山本耕史インタビュー「迷いもブレもないので、演じていて非常に爽快でした」『鎌倉殿の13人』

特集・インタビュー
2022年12月08日
『鎌倉殿の13人』三浦義村(山本耕史)©NHK

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合 毎週日曜 午後8時~8時45分ほか)で、三浦義村役を務める山本耕史さんにインタビュー。

大河ドラマ第61作は、鎌倉幕府の二代執権・北条義時(小栗旬)が主人公の『鎌倉殿の13人』。平安時代末期から鎌倉時代初期を舞台に、野心とは無縁だった義時がいかにして武士の頂点まで上り詰めていくのかを描いていく。

知恵者であり切れ者。そんな義村のパーソナリティの裏側には、山本さん考案のある“トリック”が仕掛けられていた。生涯の盟友・義時との対比がますます際立っていく。そんな義村の撮影秘話を山本さんに聞きました。

山本耕史 インタビュー

◆山本さんはこれまでに、三谷幸喜さん脚本の大河ドラマに3作出演されました。それぞれの作品にどんな印象がありますか?

3作の中で頭から最後まで出てるのが『新選組!』と今回の『鎌倉殿の13人』になります。この2作はポジション的に主役の一番近くにいるような存在というところでは共通しているのですが、(『新選組!』の)土方歳三の場合は近藤勇を持ち上げるために2番手になり、人生を捧げるように立ち回ったんですよね。一方で、今回の義村は義時と距離は近いけど忠義というものが(土方とは)全く違う場所にありますし、盟友でありながらもどの瞬間も三浦の存続を考えている立場でもあるので、結果的に土方とは真逆の立ち位置を演じたような印象を持っています。そして、すごく無骨であり、忠義がある『真田丸』の石田三成は、本当に気持ちよく人生を全うした役でした。

◆三谷さんが書く大河ドラマの魅力はどんなところにあると思いますか?

三谷さんにとって初めて脚本を書いた大河ドラマが『新選組!』だったと思うのですが、作を重ねて確実に腕に磨きがかかっていますよね。スピード感であったり、飛ばす部分の切れ味であったり。一般的には大河ドラマって表舞台が描かれやすいところではあると思うのですが、三谷さんの場合は“その時彼らは何をやっていたんだろう”というところを非常に面白く描かれるんですよね。そのようにして、良くも悪くも視聴者の期待を裏切っていく斬新さが三谷さんらしさだと思いますし、そんな作品を僕は三谷さんの大河でしか見たことがないですね。『鎌倉殿の13人』は“なぜこんなことが起こったのか”というのを内側からひもといていく。そこに三谷さんらしいおとぼけの要素やコメディが織り交ぜられていて、素晴らしかったと思います。

◆シビアなシーンに笑いの要素が含まれるような作りも話題となりました。

おそらく、三谷さんにとってはシビアなシーンこそ笑いの要素を入れるのに持って来いな瞬間なんだと思います。普通だったらシリアスからシリアスにつなげていきたいところを、三谷さんは1回外すんですよね。ずっとは緊張させないし、させるにしても“そんなところでさせるんだ”みたいな意外性がありました。例えば、川で溺れた八重(新垣結衣)を義村が探しにいくシーン(第21回/5月29日放送)では、義村がなぜか上半身裸になるんですよ。普通、川に入るなら上を脱ぐのではなく、はかまを脱ぐか、捲り上げるかじゃないですか(笑)。「これ、僕脱ぐ必要あります?」と三谷さんに一応聞いたら「一度、義村の裸体で気をそらしたいんだ」と。そこまで計算できているなんてすごいですよね。
ちなみに、42回(11月6日放送)で八田知家(市原隼人)が脱いでいて、次のカットで僕も脱いでいる、なんてこともありました。“山本耕史がアドリブで脱いだのでは”と思われている方もいるようですが、実際はト書きに「義村がなぜか裸になっている」と書いてあったんです。八田は書いていなかったので、これは市原くんのアドリブなんですよ。僕が台本通りです(笑)。

『鎌倉殿の13人』左から)三浦義村(山本耕史)©NHK

◆今回演じられた義村は、主人公・義時の盟友という役どころでしたが、1年半に渡って主演・小栗旬さんを近くで見守り続けてきて、どんな印象を持っていますか?

やっぱり大河ドラマの主演って本当に大変なんですよね。1年半同じ役、同じペースで48回を撮っていったので、精神的にも体力的にも一番大変な立場であることは間違いない。でも、旬くんは先輩方に気遣いができて、去っていくのをちゃんと見届けた後に新しく入ってくる同世代や後輩にもきっちり目を向けてあげられるんです。“こんなことまでしてあげているんだ”と驚くこともたくさんありました。本来、自分が一番気を遣ってもらうべき立場であるのに…でも、彼はそういう人間なんだろうな。初期の義時みたいな男ですよ。でも、後半の義時のような強さも持っていますから、本当にタフですよね。優しくて夢にあふれている姿から、ベテランになりつつある真ん中の立場としての厳しさまで、『鎌倉殿の13人』と義時を通して旬くんのいろんな部分を見ることができたなと思います。

◆小栗さんとはどんなコミュニケーションをとられましたか?

クランクアップ後は「お疲れさま」というやりとりをしました。でも、今後『鎌倉殿の13人』のイベントで会う機会があるので、お互いにどこか終わったようで終わってないみたいなところがあって。それにしても、旬くんとは今回非常に良い距離感でやれたなと思っています。義村と義時はすごく近いようでお互いに腹の底を探り合っているのも否めないような関係性でしたが、小栗旬と山本耕史はお互い思うことはあるんだろうけど、一から語り合わなくても通じ合っているところは通じ合っている。そんな関係性でした。

◆回を重ねるごとに変化していく義時の一方で、冷静沈着であり続けたのが義村でした。

台本を読み進めていくにつれて「義時と義村は本当ひどいよね」と、演じている僕ら自身も含めてみんなが言うようになったんです。なので、義村が後半で義時を裏切るような立場になったら、視聴者に“義村が腹立つ”と思われるのかなと想像したこともありました。でも実際、後半の義村は出る杭を打つだけで、その相手が誰であろうと姿勢を変えることはありませんでしたし、言っていることも序盤から一貫しているんです。むしろ、闇落ちしていく義時がいるから、本来なら義村が「義時をいじめないで」と言われるポジションであったはずが、義時が「〇〇をいじめないで」と言われるようになるという(笑)。もはや、義時を裏切ったら義村は「よくやってくれた」と言われる側に回ったんですよね。義時が変化していったからこそ、義村の変わらない“そのまま”なたたずまいも際立ったなと思います。

◆役作りにおいて、何か工夫されたことはありますか?

実は今回義村を演じるにあたり、義村と義時のお互いが引き立つような対比をつけるために、今回義村は一切の変化を作らないようにしていこうと僕が提案しました。大河ドラマでは普通はしわや白髪を足してどんどん老けさせるんですけど、義村はメイクも変えていないんです。エンターテインメントの要素の一つとして、思惑や思想のみならず、容姿まで全て初回から統一してきたのですが、それは非常に良かったなと思っています。

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