かれている立場の中で、壁にぶつかる話。一方がうまくいけば、一方がうまくいかなくなったり、あるいは両方ダメになったり。何かに挑戦している人というのは、たくさんの応援を受けることもあれば、またたくさんの痛みを受けることが多いように思います。
本当に、どんなものが対象であっても“続ける”ということは、難しい。
都は今回、取引先である中島屋の担当である、浜田学さん演じる馬込と、うらじぬのさん演じる西川に、夢を見ていられる年次ではなくなってきたことや、なぜ絵なのかということ、好きだからって現実を見ていないのではないか、ということを突きつけられます。
都ぐらいの年次になると、がむしゃらに頑張っていれば認められた時代は終わり、いつの間にか後輩も増え、仕事としてもきっちりこなさなければならない、いわゆる働き盛りと言われる世代に入っていきます。夢ばかり見て現実から目を背けていては、直面する問題は越えられない。責任が生じるし、また責任が取れる人間であるかどうかという目で見られることも増えてくるはずです。それは当たり前のこと。
だからこそ、馬込と西川の言葉は、ある種とても的を射ていて。もちろん主人公側の目線に立てば、なぜそこまでのことをこの場で言われなければならないのか、と怒ってしまいたくなるところもあるとは思うのですが、浜田さんとうらじさんには、物語の中では中島屋の2人はヒールであるかもしれないけれど、多分そこに純粋悪はないんですよねと話しながら進めていきました。
同様に、真太郎にしても、お客の会話に乗り込んでいって怒るところは決してヒーローにはなりきれないというか。社会的に見れば、どれだけのことがあったとしても、大人としての対処をしなければならない場面。もちろん、真太郎がそこを越えて言葉をかけにいくということは、人との関わりを持たずにいた彼がボーダーを越えるという意味で大事なプロセスではあるのですが。
故に、都の差し出した真太郎への握手は、同志としての握手に近いものがあります。社会の中にいる自分を学ぶこと、夢に向かって進んでいくための強さを知ること、お互いを知ることで自分を知り、影響を受けあい、次第に許しあえる存在になっていく。単純な仲直りだけではない、ゴッホと交わす握手と同義なのかもしれません。
そしてその同志としての握手は、真太郎にとってどういうものだったのか。
私としては先々のことも含めてお話ししながら進めた部分ではあったにせよ、撮っている瞬間を思い出すと、このシーンの神尾さんの表情には、ぞくっとするものがありました。
それについては、もう少し先でお話しできればと思います。
PROFILE
小牧 桜
こまき・さくら…1989年4月14日生まれ。東京都出身。
TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部。
『ルーズヴェルト・ゲーム』、『99.9〜刑事専門弁護士〜』、『凪のお暇』などの演出部を経験し、2020年『この恋あたためますか』でGP帯監督デビュー。以降は『リコカツ』、『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』などのドラマの演出を担当。
9月20日より毎週火曜深夜0時58分からTBS系にて放送中のドラマストリーム『階段下のゴッホ』(出演:SUMIRE・神尾楓珠ほか)で、初プロデュース兼全話演出を担当。
番組情報
ドラマストリーム『階段下のゴッホ』
TBSほか ※一部地域を除く
2022年9月20日(火)スタート
毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kaidanshita_no_gogh_tbs/
公式Twitter:@drama_streamtbs
公式Instagram:tbs_drama_stream
公式TikTok:@drama_stream_tbs
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©「階段下のゴッホ」製作委員会