W杯の開幕が迫りサッカー熱が高まる中、アニメ『ブルーロック』(テレビ朝日系 毎週(土)深夜1・30)が注目を集めている。原作は、「週刊少年マガジン」で連載中の人気サッカー漫画。日本をW杯優勝に導くストライカーを育てるために300人の高校生FWを集めて立ち上げられた“ブルーロック(青い監獄)”プロジェクトで、若き逸材たちがチームプレーよりも己の力で点を獲る“エゴイズム”をむき出しにしてサバイバルを繰り広げる姿を描いている。主人公の潔 世一役の浦 和希さんと、潔と共に戦う蜂楽 廻役の海渡 翼さんに、本作の魅力やお二人自身のサッカー経験について聞きました。
◆原作はもともとご存知でしたか?
浦:はい。もともと読んでいて、すごく面白いサッカー漫画が始まったなという印象を持っていました。メンタル面の話は自分と重なる部分が多く、悩んだときに参考にすることもあります。その作品にこうして声優として関わることができてうれしいです。
海渡:作品自体は知ってはいたのですが、じっくり読んだのはオーディションを受けることになってからでした。スポーツ漫画ですけど、フォーカスされているのが友情とかではなく、“エゴイズム”という個人の力であるところが画期的ですよね。
浦:エゴって聞くと、尖ったイメージが浮かびがちというか。
海渡:自己中心的、みたいなね。
浦:そうそう。でもこの作品では少し違っていて。サッカーで自分が点を獲るために“周りが動け!”ではなく、“自分がどう動くべきか”。つまり、いかに自分を貫けるかというエゴイズムなんですよね。
海渡:しかも、それが周りにいい影響を与えていくんです。潔も蜂楽のエゴに影響されてステップアップしていきますし。
浦:この作品は、自分を貫くための“エゴ”は必要だと教えてくれている気がします。エゴという言葉の意味を考えさせられますね。
海渡:もちろん、謙虚さやお互いを助け合う精神も大切だと思うんです。でも、自己主張しなければ変わらないこともある。この作品を通して、いい意味での“エゴ”が世の中に浸透していくかもしれませんね。
◆それぞれの役柄の印象や、演じる上で意識している点を教えてください。
浦:潔は一見平凡でいい子なんですけど、試合になるとエゴイズムのスイッチが入る瞬間があるんです。その切り替えは特に大切に演じています。スタッフさんたちが力を入れて作ってくださっている作品なので、自分の声が負けるわけにいかない。“作画がいいのに芝居が…”と思われるのは絶対に嫌なので。むしろ、“僕の芝居がいいから、作画をもっとこうしたい”と思っていただけるくらいでありたい。そういう自分の“エゴ”も持ちながら臨んでいます。
海渡:潔ほど貪欲なサッカー好きはなかなかいないと思います。だからこそいろいろなことを吸収できるし、どれだけくじけても前向きになれる。チームに欠かせない存在ですね。
浦:蜂楽もサッカー好きですけど…潔とは違って本能的ですよね。だから、サッカーに対する情熱のかけ方が他のキャラクターたちとは違っていて。最初はあまり理解できなくて、「怖っ!」と思いました(笑)。
海渡:そうなんですよね。そこは僕もどう表現すればいいのか悩んだところでした。考えれば考えるほど、蜂楽ってよく分からなくて。本能的な人の考えを理解するのって、きっと無理なんだろうなと思ったんです。だから開き直って、蜂楽のことはアフレコするまでは考えますけど、実際に演じているときはあえて深く考えないようにしています。蜂楽の明るさだけ意識して、その他のことは一回全部忘れるんです。僕自身も本能で蜂楽に向き合うようにしています。
浦:物語が進んでいくにつれて、蜂楽の考えは少しずつひもとかれていきます。「なるほど、だからこういう発言に至るのか」と皆さんにも納得してもらえるはずなので、楽しみにしていてください。噛めば噛むほど味が出てくるキャラクターだと思います。
◆印象に残っているシーンは?
浦:1話の入寮テストの“オニごっこ”ですね。潔が吉良君にボールを当てるときの「一番…強い奴…」というせりふをどう演じるべきか、アフレコのずっと前から考えていたんです。どういう言い方をすれば潔の感情としてふさわしいだろう、そして映像とハマるだろうか、と家で何度も何度も練習しました。
海渡:僕は同じく1話で、県大会決勝で負けた潔がシュートではなくパスを選んだことを悔やんで、河川敷で泣き叫ぶシーンです。「勝ちたかったぁ…」というせりふも含め、潔の本音が出ていましたよね。ここから潔は変わっていくと予感したシーンでもありました。
◆お互いの印象はいかがですか?
浦・海渡:あー(見つめ合って笑い合う)。
海渡:…たまにこういうことが起きるよね(笑)。
浦:そうだね(笑)。芸歴で言えば僕が上なので(海渡は)礼儀正しく、でも固すぎずフランクでもあって。
海渡:浦さんは先輩風を吹かさないんです。フレンドリーに接してくれたり、冗談を言ってくれたり。アフレコ現場でも、浦さんがいると雰囲気が明るくなって場が和みます。僕にとっては、頼れるお兄ちゃんみたいな感じですね。
浦:どうも、海渡 翼のお兄ちゃんです!
海渡:…やっぱり、さっきの発言は撤回します。
浦:何でよ、いいじゃん! ちょっと気に入ったよ、俺は。これから海渡 翼の公式お兄ちゃんとして頑張ります(笑)。
海渡:…といった感じで場を和ませてくれるんです(笑)。
◆なるほど(笑)。お芝居について2人で話し合うことはあるんですか?
浦:アニメ化発表のティザーPVを一緒に収録したときに、2人で「僕たちはまだ新人だし、先輩方から吸収していくしかない。気持ちだけは負けないようにしよう」と。気持ちの時点で負けていたら、何もできませんしね。
海渡:どうしたって技術の面では先輩方に劣ってしまいますし。
浦:経験値も全然違いますから。なら僕たちはせめて今できる精いっぱいの力を出し尽くすべきだし、そこは妥協せずに頑張ろう、という話をしました。実際にお互い必死になって演じていますが、収録が終わると「どうだった?」「ダメだ、俺~」みたいな会話をよくしています(笑)。
海渡:慰め合っています(笑)。
浦:そうそう、傷のなめ合いです(笑)。そういう意味では、先輩・後輩というより、部活動で一緒に切磋琢磨している仲間のような関係でもありますね。
海渡:プライベートな話もします。潔と蜂楽が相棒みたいな感じなので、僕らもお互いのことを話して。ただ、役柄がそうじゃなかったとしても仲良くなっていたと思います。
◆お二人自身のサッカー経験は?
浦:作品を通じてフットサルにはかかわっていますけど、サッカーは友達付き合いで少しやるくらいです。それよりもサッカー漫画を読んだり、テレビで試合を観戦したりする方が好きですね。
海渡:僕は中学高校とサッカーをやっていました。だからこそ当時、この作品と出会えていたらなと思います。まぁ、それで同じように自分がエゴ全開にできていたかと言われれば、できなかったでしょうけど…(笑)。
浦:1人だけ浮いちゃうよね(笑)。
海渡:でも、それができないと世界とは戦えないんでしょうね。
◆この作品を通して、サッカーの見方は変わりましたか?
浦:プロで活躍されている方々のすごさがより分かりました。それこそもうすぐワールドカップが始まりますが、代表選手の皆さんは同世代や先輩後輩ともポジション争い、言わばリアル“ブルーロック”を勝ち抜いてフィールドに立たれているわけですよね。本当に尊敬します。
海渡:今まではただ「頑張れ、頑張れ!」と応援していましたが、これからは“エゴ”目線も入ってくるでしょうね(笑)。もし自分が監督だったら、この選手はあのポジションに置くとか、ドリブルが得意な選手はここで活躍させるとか。選手個人の能力まで考えて見るようになっているかもしれません。
◆では最後に、お二人が思う『ブルーロック』の魅力を教えてください。
浦:誰かの心を後押ししてくれるような、強いメッセージ性が詰まっている作品です。サッカーに限らず、一歩踏み出したいと思っている方はぜひこの作品を見て、勇気を受け取っていただきたいです。
海渡:悩みやつらさを抱えている方は、ぜひこの作品に触れてみてください。何かを主張することが間違いではないということが分かると思います。漫画でも、アニメでも、『ブルーロック』を楽しんでいただきたいです!
PROFILE
浦 和希
●うら・かずき…10月18日生まれ。大阪府出身。主な出演作は『シャドウバースF』(真壁スバル役)、『フットサルボーイズ!!!!!』(相庭京介役)、『終末のハーレム』(土井翔太役)など。
海渡 翼
●かいと・たすく…9月15日生まれ。京都府出身。主な出演作は『あんさんぶるスターズ!!-Road to Show!!-』(桜河こはく役)など。本作でテレビアニメ初レギュラーを果たした。
作品情報
『ブルーロック』
テレビ朝日系 毎週(土)深夜1・30~2・00
●BS朝日では毎週(土)深夜2・00~2・30
<STAFF&CAST>
原作:金城宗幸(原作)、ノ村優介(漫画)
監督:渡邉徹明
副監督・石川俊介
シリーズ構成・脚本:岸本卓
アニメーション制作:エイトビット
声の出演:浦和希、海渡翼、小野友樹、斉藤壮馬ほか
●photo/小澤正朗 text/M.TOKU hair&make/櫻井陽介(浦)、西田聡子(ZOSP)(海渡)
©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会