世界で初めて盲ろう者の大学教授となった福島智さんと母・令子さんの実話を基に描いた感動作「桜色の風が咲く」。幼少時に失明し、18歳で聴力も失い、暗闇と無音の世界で孤独にさいなまれる智の青年期を演じた田中偉登さんが、難役への意気込みのほか、母親役で共演した小雪さんとの撮影エピソードなどを話してくれました。
◆今回の役はオーディションで勝ち取られたそうですね。
課題として、台本の一部を演じることと、盲人として日常生活の一場面を演じるエチュードみたいなものがありました。料理がいいのか、着替えがいいのか、いろいろ考えたのですが、完全に一人の空間になるお風呂に入る場面を選びました。とても難しい役柄ですが、エチュードが終わって台本の一部を演じることに。演じているうちに“絶対この役をやりたい”という気持ちがさらに強くなりました。
◆その後、台本をすべて読んだときの感想は?
全体的に“とても重たい話なのかも”と思っていたのですが、耳が聴こえなくなり、目が見えなくなるというつらいエピソードもある中、智のせりふの言い回しや、お母ちゃんである令子さんとの掛け合いがとても楽しげに受け取れたんです。なので、智の明るい性格を前面に出して、彼に光を当てれば当てるほどシリアスなシーンの影が濃くなるのではないかと思いました。
◆智という役どころの印象は?
この映画のモデルの福島智さんにお会いして、会話する機会があって。福島さんはとても明るい性格で、常に冗談をおっしゃる方でした。声色も高く、周りにいる人をハッピーにさせるのですが、話の合間に時折哀しさがにじみ出ているように感じました。それを笑顔でフタをしているのかなと思いました。なので、僕が演じる上でも、笑顔がキーになると思いました。
◆福島さんとは、ほかにどのようなお話をされましたか?
「耳が聴こえなくなるときの心境はどうだったんですか?」という僕が聞きたかったこと以外は、好きなご飯の話など、ずっと世間話をしていました。あとは、お母さんの令子さんが考えた「指点字」についてなど、智を演じる上でのベースみたいなことを学びました。福島さんから「こうしてほしい」と言われたことはなくて、唯一言われたのが「僕の若いころを演じるにはイケメンすぎる」というジョークでした(笑)。
◆役作りに関しては、他の作品に比べるとやはり大変でしたか?
僕はカメラの前に立つことで切り替えができるような器用な役者ではないのですが、今回の智に関しては、ガチガチに役を作ろうというよりは、自分の引き出しから出すようにしたいと思いました。ひょっとしたら、気づかないところで僕自身とリンクした部分が多かったのかもしれません。あとは普段から、街中にある点字を積極的に触ってみたりもしました。ただ目を閉じているだけでは盲人だとは伝わりづらいので、歩き方やちょっとした仕草を大事にするような最低限の役作りはしました。
◆令子さんとの掛け合いで大切にしたことは? また、令子役を演じた小雪さんの印象を教えてください。
令子さんとの掛け合いは、クランクインしてアップするまで特に意識はしませんでした。というのも、智は完全に目が見えなくなり、耳も聴こえなくなるので、一人でしゃべっているような状態なんです。なので、令子さんの言葉を待っていると、耳が聴こえる人のように見えてしまうんです。そういうこともあって、まず僕が自由にやって、それに小雪さんが合わせてくださる感じでした。小雪さんはお母ちゃんとして、僕をしっかり受け止めてくださいました。カメラが回っていないところでも、小雪さんとはいろいろ話をしました。「ちゃんとご飯食べてるの?」とか、本当にお母ちゃんみたいでした(笑)。
◆撮影中の印象的なエピソードを教えてください。
とにかく楽しかったです。任せていただいていたのか、信用してくださっていたのか、松本准平監督からのリクエストもほとんどありませんでした。ただ、智が「男版のヘレン・ケラーになりそうや」と泣いてしまうシーンでは、リハーサルでは問題なかったのに、本番ではうまくいかなくなってしまったんです。そのとき、監督が「大丈夫。もうちょっとやれる」と僕のことを絞り出してくださり、テイクを重ねることで自分でも納得いく演技ができました。あのときはとても助かりました。
◆今回、難役を演じたことで学んだことを教えてください。
役者としては、日ごろ何気なくやっている目のお芝居の大切さを学びました。あと、小雪さんとのお芝居では、体の一部に触れることや声のトーンだけで、相手がどういった感情なのかが分かるようになったと思います。人としては、人間は誰かに支えられて生きている、決して一人では生きていけないということを再認識しました。孤独に追い込まれていく智が、いろいろな人にヒントをもらって、どんどん道を切り開いていく物語なので、映画を見た学生や若い方にはコロナ禍で“やりたいことができなくなった”ことを恨むのではなく、“その中で自分では何ができるのか?”ということを感じ取ってもらえるとうれしいです。
◆最後に、ご自身のことについても聞かせてください。最近の“癒やしアイテム”や癒やされる時間があったら教えてください。
この映画の撮影後に一人暮らしを始めたのですが、とても寂しいんですよね(笑)。なので、両親と頻繁にテレビ電話で話しています。あと、家にいる時間が長くなったこともあり、部屋を自分の納得する空間にしようと思って頻繁に模様替えをしています。物はできるだけ置かずに、とにかくシンプルで、カッコいいイケてる部屋を目指しています。そこでお香を焚きつつ、Lofi Hip Hopを聴きながら、自分でシェイカーを振って作ったお酒を飲んだりして。お酒は2種類ぐらいしか作れませんけど…(笑)。
PROFILE
田中偉登
●たなか・たけと…2000年1月24日生まれ。大阪府出身。O型。最近の出演作に、ドラマ『無用庵隠居修行6』、連続テレビ小説『ちむどんどん』、ひかりTVオリジナルドラマ『ラブシェアリング』、映画「ぬけろ、メビウス!!」など。
作品情報
映画「桜色の風が咲く」
2022年11月4日(金)公開
<STAFF & CAST>
監督:松本准平 脚本:横幕智裕
出演:小雪、田中偉登、吉沢悠、吉田美佳子、山崎竜太郎、札内幸太、井上肇、朝倉あき/リリー・フランキーほか
<STORY>
令子(小雪)は、教師の夫・正美(吉沢)と3人の息子と暮らしていた。末っ子の智は3歳の時に病気で右目を失明し9歳で左目も失明するが、人一倍やんちゃで口が達者な明るい子に育つ。やがて成長した智(田中)は、東京の盲学校へ進学。智が青春を謳歌する一方、令子は点字を学んでいた。そんな中、令子は帰省した智の耳の異変に気づいて…。
公式サイト:https://gaga.ne.jp/sakurairo/
この記事の写真
(C)THRONE / KARAVAN Pictures
●photo/関根和弘 text/くれい響
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